今週末11/3はニューヨークシティマラソン(NYCM)!昨年はハリケーン・サンディにより突然の中止となり、2年ぶりの開催です。
レース後追記:
NYCマラソン2013速報結果をアップしました。
概要
男子の目玉は、非公認コース・ボストンでの世界歴代1位2:03:02の記録を持つジョフリー・ムタイ。さらに、ツェガエ・ケベデが直前エントリーして面白いことになりました。彼は去年のシカゴマラソンでモソップの大会記録を塗り替える形で2:04:38で優勝。さらに、川内優輝、今井正人の2名も日本からエリート枠で出場します。
女子はキプラガトとPジェプトゥーの優勝候補に、日本から重友梨佐が勝負を挑みます。
NYCMは坂があるのでベルリンやシカゴと比べてタイムは出にくく、番狂わせもあるそうです。また今回ワールドマラソンメジャーズ(WMM)の2012-2013シーズンの締めくくりの大会であり、優勝がかかっている選手も多く、白熱しそうです。WMM優勝候補は男子はケベデとキプロティチ、女子はキプラガトとジェプトゥー。優勝賞金はNYCM6千万~1億円に加え、WMMが5千万円相当です。
市民ランナーも多く参加し、参加人数では2003年から9年連続世界最大規模でした。前回2年前は、参加人数2位のシカゴマラソンに1万人以上差をつける4万7千人近くが走っています。
ブログ村マラソンカテからは、私が拝見してる範囲だと
リオさんと
Rubber Side Downさんが市民ランナーとして出場されるようです。お二人とも、楽しんできてください!
レース情報・中継
レースは11/3 朝9時頃スタート(当日深夜にサマータイム終了で日本時間は夜11時頃~)。厳密には女子が9:10、男子が9:40のウェーブスタート。よって男子のゴールシーンは日本時間11/4午前1:40頃となるでしょう。
ネットのライブ中継は日本からは
7online.comにて、アメリカ国内からは
WatchESPN.comにてストリーミング生中継が見られます。
追記:
それからランナーズワールドがテキストチャットでの中継を
こちらにて行う予定です。(私もネット観戦したいところですが、当日は10マイルレースに出場予定です。)
また、
こちらのページから各ランナーのスプリットタイムがリアルタイムに見られるはずです。公式ツイッターは一般向けが
@INGNYCMarathon、ニュース系が
@nyrrnews。
以下、選手紹介です。ソースは主に
NYCマラソンのプレスリリース(9/19)と
ランナーズワールドと
Letsrunと各選手のウィキペディアページですが、それ以外の場合はソースを明記しています。敬称略。
男子
大会記録はジョフリー・ムタイの2:05:05 (2011)。
2013年の有力選手は以下の通り。
Gムタイは81年ケニア生まれ。2011年のボストンマラソンにて、
男子フルマラソン非公認コース世界歴代1位である2:03:02を達成(大会記録を2分50秒も更新)。同年、NYCマラソンにてペーサーなしで大会記録を2分37秒も縮める2:05:06で優勝。2012年のベルリンでも
2:04:15の好記録。2011-2012シーズンのWMM優勝者。(※その前のシーズン優勝者のEムタイは別人です。)
この記事にも書きましたが、先日シカゴで2:03:45を出したデニス・キメットは練習パートナー。さらには、先日ベルリンにて公認コース世界記録の2:03:23を出したWキプサングとも練習しているそうです。彼らは
Volare Sportsというチームに属していますが、このチームが非常に良い成果を出している理由について、ムタイはこんな発言をしています。「ここのアスリートはクリーン。この地形での練習に勝てるようなドーピングは存在しない。」「ケニアのKapng'etunyやItenのような坂や谷のある場所でハードなハードな練習をするだけのこと。」「成功の秘密は単純さ。練習、練習、練習のみだ。」(
英語記事)
追記:Itenはこんな感じ↓オレゴンプロジェクトのメンバーが練習してる写真です。
ムタイのコーチを調べたら、驚きました。なんとセルフコーチです。練習メニュー例が
Letsrunに転載されていましたが、次の通り。
月曜 午前2時間、午後1時間@4:00-5:00/km
火曜 午前50分@5:00/km、午後12 x 1km @ 3:00/km w/ レスト1分
水曜 午前110分、午後2時間@5:00/km
木曜 午前40km@4:30~3:30/kmビルドアップ
金曜 午前110分、午後2時間@5:00/km
土曜 午前20 x 2分 @ 3:00/km w/ レスト1分
日曜 レスト
※高度2500m、恐らく未舗装路です。
