2013/11/29

裸足系vsクッションたっぷりシューズ、フォームに違いは出るか?

全然違う種類のシューズを履いたら、フォームに違いは出るでしょうか?ほんの一例ですが、海外人気ブロガー、ランブロガーさんのブログにそんな内容の面白い記事が載っていました。

マキシマリストシューズとミニマリストシューズ


タイプの違う3足


1足目はHoka One One(ホカワンワン/ホカオネオネ)という、クッションを「これでもか!」というぐらい入れているシューズ。

見た目は、ずんぐりむっくりな感じ。
この厚底ソールのボリュームは普通のシューズの2.5倍だとか。

「ミニマリスト」の反対なので、海外メディアは最近「マキシマリスト」シューズと呼ぶこともあるようです。

ホカオネオネ
(写真:Hoka One One - Stinson Tarmac)

踵着地でもコロリンっと、スピードを殺さないで走れるような形状にデザインされています。

ホカオネオネ


ウルトラマラソン・トレイルレースで人気のシューズのようです。
2010年のハセツネ(日本を代表するトレイルランニングレース)で優勝したアスリートが着用していたシューズ
100kmを超えるウルトラマラソンやトレイルレースでの着用者が多いのは、このシューズが着地時の衝撃を確実に吸収し、脚への疲労を軽減していることを証明しているといえる。
優れたクッション性に加えて約300g(26.5cm)と軽く、トップアスリートだけでなく「これまでのシューズではヒザなどが痛くなってランニングを諦めていた」というビギナーランナーにもいいかもしれない。
(引用元:日経トレンディネット - バネ内蔵、超厚底…“異色ランニングシューズ”が続々日本上陸!

追記:ホカワンワンは間違った読み方と思いきや、Hoka One One社の公式Youtube動画内ではホカワンワンと言っているので、英語圏ではこっちのほうが正しいようです。



2足目はK-Swissのありきたりな練習用シューズ。


3足目はVivoBarefootの裸足系シューズ。

1足目の対極にあるようなシューズで、クッション機能などを最小限にしたシューズです。この系統では裸足感覚のビブラムファイブフィンガーズが有名ですね。

VovoBarefoot - Evo

裸足系・ミニマリスト系シューズ(※両者は厳密にはちょっと違います)はソールが薄いので、こういう風にぐにゃっと曲がるのが特徴。

裸足系・ミニマリスト系シューズ
(写真:VovoBarefoot - Evo)

Evoの重さを調べてみると、230g(サイズ不明)。ターサージールがサイズによって150~180gぐらいなので、意外と軽くはないんですね。

この手のシューズはソールの厚さや、踵・つま先の高低差で種類がいろいろあり、踵が低く、高低差が少ないものほど裸足感覚に近いそうです。(いきなり履いて走ると怪我するリスクがあるので、試す方はよく調べてからにしてください…)

ちなみに踵・つま先の高低差はHeel-to-Toe Drop(HTドロップ)と呼ばれています。
踵・つま先の高低差(Heel-to-Toe Drop)
(写真:Running WarehouseによるYoutube動画のキャプチャ)

ランブロガーさんの別の記事による解説によれば・・・
HTドロップの数値は、低ければ低いほどランニング中にミッドフット~フォアフットで着地しやすくなる、と信じられている。この結果を裏付ける研究があるかどうかわからないが、私自身の異なるHTドロップのシューズを履いた経験と、私のラボでのHTドロップとフットストライクと関連を調べた非公式の実験によれば、これは正しい可能性が高い。
(引用元:RunBlogger - Heel-Toe Drop or Offset: What Does it Mean in a Running Shoe?

なるほど、シューズのHTドロップによって着地しやすい位置が変わるかもしれないのですね。


実験

上の3足を順番に履いて走った様子を、ハイスピードカメラで撮影したというのが、こちらの動画。




比較してみると、おお、ほとんど同じフォームですね・・・!
(Youtubeのページで再生速度を0.25倍にするともっとわかりやすいです)


ランブロガーの著者のラーソン氏の分析によると、地面接地時の膝の曲げ具合とオーバーストライドではないフォーム(スネの垂直具合でわかるそうです)のおかげでシューズによる違いが出にくかったのだろう、とのこと。

なお個人差があり、シューズによって違いが出る人もいるだろうとのことです。むしろこっちのほうがよくあるパターンっぽいニュアンスで書かれていました。

私が思ったのは、今回は走ったのは一瞬でしたが、実際に長時間走るとなるとどうなることやら・・・?Evoで長距離の踵着地だと、痛くならないんでしょうか。あと、自然にフォアフットになるよう、靴底に出っ張りがついてるニュートンのシューズなんかだと違い出るのか、気になります。

フォームについて

動画のフォームなんですが、ラーソン氏いわく、とても良いフォーム。姿勢が良く、前傾具合も良いそうです。

私はコンパクトな腕振り、肩の前後のブレなささが勉強になりました。

別動画を見るとちょっと内股っぽくなっているのがわかりますが、解説によると、人によって体の動き方は違うので、これでいいそうです。う~ん、深い。プロの視点ですね。

※ラン・ブロガーの著者ラーソン氏は、フォーム分析の研究を10年やってきた元大学教授。現在もクリニックでフォーム分析の仕事をする傍ら、人気ブログを書いています。


ちなみに動画の中で走っている人は、 トライアスロンコーチのコーリン・クック氏。アイアンマン北アメリカ地区選手権の30-34才エイジグループで優勝してたりする、速い人のようです。今まで大した怪我はしたことはないそうです。レースではホカオネオネを履いているとか。

違うシューズを履いて練習する利点

シューズはクック氏が持参したそうなのですが、なぜ3足持っていたかというと、種類の違うシューズはそれぞれ違った負担を体にかけることができるからだとか。ラーソン氏もこの考え方を実践しているそうです。

確かに、同じ走り方、同じサーフェス、同じ勾配ばかりで練習すると、体の同じ部分が鍛えられ、鍛えにくい部分はそのままになってしまいそうです。一理ありそうですね。

<12/7追記>
違うタイプのシューズを履き回したほうが怪我のリスクが減るかもしれない、という論文(英語)が発表されました。同じシューズで体の同じ箇所に負担をかけるより、分散させることでリスクが減るようです。実際にどういう種類のシューズだといいかというと、ランブロガーさんのこの記事では、クッション系、レース用、トレイル用、ウルトラミニマル、ミニマルを一例としてあげています。


身近なハイスピードカメラ

フォーム分析をやってみたい方に朗報。普通のビデオカメラは約30fps(=1秒あたり30枚の静止画をつなげて動画にしている)ですが、iPhone 5sは120fpsで動画が撮れるそうです!

youtubeで探したら、iphone 5sで撮った動画が見つかりましたが、かなりのクオリティですね。これは使えそうです!


感想

まあ一例にすぎないのですが、今回のようにシューズの影響が少ない人もいれば、モロに出る人もいるんですね。

私の体験だと、SALTYさんにお借りしたニュートンを履いた時、NBミニマスを履いた時、ターサーを履いた時、全部違う感触がありました。思い込みかもしれませんが、自分の感覚としては走りが変わっていた気がします。

記事内にあるように、いろんなタイプのシューズを履いてトレーニングするのはいい作戦かもしれないですね。ホカオネオネは高すぎる(170ドル、日本のアマゾンでは2万円ぐらい)ので気軽には買えないですが、一度履いてみたいです♪



おまけ:ケニア人のシューズは?

以前にもちらっと書いたのですが、ケニア人選手のシューズとフォーム(フットストライク)の関係について、こんな考察があります。
ケニアのランナーは低サポートのシューズでレースを走るが、練習のときは大きくて、がっちりして、クッション性のあるスニーカーで練習している。おかしなことに、これらのシューズで走ったからといって、Saxby Leeの理論に反して、踵着地になるわけではない。いわゆるベアフットスタイルで走っているのだ。シューズはあまり関係ないのだろう。
引用元:Adharanand Finn著「Running With the Kenyans」(ケニア人と走る)



おまけ2:これからマキシマリストシューズが流行る!?

2009年に創業したばかりですが、いろいろと話題で勢いに乗っているホカ。

今後ウルトラやトレイル以外でも存在感を出してくるでしょう。最近は800mの Michael Rutt 選手のスポンサーになったそうです(英語記事)。

なお、クッションふかふかのマキシマリスト系シューズは、ホカだけではないようです!

Altra Olympus、Brooks Transcend、New Balance Fresh Foam 980、Vasque ShapeShifter Ultraなど、各メーカーが出してきているようです。それとホカも、オネオネシリーズで他にもいろいろな分厚いシューズを出しています。


マキシマリスト系は今後のランニング業界の流行になっていくかもしれません!・・・と、海外ランニングメディアでは噂されています。今後が楽しみですね。

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2013/11/28

新常識?水分補給は「渇く前」でなく「渇いてから」という理論

賛否両論?ランニングにおける10の俗説という記事には、「給水エイドには全て立ち寄ること」、つまり「水をできるだけ飲め」というのは俗説だという話がありました。

7. 給水エイドには全て立ち寄ること
スポーツ医のルイス・マハラム先生によれば、「ノドが渇いてると感じた時には、すでに脱水状態で手遅れであるというのは俗説」「ノドが渇いたら飲めばいい、そうすれば過剰なハイドレーションを防げるし、お腹のトラブルが起きる可能性を減らせる」

詳細を調べてみると、「渇いたら飲む(Drink to Thirst)」というアドバイスの多くがティム・ノックス博士のWaterloggedという本を参照しているので、今回はその本に書かれている「渇いたら飲む」理論を紹介したいと思います。

「渇いたら飲む」理論とは

読んで字のごとくですが、喉が渇いてから水分補給するのがベストだよ、という理論です。ノックス氏が昨年出した著書「Waterlogged: The Serious Problem of Overhydration in Endurance Sports」(水浸し:持久系スポーツにおける水分過剰摂取の深刻な問題)で提唱しています。



ノックス氏は痙攣の記事セントラル・ガバナー理論の記事でも紹介した、南アフリカの運動生理学者。アマゾンの著者紹介によると、複数のスポーツ科学の論文誌編集委員を務めたベテラン研究者で、70以上のフル・ウルトラマラソンを完走したランナーでもあるそうです。

Waterloggedは数十年の大量の研究結果を元に書かれた本で、これだけのシンプルなメッセージ+αを伝えるのに450ページを費やしています(最初の原稿は1000ページ以上あったそうですw)。