※端数はマイルからの換算時に端折ってます。
※ウォームアップ・クールダウンは除いています。
ムタイは昨年秋のベルリン以降は、マラソンを完走していません。今年のロンドンは32kmあたりでリタイアし、DNFでした。その他の今年の戦績は、2月のRAKハーフマラソン(UAE)58:58、5月オタワ10K(カナダ)27:38。
一番最近では、9月22日の伊ウーディネ・ハーフマラソンにて
59:06の好記録を出していることから、今回も調子は良さそうで、当然優勝候補です。自身の大会記録を破り、記録の出にくいNYCMで4分台が出せるかが見もの。ゼッケン番号は1。
ケベデは87年エチオピア出身。自己ベストは2012年シカゴマラソンの
2:04:38。まあまあ若いのにシカゴ以外にも数々のレースで安定した戦績を残しており、2008年パリ国際(2:06:40)、2008年福岡国際(2:06:10)、2009年福岡国際(2:05:18)、2010年ロンドン(2:05:19)、2013年ロンドン(2:06:04)などで優勝し、他のレースでも上位入賞を果てしています。ただし「これらの栄光はフラットコースでの記録なので、今回の勝利は期待していない」とletsrunは分析(
英語記事)。2012-2013シーズンのWMMランキングは現在首位ですが、後述キプロティチがNYCMで優勝した場合はWMM優勝を譲ることになります。RWは8月の世陸の疲れから回復してるか懸念してますが、回復ってそんなにかかるものなんですね(
英語記事)。身長は5フィート2インチ(157cm)と小柄。ちなみに名前の綴りはTsegayとTsegayeの両方出てきます。
ホールはアメリカ人で恐らく唯一の
2時間4分台を出した選手。期待されていたものの、長引く故障のため残念ながらDNSです。
ビウォットは86年ケニア出身。2012年のパリマラソンで大会新&自己ベストの
2:05:11を出しています。2013年のRAKハーフマラソンでは、3位のGムタイを超える2位で、58:56の好タイム。9月のフィラデルフィア・ロックンロール・ハーフマラソンでも59:36の好タイムを出しており、仕上がり上々?
レルは78年ケニア生まれ。NYCマラソン2003 (2:10:30)と2007 (2:09:04)、それとロンドンの2005 (2:07:26)、2007 (2:07:41)、2008 (2:05:15)で優勝のベテラン。自己ベストはロンドン2008の
2:05:15。その後はロンドン2011と2012で2位になっています。近年は怪我で苦しんでいたそうです。10月中旬になって今大会に直前エントリーしました。
コリル(
@weskorir)は82年ケニア生まれ。自己ベストは2012年シカゴの
2:06:13。昨年のボストン優勝も、暑さのせいか凡タイムの2:12:40。今年の戦績は、シカゴ5位、ボストン5位。前述ホールの作った財団の助けにより、ケニアに病院を作ったりしているそうで、最近は慈善活動・政治活動が忙しい模様。今年3月にはなんと
ケニアの国会議員に選ばれています。
Pキルイは88年ケニア生まれ。マカウが2011年ベルリンで世界記録2:03.38を出した時のペースメーカー。さらには、Wキプサングが2011年のフランクフルトマラソンで当時世界歴代2位の2:03.42を出した時も、35kmまでペースメーカーを務めています。オーバーペースだったと思うのですが、そのレースはなんと完走したそうで、自己ベストの
2:06:33を出しています。ちなみに今年はびわ湖毎日に参加するもDNFでした。(※世界陸上マラソン金のAキルイは別人)
Sキプロティチ(
@stephenkiproti1)は89年生まれの
ウガンダの選手。ケニアとの国境に面したカプチョルワ県出身だそうですが、ウガンダの選手は珍しいですね。ただトレーニングはほとんどケニアでしているそうです。ウガンダのニュースサイトによると、ここ2ヶ月はケニアのKaptagat村にて
Global Sports Communicationチームの合宿に参加していたそうです(
英語記事)。自己ベストは2011年蘭エンスヘデマラソンの
2:07:20(ウガンダ国内記録)。2012東京マラソン3位、2012
ロンドン五輪優勝、2013ロンドンマラソン6位、2013
世界陸上優勝。自己ベストは他の選手と比べるとぱっとしませんが、ロンドン五輪ではWキプサングとAキルイに勝っていますし、世界陸上も制しているのは素晴らしいです。夏マラソンに滅法強いのか、それとも秋レースでも結果を残せるのか、興味があるところです。
マルティネス(