長ければいいっていうわけではないですが、それだけ裏付けがある、ということなんでしょうね。そんな濃い内容を全部は紹介できない(※私はこの本持ってないです)ので、今回はノックス氏がランニング・タイムズに寄稿した記事(これは読みましたが長かったw)から要点だけかいつまんで紹介したいと思います。

「渇き」は最も信頼できる兆候

ノックス氏によれば、脱水で起こる唯一の症状は「喉の渇き」だとのこと。
体内の水分量が減ると、その分血液の成分(特にナトリウム)濃度が上がります。それによる浸透圧の変化を脳が検知することで、喉の渇きという症状が起きます。
(引用元:Running Times - Drink to Thirst

だから、脱水を適切に防ぐには、信頼できる手がかりである「喉の渇き」を頼りに水分補給をしよう、とのことのようです。

記事にはもっと細かく、生理学的に○○ホルモンが△△に作用して喉が渇く、というように説明がしてありました。では理論はいいとして、実際はどうかというと、こんな研究が。
米陸軍省環境医学研究所の科学者は、異なる脱水レベルのグループ(体重の0%、3%、5%、7%の脱水)を作り、ノドの渇き、疲労、衰弱具合、立ちくらみ、めまいなどの兆候がそれぞれどれだけ脱水レベルと関連しているか調べました。脱水レベルとこれら各要素は相関が見られたが、一番強い兆候を表したのが喉の渇きでした。
(引用元:同記事)

喉の渇きは実際にも脱水の兆候をよく表すようですね。

ただ、昔ながらの説明だと、渇いてからだともう脱水が始まっていて手遅れで、パフォーマンスも落ちることだし、渇く前にどんどん補給しないといけないのでは・・・?と思いますよね。その答えも載っていました。

本当に脱水=パフォーマンス低下なのか?

過去に「水分補給とパフォーマンス」という記事を書いた時、ランス・アームストロング選手(いろんな意味で超有名な自転車選手)の著書より、「体重の4~5%の体液が失われると能力が30%低下する」というような内容に触れました。

これは事実なのでしょうか?

ノックス氏の記事によると、ある年の南アフリカ・アイアンマン(スイム3.8km+自転車180km+フルマラソンという過酷なトライアスロン)では、トップ5人のゴール後の体重を測ったところ、全員に6~8%の体重減が見られたそうです。そして、ニュージーランド・アイアンマンでも同様の傾向が見られたそうです。

仕組みはこういうことみたいです。

まず、走る燃料である脂肪&グリコーゲンの分の重さが失われます。さらには、筋肉/肝臓中にはグリコーゲン:水=1:3の割合で水分子が含まれているので、その分の再チャージはすぐできません(12~36時間かかる)。
この理論だけで、運動中に最低2,000g体重が減ることが説明できます。測定可能な体水分量が変わらないまま、1,000gの水分を失うことがある、という研究結果も。

なるほど…。体重が減るのは発汗だけが原因ではないんですね。

夏に1時間走って発汗で体重が2kg減った場合と、100kmのウルトラマラソンのゴール地点で2kg減っていた場合では大違い、とも言えるでしょうか。

燃料分の体重が2kg減ったとして、体重が減ったからといってそれを補おうと水分を2L摂ったら明らかに飲み過ぎですね。

6~8%の体重減は燃料分よりも減っていそうですが、そのぐらいの脱水ならパフォーマンスは落ちない(軽くなった分で相殺?)ということも推測できます。

※脂肪・グリコーゲンが燃料って何の話?という方は、手前味噌ですが、拙記事「マラソン前のグリコーゲンローディングについて」をぜひ。

※南アフリカ・ニュージーランド人のトライアスロン選手(恐らくでかくてゴツイ)と日本人のマラソンランナー(小柄・細い)だと体格がだいぶ違うので、体水分量の割合も違うかもしれず、上のトライアスロンでの数字がそのまま当てはまるわけではないのでご了承ください。

水分を摂り過ぎると・・・?

体に備わっている優秀なセンサー/アラームである喉の渇きベースではなく、時間や距離ベースで給水をすると、飲み過ぎてしまうリスクがあるとのこと。

飲み過ぎると腹痛リスクや、体が重くなることで不利になりますし、何より低ナトリウム血症/水中毒になると、最悪の場合は生命の危険が。
水中毒(みずちゅうどく、英: water intoxication)とは、過剰の水分摂取によって生じる中毒症状である。
人間の腎臓が持つ最大の利尿速度は毎分16mlであるため、これを超える速度で水分を摂取すると体内の水分過剰で細胞が膨化し、低ナトリウム血症を引き起こす水中毒に陥る。
症状
血液中のナトリウムイオン濃度の低下に伴い以下の症状が生じる。
(略)
100mEq/L - 神経の伝達が阻害され呼吸困難などで死亡
(引用元:ウィキペディア - 水中毒、強調は私による)

水中毒の死亡例

逆に水分を摂らないと・・・?

間違ったメッセージが伝わるといけないので強調したいのですが、提唱されているのは水を飲むのを我慢することではないので、要注意。飲まなきゃいけない、でも渇いたタイミングで飲むのが最適、ということのようです。

例外として、一部選手はあまり飲まない人もいて、高岡寿成さんがフルマラソン男子日本記録を2002年のシカゴマラソンで達成したときは給水なしだったらしいです(ちゃんとしたソースはないけど、ウェブ上にそういう記述がたくさんヒットしました)。

でも普通の人は、暑い日に水を飲まないでマラソンを走ったら、とんでもないことになりますよね。

例えば、ランネットの評価が36点/100点(342人)という低評価だった某大会。運営の不手際で給水切れを起こしたそうで、レポを読むと地獄絵図です。

15km給水を最後にその先給水はなく、25km以降は怖くて歩きました。喉はカラカラ、人がゴロゴロ、倒れているランナーを救護もせず進む自分の不甲斐なさに涙がでました。
救急車のサイレンが鳴りっぱなし、道の端に倒れたり動けない選手が何人もいて、リタイアバスや救護対応が遅れているのを感じた。
道のあちこちで嘔吐してる人、倒れてる人、救急車が何台も走り去り、まさに地獄絵図状態。
側溝水をすすらざるをえなかった屈辱感、倒れる人々を見捨てた罪悪感、高架からの逃げ道もなく、リタイアしても救護される目途がつかない恐怖・・・。ゾンビのようにうつろな目で歩く群れが、一人倒れると連鎖的に倒れていく、それも疲れ果ててうずくまるのではなく、意識を失い落ちていく、あと10メートルで陸橋の日陰があるのに、たどりつけず倒れ伏しているのです。あの一滴の水もない23キロ給水点で「次の給水点どこか不明&水の有無も不明」と聞かされてからの、絶望街道死の行軍を味わった仲間のランナーと、特に挫折せざるを得なかった無念のランナーたちのために、どうしてもこの大会の評価は最低点を付けたいのです。
(引用元:ランネット


私も練習で経験してますが、喉が渇いた時に水がないと、ほんと辛いですよね…。

ノックス氏の記事で紹介されている研究によれば、ゴール時に7~10%ほどの脱水ではただちに影響のある健康リスクはないそうですが、15~20%だと臓器不全のリスクがあると書かれていました。

実際に「渇いたら飲む」でウルトラ完走した人の話

161kmの山岳ウルトラレースで「渇いたら飲む」を実践してみた、というiRunFarの記事を、日本語訳で紹介している良記事を見つけました。まず、こんな冒頭で始まります。
iRunFar.comで今年のWS100で9位の好成績を残したJoe Uhanが、南アフリカのスポーツ生理学の大家、Tim Noakes博士の近著、”Waterlogged”に書かれている補給の考え方をもとにWS100を走った結果について書いている。 
“Waterlogged”は「飲めるときに飲めるだけ」という水分補給の考え方はドリンクメーカーの宣伝にすぎない、塩分補給は無用、と説いていて、従来の補給の考え方(少なくともアメリカの考え方)を覆すものとして注目されている。
(引用元:DogsorCaravan - ウルトラマラソンでは水分と塩分の補給は最小限で、糖質補給は切れ目なく:”Waterlogged”からの教え


Joeさんの体験談はというと、
Joeが今年のWS100を走ってみたところ、前半で体が重くなってペースがダウン。経験上いつも摂っていた塩分補給のサプリ(S!Caps)を摂ったところ調子が戻ってよい結果をおさめることができたとのこと。
これについてNoakes教授は、「塩分の摂取が脳に刺激を与えて良い結果につながったといえるかもしれないが、塩分を取らなかったからパフォーマンスが落ちるとはいえない」とのこと。
(引用元:DogsorCaravanの同記事)

う~ん、もっといろいろな人の体験談が知りたいですね。特にフルとウルトラで違いがあるのか、なども知りたいところ。

あと気になったノックス氏の説明:
・ランニングによって体温が上昇する程度は、運動量、具体的には走るスピードによる。100マイルのウルトラマラソンではスピードはさほど出さないのだから、特段体温上昇を気にする必要はない。
(引用元:DogsorCaravanの同記事)

ということは、距離によっては多めに飲んだほうがいいのかな…?


面白い記事でしかも日本語なので、興味のある方はぜひ上のリンクから全文を読んでみてください。

まとめ

ポイントをまとめると、こんな感じかと。
  • 水分補給タイミングは、「渇いてから飲む」がベスト
    • 渇きセンサーは優秀
    • 距離/時間ごとに飲むのは、飲み過ぎるリスク
    • 飲み過ぎも、飲まなすぎも、両方まずい
  • 持久競技での脱水とパフォーマンスの関係には誤解がある
    • 体重減は発汗だけではないので、減った分だけ水分補給してたら飲み過ぎに
    • 少々の脱水は実はそこまで悪影響がない

もっと知りたい方は「Drink to thirst」「Noakes Waterlogged」などのキーワードでググるといろいろ情報が出てきますが、まだ日本語の記事はほとんどないようです。

感想

実は最初は眉唾セオリーかと思ってました。「ノドが渇いてると感じたら手遅れ」「走った後は走る前と同じぐらいの体重になるぐらい水分を補給しろ」「脱水はとにかく避けなくてはいけないし、パフォーマンス低下にも繋がる」などと、今まで良く目にしていましたので・・・。

でも説明を読んでみると、今は少し説得されてきました(まだ少し引っかかるところもありますがw)。

「渇いたら飲む」を実際に試している方がいたら、どういう結果になったか教えてくださいm(__)m


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  • iRunFar - Waterlogged – A Dogma-Shattering Book?
    本文中で紹介した記事のパート1で、Waterlogged本の解説(英語のみ)。この本には「渇いたら飲む」以外にも、「水分補給は熱中症予防にはならない」「ウルトラでは塩分補給の必要はない」「尿の頻度・色はハイドレーションや腎臓機能とは関係ない」などの従来の常識を覆すような主張があるのですが、本記事ではそういった点には触れませんでした。

タイプ別ハイドレーション


▲揺れにくい型

▲リュック型

▲手持ち型

▲腰巻き型
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2013/11/26

娘の誕生日&七五三

娘が3才になりました!

お祝いは手作りアンパンマンケーキで♪



ピンクの部分はクッキーのコーティング、
目はプルーンチョコです。


現在、奥さんと娘は日本に里帰り中。

七五三も無事済ませました。




写真館で撮影したときはギャン泣き、
その後も表情が硬かったみたいですが、
家に帰ってからは着物がようやく気に入って
ご機嫌になったとか。

健康にすくすく育ってくれたことに感謝!


日本では「オハイオパイルに行きたい」と
わがままを言っているそうです。
9月上旬に行った州立公園なんですが、
普段全然そんなこと言っていなかったのに、
なぜ突然…。

それにしてもよく覚えてるな~。
大自然散歩がそんなに楽しかったのかな?

関連記事:「オハイオパイルでプチ迷子:ガーミンがラン以外で役立った話


あと、アメリカにいる間はぐちゃぐちゃしたもの
しかお絵かきできなかったのに・・・


アンパンマンらしきものを描けるように!
いつの間に・・・。


以上、親ばか日記でした(笑)
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2013/11/24

氷点下6度の20km走

アクセス10万の記事から1ヶ月、いつの間にかPVカウンターが20万になってました。
いつもありがとうございますm(__)m

どうも書いてからしばらくして、検索経由でじわじわとアクセスが増える記事が多いみたいです。
最近だと、マラソンシーズンだからか、2ヶ月前のこの記事にアクセスが増えています。


さて、今日は寒いので走る予定ではなかったのが、ブログ村の速報&30km走祭りに刺激されて(?)、突如ランを決意!氷点下の中走ってきました。



▲ガーミンだと体感-11度となっています・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

下はテニス用のもこもこしたやつ、上は半袖+長袖2枚+ウインドブレーカー、それにニット帽とグローブ着用だったのですが、ちょっと間違いだったようです。

これだと走ってるときは暑すぎたのか、汗をかいてしまい、それが冷えるパターンに…。途中ちょっと雪がちらついて、寒かったです。インターバルのときは2度でもっと軽装だったのにそんなに汗をかかなかったので、加減がむずいですね。長袖は1枚でよかったかな~。


コースはこんな感じのお気に入りの川沿いトレイルコース。


距離は21km@Eペース。


ガーミンコネクトを見ると、どうも20km以上走ったのは9月のマラソンぶりだったようですw
長い距離走ってなさすぎですね…(^_^;)


▲元ハインツケチャップ工場、現おしゃれアパート

▲帰る頃にはすっかり暗くなってました
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2013/11/23

VDOT++…練習強度をいつ上げるか?○○でしょ!

最近は、スピード練を目標週1で入れています。

ダニエルズ式計算ツールによると、5KレースPRから算出したVDOTは52.7で、閾値走は4:05/km、インターバルは3:45/kmの設定ペースが最適のようです。

ダニエルズ式計算ツールで最大酸素摂取量ベースの練習メニューを立てる

しかし、レースを控えてなくて練習がこなせている人は4~6週でVDOT+1相当の負荷アップが丁度いいとダニエルズ本にありました。

じゃあ練習強度をいつ上げるか?・・・今でしょ!というわけで、そろそろVDOT53.7の負荷に上げてみようかと。

閾値走@4:01/kmは大丈夫そう。インターバル@3:41/kmは・・・やってみないとわからないですが、つらそうです(笑)


今月のスピード練

スピード練の時は400mトラックで、基本ターサージールです。
ガーミン画面は「ラップタイム」「ラップ距離」「現在のペース」「ラップペース」に落ち着きました。

■インターバル走1
5 x 1000m
3:45 - 3:44 - 3:44 - 3:44 - 3:34

最後200mはダッシュ。
レストのジョグは5:00/km~6:30/km、平均3分でした。
2℃と寒かったですが、上は半袖+長袖で。


■閾値走
5000m
4:05 - 4:04 - 4:08 - 4:05 - 4:00

気温は7℃。
この時はたしかターサーじゃなくてスニーカーだったような。。。
(関連記事:「虎走・5K・TTするで」はじめてのレースシューズ!


■インターバル走2
5 x 1000m
3:45 - 3:45 - 3:47 - 3:42 - 3:33

ラストは全体的に速めで。
レストのジョグは5:00/km~6:00/km、平均3:10。

また2℃と寒かったです┐(´∀`)┌ヤレヤレ
↑別にこれぐらいの気温なら走りやすいんでいいんですけどねw

ちなみに明日の最高気温はマイナス3度・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

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2013/11/22

ランニングで脚が痙攣する仕組みと対処方法

ブログ背景を変えてみました。
クリスマスな雰囲気にしたつもりが、ただ緑なだけのブログに・・・w


さて、以前紹介した「賛否両論?ランニングにおける10の俗説」のうち、まずは一番自分に身近なテーマ、運動中の痙攣(足のつり、こむら返り)について書いてみたいと思います。

8. カリウムは痙攣防止になる
前出マルチネス氏は、最近の研究ではカリウム摂取と痙攣の相関関係は見られていないとしています。 「ティム・ノックス氏は痙攣は筋肉の疲労からくるものとしています」「痙攣とより関係あるのは、練習不足または脱水なのです」

元記事はカリウムが痙攣防止になるのが俗説としていますが、さてどうなんでしょう・・・?

結論から書くと、いろいろな記事を調べた結果、「痙攣の厳密な仕組みは解明されていない」「電解質(ナトリウム、塩化物、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどのイオン)不足が痙攣を起こすという、広く信じられている説は疑わしい」というような内容の記事が多かったです。そして、有力そうな仮説もあるようです。

以下、詳細です。

痙攣の俗説

文献レビュー by 彦井氏

彦井浩孝氏(オレゴン州立大PhD・運動生理学・栄養学)が関連研究をまとめた記事から、引用します。
競技中に EAMC を起こしたランナーでも血清中の電解質濃度は正常な範囲内にあり、しかも脱水との因果関係も示されていません(Schwellnus ら、2004 年)。最近の研究では、電解質不足や脱水が必ずしも EAMC の原因ではないと考えられています(Miller ら、2010 年、Schwellnus、2009 年)。
(引用元:日本フィットネス協会HEALTH-NETWORK August, 2010, p41 [PDF])

※「EAMC (Exercise-Associated Muscle Cramps)」は、運動中に脚を攣ること。「運動誘発性筋けいれん」。

電解質不足・脱水は痙攣の直接の原因ではなさそうですね。

だからといって、電解質不足、脱水で走っても良いというわけではないので要注意。低ナトリウム血症や脱水症状になったら大変です。また、後述しますが、要因として100%除外できるわけでもないようです。

「俗説は消えない」・・・フリール氏

以前にもちらっと紹介した、長距離自転車コーチのジョー・フリール氏のブログは、論文がたくさん登場するかなり濃いブログです。痙攣については、こんなことを書かれています。
筋肉の痙攣が起きる原因は誰も知りません。通説では電解質が犯人ということになっているが、それは限りなく疑わしいです。スポーツ・栄養産業は、この俗説に乗っかって商売をしています。
過去25年の間に様々な研究が電解質と脱水は痙攣の原因ではないとしているが、この俗説は消える気配を見せません。
(引用元:Joe Friel - Muscle Cramps and Mythology

25年間のいろいろな論文のリンクは[123456]です。

痙攣の最新説については、タッカー氏のブログ(後述)を見てください、とのこと。

なぜ俗説が生まれたか?

なぜ電解質が痙攣と関連付けられたのか、フリール氏は経緯について解説しています。
20世紀のはじめ、港湾労働者は荷物の積み下ろしの最中、よく痙攣を起こすことで知られていました。そこで当時の科学者が痙攣を起こしていた者の汗を調べたら塩化物イオンCl-が見つかりました。痙攣を起こしていない者の汗の成分を調べもせず、短絡的に「痙攣と電解質不足(と湿度と湿度)は関連がある」との結論が作られました。こうしてこの俗説は誕生したのです。
(引用元:Joe Friel - Muscle Cramps and Mythology

一旦広く信じられてしまうと、なかなか難しいんでしょうね…。

痙攣の原因

「神経説」・・・タッカー氏の解説

タッカー氏は、この記事で触れた「セントラル・ガバナー理論」提唱のティム・ノックス博士のもとでPhDを取った現役の運動生理学者。専門分野は疲労。

彼はサイエンス・オブ・スポーツというブログで濃い情報を発信しています。痙攣についても何本か書いています。

その中の一つの記事では、痙攣は電解質不足や脱水では説明できない、けど100%除外することもできない、としています。

そして、同記事では疲労による痙攣の仕組みの有力そうな説を細かく解説してるのですが、第一線の研究者が書いてるだけに、そのまま訳しても恐らくちんぷんかん…。

先ほどの彦井氏の解説の続きのほうがわかりやすいと思いますので、まずはこちらをどうぞ。
一方で、EAMC が起こる前兆として、筋の放電量が高まっていることが指摘されています(Schwellnus ら、1997 年、Sulzer ら、2005 年)。この筋放電量の増加は筋疲労や中枢疲労による筋神経系の過剰な活動の結果として起こっていると考えられており、筋疲労や中枢疲労のある状態では、無理な姿勢や急な筋力発揮によって筋神経系へ急激な刺激を与えやすくなります。これが、過剰な反射を引き起こし、過度の収縮、つまり EAMC をもたらすと考えられます(Miller ら、2010 年)。また、興奮や緊張、不安などの精神状態や力みが、中枢から筋肉へ過度の刺激を発生させ、筋神経系に過剰な反射を引き起こす可能性もあるようです。


・・・もっとわかりやすい説明ですか?

わかりました、私が調べながら解釈した内容を書いてみます。

(一応他のソースも調べましたが、細かいとこ間違ってたらすみません!)