@chemitamartinez)は71年スペイン生まれ。通称Chema。長年クロスカントリーで活躍。
ケフレジギ(
@runmeb)は75年エチオピア生まれですが、12歳でアメリカに亡命、帰化。自己ベスト2:09:08(2012アメリカオリンピック選考会)。ボストンのために調整してきたものの、ふくらはぎの故障でDNS。夏にはいくつかレースに出たものの、9/15のフィラデルフィアのハーフはDNS。シューズのスポンサーは、珍しいことにスケッチャーズ(
英語記事)。
ハートマン(
@JasonRHartmann)は81年生まれのミシガン育ちのアメリカ人。過去2回のボストンマラソンでアメリカ人最上位。リッツ選手の高校時代のチームメイトだそうです。
ベイル(
@ryanvail)は昨年マラソンデビューを2:12:43で飾った86年生まれのアメリカ人(※ライアン・ベイルは前述ライアン・ホールや、若手ライアン・ヒルとは別人です)。昨年NYCがキャンセルになったので、福岡国際を走り2:11:45のPR(
英語記事)。
彼のブログにはNYCMの11週前からの全練習メニューと補強・ドリルが掲載されており、アスリートには参考になるかもしれません。オレゴン州ポートランドが拠点ですが、出身がその辺というだけで、オレゴンプロジェクトメンバーではないそうです。コーチはオクラホマ州立大のDave Smith。スポンサーはBrooks。
さて、お待たせしました。最後は日本人選手コーナーです。
川内は日本で最も有名な現役マラソン選手の一人なのであえて書く必要があるかわかりませんが、一応。川内は87年生まれ。埼玉県職員・市民ランナーとして活動しているにもかかわらず実業団選手に引けをとらない活躍で注目されています。日本のマラソンブームにも一役買っていると言われていますね。
他の選手と違う点は、練習量の少なさ、大会出場頻度の多さなど。今年もフルだけで11本ほど走るようで、12月には福岡国際と防府にも出るそうです(笑)ハーフも今年は同じぐらい出ています。海外メディアを見ていても川内というと市民ランナー+レース頻度という点で有名みたいです。
練習内容は、東洋経済ONLINE:
"公務員ランナー"川内優輝のマネジメント力によると、
「僕は実業団選手のように多くの練習時間を確保できませんし、朝練習もやっていません。練習量も少ないです。強度の高いポイント練習も水曜日と土曜日の2回だけ。水曜日がスピード練習(400mや1kmのインターバル走など)で、土曜日が距離走(30~43kmのペース走やビルドアップ走など)というのが流れです。あとの5日間はすべてジョグになります。ポイント練習は週に2回だけですから、そのときはいつも以上に集中して取り組んでいます」
実業団選手は恵まれた環境の中で、月間1000km以上の距離を走る選手もいるが、川内の月間走行距離は600kmほど。
ランナーズワールドの評価は「優勝は難しいだろうが、それは努力不足のせいではない。ゴール後はメディカルアシスタンスが必要になるだろう。」とのこと(
英語記事)。
川内が人気があるのは、市民ランナーを代表しているということもあるんですが、やっぱりあの真っ直ぐな性格、常識に縛られない自由さ、走りへの情熱、がむしゃらに頑張る様子でしょうかね。
ゴール後は他の選手はけろっとしてますが、川内はよく倒れます。賛否両論ありますが、あのシーンを見てしまったら普通の人は応援したくなりますよね。あと、海外遠征時にパスポートを忘れたり、コース下見してなくて一人アウトコースを走ったり、不甲斐ない結果で坊主頭にしたり、マラソンを盛り上げるためマイナーな地方レースにもゲスト出場したり、オーバーリアクションだったりと、人間味溢れる感じが親しみやすく人気があるのでしょうか。
他に日本人選手として珍しい点としては、練習シューズは通勤にも使っているというクッションの効いた黒のアシックスGT-2000 NEW YORK(
記事)。カーボローディングはカレーだそうです。あと、珍しくはないですが、使用GPSはガーミン・フォアアスリート910XTJ(参考写真:
このページの腕組み写真)。
WMMの大会としては東京、世陸以外で初の参戦となります。夏マラソンは苦手との評判ですが、今回は涼しいため、世陸以上の活躍は期待できそうです。レベルの高い戦いですが、5位ぐらいには入れるといいですね。
▲GTニューヨークを履いてニューヨーク入りした川内選手
追記:現地直前記者会見の発言を次の記事にまとめました。「僕にとっての幸せはお金より自由」「目標は6位以上」「中本のリベンジを果たす」といった主旨の発言が飛び出しています。川内がケベデを意識する理由、6位以上に目標設定をした理由も明らかに・・・!