■ 通常時1

α運動ニューロン「ども、筋肉の収縮をコントロールしてるものです」

筋紡錘「自分は筋肉のセンサー(^O^)」
筋紡錘「伸びすぎると発動する安全装置みたいなもんっす」
筋紡錘「脳を通さず反射的に体に信号送れるっす」

筋紡錘「お、さっそく筋肉が伸びてるっ!」
筋紡錘「このままじゃ筋肉切れるのでは? つД`)・゚・。・゚゚」
筋紡錘「筋肉収縮命令ファイアー!(*°∀°)=3」

α運動ニューロン「確かに、Ia線維経由で脊椎より命令承りました」
α運動ニューロン「筋肉よ、収縮するが良い!」



■ 通常時2

ゴルジ腱器官「自分は腱についているセンサーっす」

ゴルジ腱器官「おや、腱に負荷かかってる・・・」
ゴルジ腱器官「筋肉には収縮やめてもらわないと つД`)・゚・。・゚゚」
ゴルジ腱器官「筋肉リラックス命令ファイアー!(*°∀°)=3」

α運動ニューロン「確かに、Ib線維経由で脊椎より命令承りました」
α運動ニューロン「筋肉よ、リラックスするが良い!」



■ レースでの疲労時

筋紡錘「(;´Д`)ハァハァ疲れて混乱するー・・・」
筋紡錘「収縮命令いっぱいファイアー!!!ヽ(`Д´)ノウワァァァン!!」

ゴルジ腱器官「(;´Д`)ハァハァ疲れて混乱するー・・・」
ゴルジ腱器官「リラックス命令減らします!収縮の方向でヽ(`Д´)ノウワァァァン!!」

α運動ニューロン「お、なんだ収縮祭りか?!?!」
α運動ニューロン「よし筋肉よ、思う存分収縮するが良い!」

筋肉「痙攣 キタ━━(;゚Д゚)━━!!」

α運動ニューロン「やべ、やりすぎたwww」



大体こういうイメージみたいです。(適当すぎたかw)

研究では、疲労時の反射の異常(Ia線維の活動活発化とIb線維の活動低下)がエビデンスとして出ているそうです。

また記事には、神経説では説明がつくけど電解質不足説では説明できない問題がいくつか挙げられています。例えば「どうして脚の特定の筋肉が攣りやすいのか」。確かに…。

その他原因色々・・・ロー氏の解説

ロー氏は理学療法士の博士号を持つ元体操選手。彼の記事によると、痙攣は以下の様な原因で起こるそうです。

  • 衝撃や怪我
  • 痙攣/細胞ダメージ/循環機能低下 → 血流の低下 → 該当部分の酸素不足 → 代謝機能低下 → ATP不足など → 痙攣が続くことに。
  • 運動ニューロンの機能が適切に動いていない/逆にアクティブすぎる。(※先ほどの神経説ですね)
  • 筋肉の使いすぎ
  • 栄養の摂り過ぎ/不足により、電解質のバランスが崩れることによって(※運動中の発汗による電解質の不足が痙攣を起こすわけではないとのこと)

その他にも、重要度は低いですが、
  • 可動範囲の狭さ。体が固い人はたいてい筋肉が張っていて、血流が悪く、上の2番目のシナリオと同様のことが起きる。
なお、記事では乳酸は痙攣とは関係ないとしています。「血中乳酸濃度との相関は見られるかもしれませんが、乳酸が痙攣を起こすのではないのです」だそうです。

痙攣した後の対処

痙攣が起きた時の対処法としては、タッカー氏の先ほどの記事では、「一番効果的な対処方法はストレッチだ」「20秒ほどのストレッチでα運動ニューロンの活動低下がみられた(つまり痙攣が収まる方向へ)」と書いています。

じてトレの記事では、神経説の前提のもと、対策として「ピクルスジュース」「芍薬甘草湯」「疲労抜き」が紹介されています。
2010年のブリガムヤング大学の研究では、60mlのピクルスジュースを飲むことで、筋肉の痙攣が45%速く、平均で約85秒以内に収まるという興味深い研究結果が出ている。
(引用元:じてトレ - 足つりの予防方法や対処方法に関する情報

元論文はこれ。酸(酢酸)が鍵だとしたら、レモンジュースや梅干しでも効くのかな・・・?

まとめ

というわけで、いろいろな仮説が出ているようですが、完璧な理論はまだないとはいうものの、神経説が有力な印象を受けました。

確かに、マラソンに限って毎回攣っている自分の体験とも合います。エリーマラソンなんて、走る直前に塩をつまんだのに、そしてコンプレッション・ソックスも試したのに、攣りましたし。ただ、攣った後はストレッチは特にしなかったんですが、エイド毎にゲータレードを2杯飲んでいたおかげで走り続けられた気がしないでもありません。まあ気のせいかもしれませんが(笑)


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2013/11/19

科学的トレーニングについて知っておきたいこと<後編>

昨日の記事が意外と反響あって驚きました(笑)

科学トレーニングへの理解を深めるために参考になりそうな内容をまとめています。
今回は、前編中編の続きです。

研究結果は再現しないことも

再現性が低いケースも

先月エコノミスト誌に「How science goes wrong」(科学はどう間違いを犯すのか)という記事が載りました。論文で出た結果を他の人が試したら全然再現できないじゃないか、という指摘です。記事に出てくるケースを紹介すると・・・

  • アムジェン社がガン研究で重要とされるものを53件追試したところ6件、つまり11%しか再現できなかった。(詳細:Nature
  • Bayerという企業が67の研究プロジェクトを調べたところ、関連研究と合致する結果が出たのは20~25%ほどのプロジェクトのみだった。(詳細:Nature
  • MDアンダーソン癌センターの研究者への調査の結果、約50%の回答者は論文の結果を再現できなかった経験があると答えた。(詳細:この論文

生命科学とは状況が違うとは思いますが、スポーツ科学でも再現性の問題はあるのでは、と思います。

予想ですが、ほとんどの場合は別に捏造がどうとかではないと思います(もしそうだったら大問題)。前編で触れたような個人差による偶然もありえますし、再現に必要な前提が論文にちゃんと書いてなかったりとかはよくありそうな予感がします。

主観的アンケートには要注意

評価が被験者へのアンケート方式だったら、アンケート文も載せないと再現は難しいことも。

聞き方次第で結果が変わるという不思議だけど有名な例が、交通事故で死亡したときに臓器提供をしてもいいという人の割合(下グラフ参照)。国によって大きな差がついています。

(引用元:TED - Dan Ariely: Are we in control of our own decisions?、ちなみに元ネタはScienceのこの論文)

ドイツ・オーストリア、デンマーク・スウェーデンのように、文化的にも似ている国々で大差がついてしまった理由はただ一つ。

それは、質問の仕方がオプトイン式(=提供しますか?)かオプトアウト式(=提供したくないですか?)だったから。

質問の仕方次第で回答が極端に変わることもあるのですね。

プラセボ・ノセボ効果

客観的な評価だからといっても、油断は禁物。前編でも書いたようにプラセボ効果で出る場合もあるので、「ダミー」も用意したほうが結果は信頼できるでしょう。薬と違って被験者に違いがバレバレで、完全にコントロールするのは難しいかもしれませんが…。

アレックス・ハッチンソン氏の記事(Runner's World)によると、コンプレッションウェアの評価はこれまでいろいろな矛盾する結果が出ているそうです。


記事では「段階着圧のコンプレッションタイツ」と「伸縮性のある普通のタイツ」で回復に違いが出るかを比較をした研究(上のグラフ参照)を紹介しているのですが、これまでのほとんどのコンプレッションウェアの研究ではプラセボ対照実験をしていなかったとのこと。

ところでランナーズワールドは他より質が高い記事を書くライターが多い気がします。他誌でも論文紹介の記事もあるんですが、結果だけ書いて理由を書かないみたいな表面的な記事もあったり…。RWは批評もちゃんとしていることも多々あります。上の記事を書いている人は世界クロスカントリー選手権カナダ代表で、ケンブリッジ大で物理のPhDを取り、NSAを経て科学ジャーナリストになった異色の経歴の持ち主。RW内担当コーナーの「Sweat Science」は科学記事がずらっと並んでいて面白いです。

ラボ vs リアル

第三者が実験で再現できたとしても、実際に各自で再現できるとも限りません。またもや個人差の問題もありますし、中編「部分vs全体」で述べたように、複雑な要素が絡みあう中で実際に効果が出るかはわかりません。

他にもいろいろな要因がありえます。
population, equipment, study length, long term vs. short term, etc
(引用元:マグネス氏のスライド8ページ目)

population(集団)の差は重要そうです。日本人以外が対象の実験が筋骨格構造の違う日本人にも当てはまるかはわかりません。大学陸上部や軍人を対象とした実験結果が、一般人にも当てはまるかはわかりません。

また、ちょっと再現条件が変わると当てはまらない例も。トレミの結果をロードに当てはめるのは不適切かもしれないという論文(Nigg et al., 1995)もあります(そうでないという論文(Fellin et al., 2010)もありますが)。関連記事:トレッドミルFAQ

他にも上にあるように、短期的スパンの実験結果が必ずしも長い目線で見た結果に当てはまるとは限らないでしょうね。

研究するのは大変で、わかっていないことも多い

被験者が集めにくい

意外かもしれませんが、自明そうに見えて実は答えが出ていないテーマもたくさんあるようです。

例えば「柔らかい地面と固い地面、どちらで練習するべきか」という問題に対しても、まだ結論は出ていないようです。(参考:Nice Body Make・・・よもやま話 - 第148回 アスファルト vs 柔らかい地面

「実験してみればいいじゃん」と思われるかもしれませんが、実験するのは一苦労。

ミシガン大学のキネシオロジーの教授がコンペティター誌の記事の中で、上の問題に結論が出ていない理由についてこんなことを仰っています。
数百人のランナーを舗装路、ダート、トラックというように分け、違うサーフェスで全く同じ練習内容を1年間してもらい、実験するのが理想。ただ、そんな練習の実験台になりたいと思うようなランナーはほとんどいないのです。実際のところ、ランニングのフィールド上でのスタディのほとんどは、軍隊のブートキャンプで新入りの軍人によってデータがとられているのです。
(引用元:Competitor - Is There One Best Running Surface?、太字は私による)

分野によっても状況は違うと思いますが、スポーツ科学は被験者集めと長期的評価が大変と・・・。確かに、効くかもわからない練習に1年も付き合わされたくないですね(笑)

サーフェス比較ぐらいの実験ならいいですが、怪我のリスクのあるフォーム改善系とかの実験だともっと大変そうですね。

予算がないとできない

あと、研究は予算がないとできません。

シューズ絡みの研究などは企業スポンサーもつくかもしれません(それはそれで研究の独立性が保たれなくなってあまり良くないのかもしれません…)が、アメリカの場合だと多くはNSFやNIHなどの政府系の研究予算に頼ることになると思います。

NIHの仕組みはよく知りませんが、NSFだと研究プロポーザルの判断基準として、科学的な価値(Intellectua Merit)の他に広範囲な影響力(Broader Impact)があります。

後者の基準ではランニングのパフォーマンス解明が世の中にどれだけ役立つか説明できないといけないわけで、研究テーマによっては通りにくいんでしょうね。

余談ですが、有名な研究だと、ハーバード大リバーマン教授らの2010年の裸足ランニング研究はNSFに支援されていますが、スポーツ科学というより進化人類学ということで通りやすかったのかもしれません。

研究結果は正しく伝わりにくい


メディアが研究結果を伝える時は、紙面や尺の都合や、速報性への偏重や、分かりやすく伝えるという建前上、厳密さを犠牲に噛み砕きすぎてしまうことがありますね、下の方の例のように。
明らかに僕らの研究ではその方の病気をすぐにどうこうできるものではなかったから。(略)ライターが少し強調して記事にしたことで、二次的、三次的情報に尾ひれがついて、結果的に詐欺のような誇張した内容になってしまったのだ。
(引用元:アメリカポスドクの歩き方 - 情報伝達の難しさ

よくあるのは、相関関係と因果関係を混同させるような釣りタイトルになっていたり、転載されるうちに伝言ゲームのようにどんどん内容が変わっていったり・・・。
マスコミやマーケティング関係者の中には妙に相関係数を好み、実は全く関連が無いような事柄を強引に結び付けることによって、いかにも「世紀の大発見」をしたかのような騒ぎを演じる(確信犯か大マジメかは不明なので、一応演じるとしておきましょう)人々もいるようです。
(引用元:世の中ナナメに見てみよう! ~楽しい数字、怪しい数字、卑しい数字?~  - 相関関係と因果関係

自分が詳しいと思っている分野を見ていても、上みたいなことはしょっちゅうです。

まとめ

スポーツ科学は役に立つこともあれば、いろいろな理由で実際に効果が出ないこともあるので気をつけましょう☆


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2013/11/18

走る前に、貼る?!

※男性向け記事です。




固い記事三部作の途中ですが、ふとこんな商品が目に止まりました。

走る前に、貼る。
http://mensnipless.com/marathon/


> 無色透明!スケルトン仕様
> オシャレ、そしてよりスマートに。

→透明だとおしゃれなの?w


> ISO 10993医療機器国際基準クリア!
> 安全性が検証されています。

→絆創膏でも安全なんじゃない?


私はトラブルが起きたことはないんですが、念のためフルマラソン前だけはテーピングの切れ端を貼ってます。そして、それで困った事はありません・・・。

ただ、こんなところにオシャレさ、スマートさを考えたことはありませんでした。
見えないところだし・・・。

あ、持ってないので気付かなかったけど、ランニングシャツだと見えてしまうこともあるのかな・・・!?








というわけで、オシャレさ、スマートさを追求する方は、スケルトン仕様をチェックしてみては?!
(私はテーピングでいきますw)





追記:あわせて読みたい
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2013/11/15

科学的トレーニングについて知っておきたいこと<中編>

前編の続きです。

スティーブ・マグネス氏の「コーチングへの科学の応用・導入について」というスライド紹介を中心に、科学トレーニングへの理解を深めるために参考になりそうな内容をまとめています。

研究は測定できるものばかり重視する


マグネス氏のスライドは、研究は測定可能な指標に重きを置きすぎている、としています。

測定できるものといえば、例えばV̇O2max、LT値、ランニングエコノミー、心拍数などです。定量化できるとわかりやすく、近似的にうまくいくので多くの人が使うわけですが、ランニングパフォーマンスを厳密に説明する要素としてはこれらだけでは不完全です。

例えば東アフリカランナーの圧倒的な強さ、ポーラ・ラドクリフの女子フルマラソン世界記録の圧倒的な速さを完璧に説明できる決定的な理論はまだないようですね。もちろん仮説・弱いエビデンスは山ほどあるようですが…。そこらへんの話はこの記事(英語)や下で紹介する論文などに詳しいです。

今はまだ定量化ができないせいで研究として陽の目を浴びにくいが、もっと他に何かあるんじゃないか、ということですかね。(このロジックだと「科学には限界があるので擬似科学的なもの、オカルト的なものに説明を求めよう」的なパターンにならないよう、注意も必要ですけどね。)

セントラル・ガバナー理論

定量化は難しいけどある程度支持されている仮説の一つとしては、体が壊れる前に発動する脳のリミッターによりパフォーマンスが左右されるという「セントラル・ガバナー理論(CGM)」なんてものもスポーツ生理学者のティム・ノックス博士により提案されています。

スポ根・精神論とも意外なところでつながっているかもしれず、興味深いです。

マグネス氏も自身のブログ「サイエンス・オブ・ランニング」のこの記事(英語)でV̇O2maxの限界とCGMについて説明しています。ノックス博士の弟子2人の綴るブログ「サイエンス・オブ・スポーツ」(英語)にも平易な解説記事がたくさんあります。

もっと専門的な記事だと、「ケニア人ランナーは脳が違うから速い」という論文の紹介記事がここで日本語で読めます。ノックス氏の原著は「V̇O2maxでなくセントラル・ガバナーが走力の限界を決めていますよ」というような内容の2001年の論文がPDFで公開されています。

なおCGMは賛否両論で、批判もたくさんされてはいます(英語版ウィキペディアのCentral_governor#Criticismsから反論記事へのポインターがたどれます)。

部分 vs 全体


科学者:要素を部分部分に分解してどれが効くのかを抽出する
コーチ:全体的アプローチ
(スライド8ページ目)

スライドだけだと実際どんな内容を講演したのかわかりませんが、推測するにこんな感じかと。

  • 科学者の場合は、XがYに効果があって、Yがパフォーマンスと関連している、というように変数Xを分離しようとする。しかもコントロールされたラボでの実験は、実際走る環境よりシンプル(トレッドミル、風なし、短期的etc)。
  • コーチは使えるものは取り入れつつも過信せず、「いろんな変数が組み合わさった時に実際の結果がどうなるか」を気にすべきで、実践的、マクロ的、長期的な視点が必要。

例を挙げると、反発力のあるシューズだと同じ重さのシューズよりランニングエコノミーが1%改善された、という研究結果が出たとします。でも、比較対象になりうる一般的なシューズより実は重くて、それによって改善分が打ち消される可能性もあります(参考:スプリング・ブレードの記事)。

「速くなる○△□」を採用するべきかの判断方法


マグネス氏の大学時代の教授が授けてくれたという、速くなるかもしれないアイディアを練習に取り入れる際の3つのチェックポイントです。
1.実践・・・実際に使えるの?
2.研究・・・裏付ける研究はあるの?
3.理論・・・理論的な裏付けができるの?
(スライド9ページ目)

ちょっと順序は入れ替わりますが、(2)良い結果のデータがちゃんと実験から出ており、(3)データが出た理由を合理的に説明できる理論があり、かつ(1)机上の理論でなく実践的、というのが理想ということですかね。

上の順番になっているのは、コーチから見た優先度がこうだからなんじゃないかと予想。

(スライド15ページ目:現実と机上理論の違い:血中乳酸濃度?)

2と3の違いですが、2○、3✕のケースは、実験したらいい結果が出てきたけど、なんでうまくいったかわからない、でしょうね。たまたま相関する変数は見つけたけど、因果関係があるかわからない、あってもどういう現象が起きているかわからない、的な。こういうデータ・ドリブンなアプローチはまあ許容できるケースもあるのかもしれませんが、正しく理解したい人は理論的な背景も知りたい所かと。

2と3が○でも1が✕なケースは、しょっちゅう見られるような気がします。「この商品は○○博士の研究成果・論文に基づいて開発されました」・・・みたいな謳い方がされていても、評価における統計的有意性(statistical significance)が必ずしも実践的な意義(practical significance)につながるわけではないですから、要注意です。

マグネス氏は自身のブログでも、上の3つの基準でコンプレッションウェアが本当に効果があるのか議論しています。(コンプレッションウェアについては、これまた賛否両論なのでまたいつか書きたいと思います!)




後編につづきます。


追記:マグネス氏の濃いブログがついに書籍化。詳しくはこちらの記事で触れました。
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2013/11/13

科学的トレーニングについて知っておきたいこと<前編>

ランニングにおける10の俗説」の記事に関連してそれぞれの俗説を掘り下げようと思いましたが、その前にコメントいただいた内容に関連して、科学的トレーニングの注意点を調べながらまとめてみようかと思います。

そもそもスポーツ科学とは

スポーツ科学とは、科学的な理論や技術をスポーツにおけるパフォーマンス向上に応用するための分野。
(引用元:Wikipedia - Sports Science

科学的トレーニングというと、全くなじみのない人にとっては、なんだかあやしげなマッドサイエンティストが特殊な器具やサプリを薦めているようなイメージがあるかもしれません(笑)。少なくとも某選手のインタビュー動画ではそう感じている印象を受けました。

私のイメージではこんなかんじです。
例えば「○△□をするとタイムが縮んだ」ということを見つけたとします。

○△□はインターバルのようなトレーニング方法かもしれませんし、前傾姿勢のようなフォームのことかもしれませんし、カーボローディングのような栄養関係の話かもしれませんし、シューズやウェアかもしれませんし、「左足からシューズを履いた時はいい結果が出る」(ジョー・フリールコーチのエピソードより)というおまじない/ゲン担ぎかもしれません(笑)

○△□がたまたまなのか、本当に効果があるのかを理論やデータから科学的手法で検証してから導入すること。それが科学的トレーニングなのではないか、と素人ながら解釈しています。

少しでも速くなると聞けば、おまじないの類だろうが真っ先に飛びついてしまうランナーは多いと思います。ランニングだけではなく、他の分野でも同様のようです。
“ブロウサイエンスとは、ボディビル界でのリーズニングの有力ブランドのことで、重い物を持ちあげてデッカクなった奴の逸話的な話しの方が、科学よりも信頼性があると考えられている。
一例を挙げると、
兄ちゃん!スクワットラックカールの最終セットが終わってから7秒以内に、カーボslam 40-60グラム(トウモロコシ成分で無糖)とBCAA20グラムを摂取しないと、筋肉がカタボリック(異化・分解)しちゃうよ!“といった具合です。
ダイエット、フィットネス、ウェイトトレーニングの分野では、ブロウサイエンスが蔓延しています。
(引用元:Nice Body Make・・・よもやま話: 第146回 サイエンス vs 都市伝説

難しいのは、おまじない・ゲン担ぎですら、プラセボ効果で実際に若干効くケースもあるところ。

そして、ちゃんと査読を経て発表されたような研究結果であっても、矛盾する結果が頻繁にあったり、個人差があったりで、何をどう信じていいのか・・・。

というわけで、科学にはどう向き合えばよいのでしょうか。

アンチサイエンス vs 科学盲信、どちらが正しい?