今井は84年に福島県は現・南相馬市に生まれる。順天堂大学(陸上部主将)を経てトヨタ自動車九州へ。大学時代は箱根駅伝で3年連続の区間賞、金栗杯受賞。元アナウンサーの奥さんとは取材を通して知り合ったそうです。東日本大震災で実家が津波被害に遭われたとのことで、お見舞い申し上げます。
女子
コース記録はマーガレット・オカヨの2:22:31 (2003)。
2013年のエリート選手のうち、有力候補は以下の通り。
キプラガトは79年生まれ、ケニア人。世界陸上のマラソンを2度制覇。2010年のNYCMも制し、コースとの相性は十分。今年夏の世陸の疲れがまだ抜けてはいないかもしれないが、モチベーションは十分とRW。
Pジェプトゥーは今年のロンドンマラソンを制した、84年ケニア生まれ。
letsrunはキプラガトとPジェプトゥーの過去の直接対決は2勝2敗だが、今回はジェプトゥーに勝機があるとしています。その理由は、今年9月のグレート・ノース・ランで好タイムを出し、前女子5000m世界記録保持者のメセレト・デファーと現女子5000m世界記録保持者のティルネシュ・ディババに勝利したから。同レースの大会記録はポーラ・ラドクリフによる1:05:40ですが、これは非公認コース(30m下りのため)における女子ハーフ世界歴代1位です。ジェプトゥーのタイムはたった5秒差の
1:05:45だったとのことで、とんでもないタイムだったことが伺えます。そして、キプラガトより5歳若い点も有利です。なお、シカゴ優勝のリタ・ジェプトゥーは別人。
プロコプッカは2005、2006年のNYCM優勝者。その後陸上界から消え、再び姿を表したそうです。37歳。去年ハーフで1時間8分の好タイムを出しています。
ダドは2年前のNYCMで優勝。それ以降故障に苦しんでいるせいかあまり戦績がないそうです。
デバはNYはブロンクス在住のエチオピア人。2年前のNYCMで2位。
ストラーネオは37歳イタリア人。今年の世陸女子マラソンで2位でした。イタリアのハーフとフルの国内記録保持者だそうです。
ガメラ=シュミルコは今年の大阪国際女子の優勝者。
ストゥブリッチ(
@LisaStublic)はアメリカ生まれ&育ちで5年前からクロアチアに移住。コロンビア大学で音楽理論を専攻し、ランニングは趣味でやっているそうですが、後者のほうが今のところ彼女に合っているようです。
最後はお待ちかね、日本人選手です。
重友は87年、岡山県生まれ。興譲館高校を経て天満屋陸上部へ。初フルは2011年ロンドンにて2:31:28。2回目は2012年の大阪国際女子マラソンで
2:23:23(
日本女子マラソン歴代9位)。3回目はロンドン五輪で、故障のため2:40:06と惨敗。
まだ若いのでチャンスはたくさんありそうですね。今回、五輪のリベンジができるか、楽しみです!
▲NYCマラソンの高低チャート(
FindMyMarathon)。
最初がいきなりきつそうですね。
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