新しいトレーニング手法を積極的に試しているナイキのチーム(関連記事:モハメド・ファラー所属のオレゴンプロジェクトとは?)に2年間コーチとして在籍し、現在はヒューストン大学のクロスカントリーのヘッド・コーチを務めるスティーブ・マグネスさんというコーチがいます。

運動科学の修士号を持ち、ツイッターで「運動科学ギーク」を自称するこのコーチですが、ランニングを科学するブログ、その名もサイエンス・オブ・ランニングでも有名です。

そのマグネス氏が、「Integrating and Applying Science to Coaching」(コーチングへの科学の応用・導入について)という興味深い講演スライドを惜しげも無くスライドシェアにて公開しています。

コーチ向けの資料ですが、セルフ・コーチングの市民ランナーにもすごく役立つと思いますので、少しご紹介します。研究の利点とともに限界点も理解し、科学的トレーニングを正しく取り入れましょう、というような内容です。

(スライド、2ページ目)

まず冒頭で、科学的手法に対する態度として、コーチは「全く信じない」か「妄信的に信じる」人の2タイプに分かれがちだが、それは両方とも間違っているとバッサリ切っています。

前者は、経験則・直感・ときに精神論で指導するタイプのコーチでしょうか。本当に効果があることを指導してもらえるならいいですが、「練習では水を飲まない」「足腰を鍛えるにはうさぎ跳び」のように、現在では合理的とされないような指導が入る可能性はありますね。

一方後者は、データや理論などを表面的・盲目的に信じるタイプのコーチ。こちらは何が問題なのかというのがこの講演の重要テーマのようです。


研究では個人差は軽視されがち


平均 vs 個人

マグネス氏のスライドには「研究で扱うのは平均であり、そこに個人差は現れない」というような説明があります。

研究で「○△□で△%速くなる」などと結果が出ても、それは平均でみた時の話であり、人によっては変わらないかもしれないし、パフォーマンスは下がる可能性もありえるのです。

例えば、ある速くなる練習方法○△□があったとき、複数の人に試してみてビフォー・アフターを比べたら、下のようなグラフになったとします(横軸:時間、縦軸:評価指標)。

(スライド、7ページ目)

研究者は平均で見るので、この実験結果は「○△□では変化なし」となりがち。

一方コーチの場合は、「全体で見たら変わらないかもしれないが、個人差はこんなにある」ということを理解しないといけない。と、マグネス氏が言いたいのはそういうことでしょうね。

※一応研究者も、まともな人だったら表面上の数字だけ見ないでデータも見るはずです。

個人差を考えてコーチングすることの大切さ

ところでジャック・ダニエルズ氏も、選手を個人個人として扱うことが大切だと説いています。(関連記事:ダニエルズの「コーチング」フォーミュラ

例えば、ダニエルズさんの講演動画や本で紹介されている、ジェリー・リンドグレン元米五輪選手。5000mの全米高校記録をゲーレン・ラップが破るまで40年間保持した名選手のようです。彼の一番走った年の平均週間走行距離は386km!月間だと1700km弱ですかね。最大で週に580km練習したというからすごいです。しかもこれだけ走って、たった一度しか故障しなかったそうです(その一度の原因は、車にはねられたから)。

選手クラスでもそういうタフな脚を持つ人もいれば、故障がちな選手もいるわけで、ひとまとめにコーチ同じメニューを課したりするのは間違いだと、ダニエルズ氏は強調しています。

思うに、その対極の考え方は、みな同じペースで同じメニューを集団走する「量産型」のコーチングなのかもしれません。
 今年、箱根駅伝に出場した大学の駅伝部指導者も、個人の能力が伸びない事情を明かす。

「もし仮に、箱根駅伝がなくなれば、有望な選手にオーダーメードの指導が可能になり、選手の能力をより引き出すことはできるでしょう。でも、現状では箱根を目指すしかない。団体戦ですから、露骨な特別扱いはできないのです」

 これでは、将来性豊かな若き才能に、五輪で戦える指導をすることは難しい。箱根駅伝は1920年、日本マラソンの父・金栗四三により「世界に通用するランナーを育成したい」という理念のもと創設されたもの。学校経営というビジネスに利用される側面は避けられない現実だが、その理念を無視している大学も少なくない。

スターはいらない」という考えを持つ指導者が、選手の将来より大学の広告効果のほうに重きを置けば、学生選手権などのトラック競技を軽視し、一年中、箱根で走るための偏ったトレーニングばかりを行う。箱根の1区間は4区を除いてすべて20km以上。その距離を走り続けることで選手は皆、同じような〝箱根仕様〟になっていく。例えるなら、圧倒的な馬力を誇るポルシェを1台作るより、燃費がよく壊れにくいプリウスを10台作ることを優先し、事実、それで箱根を制した大学も存在する。
(引用元:現代スポーツ - 新春特別研究「マラソンでメダル」が見たいのに……なぜ日本人には「箱根駅伝までの選手」が多いのか、強調は私による)


科学的トレーニングの注意点、まだまだつづきます。

中編につづく


追記:マグネス氏の濃いブログがついに書籍化。詳しくはこちらの記事で触れました。
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2013/11/12

賛否両論?ランニングにおける10の俗説

コンペティター誌の「The 10 Biggest Myths About Running」という記事より、ランニングにおける10のMyth(俗説・神話)です。説明は抜粋・意訳ですので、全文を読みたい方は原文をぜひ。

以下、記事が俗説とするものです。

1. ランニングにはふさわしい体型というのがある

サンディエゴ・トライクラブのコーチ、スティーブン・タリー氏は説明します。「どんな体型の人でもランナーになれます」「レースではいろんな体型といろんなストライドの人を見ることができます」
【私のコメント】
体型やフォームの話は、バイオメカニクス(ランニングフォームを科学的に扱う学問領域)の専門家でも意見が割れるところのようです。「究極の理想型がある」ほうを支持する人の考えを、私が以前書いた記事から引用します。
オレゴンプロジェクトでは、スプリント練習のため2名の短距離専門コーチジョン・スミス氏とラルフ・マン氏(英語ウィキペディア)を雇っていて、後者はバイオメカニクスの博士号を持つ専門家でもあるそうです。
また、サラザール氏はインタビューでも、バイオメカニクスに基づいた理想的なフォームへの修正は必要不可欠としています(youtube)。人によって理想的なフォームがあるというのは昔の考え方とも言ってますが、指導を受けたリッツ選手はフォアフット走法への矯正で故障しているので、この考え方は個人的に賛否両論あるところだと思います。
(引用元:モハメド・ファラー所属のオレゴンプロジェクトとは?

2. ランニングの前にストレッチをすべし

トライアスロンのコーチ、ホリー・ケニー氏の説明によれば、筋肉が温まる前のストレッチは、故障のリスクが高まりますとのこと。

追記:この記事で掘り下げました「なぜ運動前の静的ストレッチは逆効果なのか?

3. ランナーは筋トレをしなくて良い

「フルを走るには、そして回復をするには、強い筋肉が必要です」「週5日走ればマラソン完走はできるでしょう。でも自己ベストやボストン参加資格を目指すなら、筋トレは必要です」とアイアンマン世界選手権のアシスタントヘッドドクター、ジョン・マルチネス氏は言います。

【私のコメント】
またまたオレゴンプロジェクトの話ですが、「ストライドの効率とパワーの改善のため」そして何より「怪我防止のため」に高負荷・低反復の補強・筋トレを重視しており、専属のスタッフがメニューを開発しています。

一方、負荷を低く回数をこなす補強をする選手もいます。たとえば高橋尚子さんはナンバー誌での瀬古さんとの対談で、「補強練習はどうしてました? 私は毎日2000回腹筋してました。」と語っています。

どちらが正しいのか正解はあるのでしょうか。それとも「人によって違う」が正解なのでしょうか。Qちゃんは女子フルマラソンの元世界記録保持者なわけで、この補強タイプの補強が間違っていたとも思えません。仮に高負荷・低回数だったらもっと記録が伸びていたのかどうか・・・?どうなんでしょうね。

4. ベアフットランニングは怪我を減らす

前出マルチネス氏いわく、「私のところに、ミニマリストシューズで5マイル走ってみたんだけどなんで疲労骨折が起きたのか、と来る人がいます。」「トライアスリートやランナーは、速くなるものを聞きつけたら、すぐさま値段を聞いて、クレジットカードを取り出します。」その前に、十分自分自身でリサーチをしてからミニマリストやベアフットに移行してください。

【私のコメント】
追記:裸足感覚の5本指ランニングシューズ、ビブラムファイブフィンガーズ(VFF)が科学的根拠のない効果を謳ってシューズを販売したとして集団訴訟を起こされました。その結果、該当期間にアメリカでVFFを購入した人に1足最大94ドルの返金となりました。詳しくはこちらに書きました:「米ビブラムが1足最大$94の返金手続き開始

5. 毎日走らないと速くならない

前出タリー氏いわく、「ランダムなスケジュールで走るのはダメだけど、週2、3日走ってもそれより多く走る人とほとんど変わらないぐらいのトレーニング効果がある」「その分長い距離を走ると良い」と語っています。
【私のコメント】
市民ランナーの場合はそうかもしれませんね。(関連記事:週3ポイント練メソッド最強説(?)

エリートレベルの人は恐らく話が別ですね。アスリートの練習メニューを見ると週6、7日で午前午後の2部練で走っている人が多いような。

例えば先日NYCマラソンに出た選手だと、優勝のジョフリー・ムタイが週6日(メニュー)、13位のライアン・ベイルは週7日オフ日なし(メニュー)で走っています。ベイルのほうはマラソン前13週間の全練習メニューをブログで公開しており、貴重なデータです。アスリートの方には参考になるかもしれません。

6. ランニングはヒザ/健康に悪い

ランニングコーチ、カール・リーバー氏は「ランナーでない人の中には、ランニングは健康に良くないとか健康を害すると思っている人がいます」「ランニングは健康に最も良いアクティビティーの一つで、関節のダメージとランニングを関連づける研究はありません」

【私のコメント】
まあ走りすぎでヒザを壊す人もよくいますし、マラソン後は免疫力も落ちて風邪をひいてしまったりということはあると思います。(関連記事:マラソン後のダメージと回復時間

でも、適度だと健康にいいという意見のほうが目にします。

健康にいい説
健康に悪い説

7. 給水エイドには全て立ち寄ること

スポーツ医のルイス・マハラム先生によれば、「ノドが乾いてると感じた時には、すでに脱水状態で手遅れであるというのは俗説」「ノドが乾いたら飲めばいい、そうすれば過剰なハイドレーションを防げるし、お腹のトラブルが起きる可能性を減らせる」
追記:この記事で掘り下げました「新常識?水分補給は「渇く前」でなく「渇いたら飲む」という作戦

8. カリウムは痙攣防止になる

前出マルチネス氏は、最近の研究ではカリウム摂取と痙攣の相関関係は見られていないとしています。 「ティム・ノックス氏は痙攣は筋肉の疲労からくるものとしています」「痙攣とより関係あるのは、練習不足または脱水なのです」
追記:この記事で掘り下げました「レースで痙攣する仕組みと対処方法

9. ランニングは過酷であるべきである

ランニングは辛い時もあるけど、そうである必要はない。「ランニング初心者は毎日のように全力で練習しようとしてしまいます。でもゆっくり走ればもっと長い距離が走れるようになりますし、楽しいですよ!」
【私のコメント】
以前も書きましたが、著名な運動生理学者、ジャック・ダニエルズ博士もこう言っています。
Your training should bring you a certain degree of enjoyment and satisfaction.
訳:トレーニングはある程度楽しく、満足感のあるものでなければならない
(Jack T. Daniels. Daniels' Running Formula. 2nd ed. P.97より)
関連記事:ダニエルズの「コーチング」フォーミュラ

これに相対するのは精神論的な練習方法ですかね。日本の体育会系だと多いと思うのですが、どちらが正しいかというのはよくわかりません。ちなみに私は圧倒的に前者タイプですが…w

ただ、後者に関連した研究もあって、体が壊れる前に発動する脳(≒精神)のリミッターにより、パフォーマンスが左右されるという仮説、それがセントラル・ガバナー理論です。ただし、過酷なほうがリミッターが上がりそうな気はするものの、私は詳しく知りません。セントラル・ガバナー理論についてはこの記事でも触れました「科学的トレーニングについて知っておきたいこと<中編>」。

10. クッションのあるシューズは怪我を防ぐ

クッションのありすぎるシューズは逆に故障を招きます、とタリー氏は語ります。もしプロネーションがある人がハーフインチ(1.3cm)のジェルの入ったシューズを履いた場合、最初の2週間は心地良いでしょうが、プロネーションの度合いは悪化し、故障リスクが高まるでしょう。
【私のコメント】
う~ん、これはどうなんでしょう。裏付ける論文は探したんですが見つかりませんでした。

関連した話で、柔らかい路面vsアスファルト、足にいいのはどっち?というテーマもありますね。

以前「走るのに最適なサーフェスって存在するの?」(Is There One Best Running Surface?)という気になる記事がコンペティター誌にありました。記事からまとめると、
  • テキサス大のタナカ・ヒロフミ博士が手術を受けるぐらいのヒザ(PCL)を故障をしてしまった。
  • 術後回復中は固い舗装路は避け、トレイルのようなやわらかいところで走るようよう主治医に言われた。
  • なので柔らかい不整地で走っていたところ、今度は足首を捻ってしまった。
  • 本当に柔らかい地面のほうが足にいいのだろうか。
  • その話がニューヨーク・タイムズの記事になり、やわらかい地面で走ることの価値について、論争になった(この記事かな?)。
ということです。自身も運動生理学者であるタナカ博士は、
Is there one best surface?
訳:(ランナーにとってケガのリスクが少ない)究極のサーフェスは存在しますか?
との質問に、
That’s the million dollar question
訳:それは超難問ですね
と答えています。地面の種類とケガの関係は、まだ科学的に解明されていないんですね。

こういう研究は被験者集めも大変(だから運動生理学の実験の被験者は学生や軍人が多い)ですし、研究費もつきにくそうで、大変ですね。

追記:違うタイプのシューズを履き回したほうが怪我のリスクが減るかもしれない、という論文(英語)が発表されました。詳しくはこちらの拙記事もご参考に:裸足系vsクッションたっぷりシューズ、フォームに違いは出るか?




以上です。

※繰り返しますが、数字が振ってある見出しの部分は記事にて俗説とされるものです。


元記事の説明不足のせいなどで一部う~ん、と思うようなのもあったんですが、みなさんはいかがでしょうか。賛否両論なのもありますね。

もし気になる項目があれば、掘り下げて調べますので教えてください♪


<追記>
掘り下げる前に、こちらの記事書きましたので、あわせてどうぞ。

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2013/11/10

水没ThinkPadの修理

すみませんが、今日もランニングの話は出てきません。
代わりと言ってはなんですが、先月撮った夕焼け写真でもご覧くださいw


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さて意外にも普段より反響(=コメント)をいただいた「ノートPCに水をかけると壊れる。ではThinkPadの場合は・・・?」の続きです。

生まれて初めて飲み物をキーボードにこぼしてしまいました。
ちなみにこぼした程度でも一応「水没」と呼ぶそうです。

水没対処の鉄則は、ショートしないようにすぐ電源を落とし、水平の状態を保ちつつ表面の水分を取り除き、バッテリーを外し、最低2~3日は電源を入れないようにするとのこと。自己責任で分解できるという方は、その後ThinkPad保守マニュアル(レノボサイトでPDFが公開されてます)を参考に中をあけ、腐食を防ぐため基板にかかった水分を取り除くといいと思います。


ということで、中の水分を取るために、ThinkPadをハードウェア保守マニュアルに従って分解してみました。

キーボードを外すと、裏にビニールシートのようなものが貼ってあり、いくつか穴が空いています。基板のほうをみると、その穴の真下には保護シートが貼ってあり、水分が穴から落ちても基板に直接かからない仕組みになっています。外への排水口はないタイプの機種ですが、よく出来てます。ThinkPad開発陣が発明した「バスタブ構造」というそうですが、こんな仕組み、今まで分解した時には気づきませんでした。

結局内部には水分は見つからず、水分の形跡もありませんでした。でも、電源は入りません…。

余談ですが、ドライヤーの温風で乾かすのはダメという意見を目にしました。ドライヤーの熱100~140度ぐらいでは基板のはんだは溶けないはずですが、静電気とか何か別の理由があるのかも?冷蔵庫での乾燥は結露がいやなので、やりませんでした。

さて、分解して乾燥させておき、1週間ほど毎日試しましたがいつまで経っても直らないので、Lenovoサイト経由でIBMのElectronic Service Callから修理依頼。Lenovo製なのに、まだIBMが修理してるんですね。

保証は3年分あったのですが、予想通り「水没」事故は対象外でした。Accidental Damage Protectionというのに入っておけば、修理代が何割かはカバーされたようです…。

修理の流れは、クッションの入った空段ボールが送られてくるので、そこにマシンを入れて送り返す方式(EasyServ)。修理進捗はウェブから確認できます。前にファンを交換してもらったときは即日・無料でやってくれましたが、今回は1週間ぐらいかかっていた気がします。

ラップトップが返ってきて、修理項目を見ると、NPRA(No part repair action)とだけありました。パーツはどこも壊れてなかったけど、1週間ぐらいかけてオーバーホールとかしたら直ったよ、ということなんでしょうかね。ちなみに故障してなかったときはNTF(No trouble found)となるようなので、故障していたことはしていたようなのですが、詳細はわからずじまい。

さて、今回のお値段のほうはというと・・・。

ウェブで同様のケースを検索すると、マザーボード交換で5万~10万円かかるとか出てきて、
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
購入価格より修理費のほうが高くついたと怒ってる人もいました。

でも今回はこういうケースでは最低料金の、175ドルで済みました♪
ε=\_○ノ イヤッホーゥ!

もっと覚悟していたので、ラッキーでした。
修理から返ってきて2週間ですが、今も快適に動いています。

これからは外付けキーボード+外部モニタで作業しようかな・・・。

追記:外付けキーボード+外部モニタでラップトップを使い始めましたが、かなり快適です。

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飲み物をこぼすと高くつくので、みなさんもお気をつけください!



(おわり)
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2013/11/08

ノートPCに水をかけると壊れる。ではThinkPadの場合は・・・?

※検索から来られた方へ

この記事に辿りついたということは、もしかしてPCを水没させましたか?

もしそうなら、のんびりこの記事を読んでる場合じゃないです。ショートしたら高くつきます!今すぐに電源を落とし、水平の状態を保ちつつ表面の水分を取り除き、バッテリーを外し、最低2~3日は電源を入れないようにしてください。自己責任で分解できるという方は、その後保守マニュアルを参考に中をあけ、腐食を防ぐため基板にかかった水分を取り除くといいと思います。





ほんのちょっとだったんです。

姿勢を崩した瞬間にほんの大さじ1~2杯分ぐらい、麦茶をThinkPadのキーボード上にこぼしてしまいました(´;ω;`)ブワッ



松花堂弁当をイメージして黒くて四角いごっついデザインになったといわれているThinkPad。設計は超頑丈です。

thinkpadの山
写真:lenovo blog


たとえば落下に強いです。データ記録装置は最近ではSSDも増えていますが、昔ながらのハードディスクの中身はレコードみたいになっているのですが・・・(下の写真参照)

HDDのディスク表面と磁気ヘッド
写真:ウィキペディアより

磁気ヘッドが円盤に記録されたデータを読みます。このヘッドは円盤の高層回転による浮力でほんの少し浮いてます。調べたら、10ナノメートル(髪の毛の太さの1万分の1ぐらい)だけ浮いているそうなのですが、落下をきっかけにヘッドが円盤にぶつかると大惨事で、故障してしまいます。

ThinkPadがすごいのは、落下状態をセンサーで感知して、一瞬の間にヘッドを円盤上から逃げさせる仕組みが入っていること。今は他社製品にも増えているのかもしれませんが、どこよりも先に開発・導入したのはThinkPadです。

実際に製品品質テストでは、高い所から落としてみたり圧力をかけたりと熾烈な試験をやっているようです。

他にも、蓋を開閉し続けるテストもあるようですが・・・

うちのT500は、なんと3年ぐらい使ったところでヒンジが折れました(笑)
金属疲労ですかね・・・。

ヒンジが折れたthinkpad
▲普段使ってないマシンなのでホコリをかぶった写真ですみません。
本当なら垂直のはずの金属が、斜めになって断面が見えてます。


テストの中には、コーラをキーボードにかけるテストというのもあります。


※外への排水構造のない機種もあるので、絶対に真似しないでください

もうその名の通りなのですが、上の動画を見るとわかるように、ジョボジョボかけても何事も無かったかのように動いていますね。カモメの動画とジョボジョボ音の組み合わせがなんとも言えません(笑)


さて現在愛用中のT430sも、さすがThinkPad、麦茶少しぐらいではびくともしません。

(`・∀・´)エッヘン!!








と思ったら、30分後ぐらいに突然

ヒューーーーン

という音とともに電源が落ちました。

(`・∀・´)?!?!?!!?!



そして、そのまま立ち上がらなくなりました。

。゚(゚´Д`゚)゚。




(つづく)


追記:つづきを書きました。
→ 水没ThinkPadの修理 へ
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2013/11/06

レースレポ:ピッツバーグ10マイラー

記念すべき第1回目EQT10マイルレースに参加してきました!


気温は4度と今まで走ったレースの中では一番涼しく、ランニングウェアに悩みましたが、結局上の写真のような格好になりました。黄色シャツはピッツバーグマラソンの時の参加賞です。

1kmごとのラップタイム by ガーミンは、以下の通り。
4:17 4:09 4:16 4:11 4:15 4:22 4:08 4:11
4:10 4:03 4:09 4:07 4:05 4:04 4:08 3:41
+3:12/km@ラスト240m

実際の距離は1マイル = 1609m なので、10マイル=16.09kmです。目標は4:10/kmペース。

ネガティブ・スプリット成功です♪

レースレポ


レース前:レース前に日本人の知り合い4人と会いました。ピッツバーグにはピッツバーグ大学に研究留学中のお医者さんが結構いらっしゃるのですが、整形外科の先生方でした。これでいつボキッといっても安心?!職業柄(?)整形外科ランナー率が高いような気がします。スタートブロック(corral)は今まで出たレースで初めてAでした。

3km地点:ペースを抑えていたにも関わらず前日の食べ過ぎのせいか軽く腹痛が始まり、7分/マイルのペースランナーについていくことにしました。ガーミンをちらちら見ると4:10/kmぐらいだった気がするのですが、7分/マイルは4:21/kmだったみたいです…。全体のラップタイムもちゃんと見ないとだめですね…。

8km地点:腹痛が収まったので、後半8kmは少しペースアップすることに。

11km地点:背中から名前を呼ばれる・・・!日本人の知り合いの方が応援してくださったようなのですが、減速しなかったのでどなたかわかりませんでした、すみませんm(__)m
言い訳をすると、私は普段メガネなのですが、かけていたサングラスは度が入っていないので、裸眼視力は0.1~0.4の間ぐらいなんです・・・。ただ、すごく励みになりました!!
追記:Fさんご夫婦、応援ありがとうございました!

13km地点:なんだか今回はペース配分ミスか、不完全燃焼だったようでレース終盤のひどい疲労感はなく、テンションマックスでした。今までのレースにないくらい走っていて楽しくてしょうがなかったです。そういうわけで、給水エイドのボランティアの人に感謝しまくりました。

16km地点:最後の直線500mは今までのレースでやりたくてもできなかったラストスパート。観衆の声援のせいか、本当に楽しかったです。ガーミンペースは最後は3:12/kmになっていましたが、ゴールは高い建物が多いダウンタウンだったので誤差でしょう。こんな速くは走れていないと思います(笑)


ゴール後:写真右の男性に「キミのおかげで自己ベスト更新できたよ」と、とても感謝されました。誰?!と思ったんですが、レース写真を見ると後半ずっと後ろからついてきていて、ゴール直前で抜かされていたようです(笑)

帰宅途中、信号が点滅していたので急いで渡ろうと軽く走ると、右足を攣りました(笑)気持ち的には余力が残っていたはずなんですが、限界だったんでしょうか…。それにしてもゴール後でよかったです。


反省点
今回は結構気が緩んでいて、前日に消化を考えずたらふく食べてしまったり、ガーミンのオートポーズを切り忘れて高架下で2回ポーズになったりしました…。あと前傾姿勢は意識していたんですが、気がつくと元に戻っていたり、ドタドタした走りになっていました。フォーム改善はまだまだです!反省反省。


トップフィニッシャー
今回の男子のトップは46:49、女子のトップは53:56でした。男子上位3人、女子上位2人はケニア人が独占。こんな地方都市のレースにまで東アフリカ勢が・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル


距離別ベスト記録


距離別自己ベストを並べると、こんな感じです。

距離
タイム
VDOT
詳細
42.2km
3:14:45
49.6
30km
(2:13:31)
49.9
21.1km
(1:31:46)
49.8(8月土トレイル練)
16.1km
1:07:30
50.9
今回の10マイルレース
10km
40:43
50.9
5km
19:03
52.710月ラン・シェディサイド
1km
(3:28)
49.9

括弧内は練習での参考記録。タイムはネットタイム(参考記事:マラソン大会におけるグロスタイムの弊害とネットタイム重視への流れ)。VDOTはダニエルズ式ランニング用計算ツールより。



今回は1:07:30でVDOT的には2位タイでした。

長い距離でも5K並のパフォーマンスが出せるといいのですが・・・。



応援してくださった方々、改めてありがとうございましたm(__)m





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2013/11/05

NYCマラソンで速いランナー100人が履いた人気のランニングシューズ

日曜のNYCマラソン(出場選手結果)で、エリートランナーたちが履いていたシューズについての記事です。

トップ100人のシューズ


SnekerReportがNYCMトップ100人のシューズを全て写真付きで紹介しています(※女子のほうが30分先にスタートしてるのでジェプトゥーから始まってます)。

せっかく貴重なデータが公開されたので、メーカー別の分布を調べてみたところ、次のようになっていました。


アディダス26人
ナイキ24人
ブルックス12人
アシックス10人
ニューバランス9人
サッカニー8人
ミズノ5人
プーマ2人
ディアドラ2人
スケッチャーズ1人
ニュートン1人


スポンサー付きエリート選手と一般選手がごっちゃになっているかもしれず、必ずしも人気度を表すわけではありません。

今井はアディダスのアディゼロ・ジャパン2となっていましたが、写真から見るにアディゼロ匠戦でしょうかね。川内重友はアシックス・ソーティ・ジャパンをベースにしたオーダーメイドでしょうか。日本の実業団レベルの選手はオーダーメイドが多いと聞きました。シューズ調整の様子は、藤原新選手のブログ参照。



▲今井

▲川内・重友

▲川内練習用

(※2014/2 追記:匠ですが、後継モデルの匠2が出たみたいです)


多かったシューズは、アディダスのアディゼロ・ジャパン・ブーストとナイキのズーム・ストリーク(下写真の左・右参照)でそれぞれ10人以上。

男子は1位を含めた上位層にブーストがちらほら(後述)。女子のトップ3人はズーム・ストリークでした。


その他、アディダス・アディゼロ・ジャパン2ニューバランス・1400ブルックス・T7レーサーブルックス・レーサーST 5サッカニー・キンバラも100人中3~4人ずついたようです。


速いランナーが履いたランニングシューズ
▲ニューバランス1400(同名のスニーカーのほうではないです)



▲ブルックス・T7レーサー




▲ブルックス・レーサーST5




▲サッカニー・キンバラ4
(キンバラ5は2014年5月発売)



2人以上に履かれていたのは以下のシューズ。
  • Adidas Boost Energy
  • Asics GEL-DS Sky Speed 3
  • Brooks PureProject PureConnect 2
  • Diadora N7 Racer
  • Nike Lunaracer +3
  • Puma Faas 400
  • Saucony Fastwitch 6
  • Saucony Grid Type A5


シューズメーカーのうち、今回のNYCMのスポンサーになっているのはアシックスでした。

日本メーカーのアシックスとミズノは良いシューズを作っているのに、マーケティングがイマイチのせいか、他社に押されている気がします…。その点、もっと頑張って欲しいものです。

追記:全データはこちら。

見れない方はこちらのリンクから。

ジョフリー・ムタイのシューズ

(※【速報】NYCマラソン2013の結果に追記した記事をこちらに移動しました)

NYCM1位は、またもやアディゼロ・ジャパン(海外名:アディオス)シリーズで、ブーストだそうです。

これで2013年秋のWMMの3大レース、ベルリン(世界新)・シカゴ(世界歴代3位)・NYCマラソン(今回)の男子優勝者のシューズは、全てアディゼロ・ジャパン・シリーズとなりました。余談ですが、これらの優勝者は3人ともケニア人でVolare Sports所属の練習パートナー同士です。とんでもない強豪チームですね。

ちなみに、アディダス/選手のツイートによると、3位のエイプリル4位のアリレ8位のキルイもアディゼロ・ジャパン・ブーストだったそうです。

ブーストシリーズはちょっと高いのが難点ですね。

▲メンズ

▲レディース

参考記事:過去3回の男子フルマラソン世界新記録はアディダスのアディゼロ・ジャパンで作られた

別大会のシューズシェアは・・・?


アイアンマンのシューズシェア情報については、以前SALTYさんからコメント欄にて教えていただきました。トライアスロン大会はトランジットにシューズが置いてあるので、数えやすいみたいです。

以下、ハワイのアイアンマン世界選手権(スイム3.8K、バイク180K、ラン42.195K)出場選手の過去2年のシューズシェアです。


メーカー2013割合2012割合
アシックス17.5%17.8%
サッカニー16.5%14.6%
ニュートン9.7%11.9%
ブルックス9.5%10.8%
ミズノ6.9%6.4%
アディダス6.4%5.4%
ナイキ6.4%7.0%
ケースイス5.4%10.0%
ズート4.7%5.5%
その他3.6%2.5%
ニューバランス3.0%2.8%
オン2.9%1.7%
ホカオネオネ1.9%1.7%
スケッチャーズ1.1%0%

出展:Lava Magazine


おお、アシックス大人気。ニュートンも先ほどのリストとは違って人気ですね。

近所のランニングショップでは、最近パールイズミがゴリ押しされている気がします。あとアンダーアーマーも少しだけ見ますね。

私はアメリカでランニングを始めたので日本の大会は出たことないんですが、日本はやはりアシックス・ミズノのシェアが多いんでしょうか?


シューズのマーケットシェア(アメリカ)

以前書いた「はじめてのレースシューズ!【日米流行比較編】」より引用。
Fobes紙によれば、米国での陸上競技市場のシェアは上から、Nike(40%)、ASICS(24.3%)、そしてBrooks(11.8%)だそうで、Brooksの躍進が目覚ましいです。また先ほどのコンペティター誌の記事によれば、ランニング専門小売店でのブランド別売上は、長年ASICSの不動の一位の座を、2011年にBrooksが奪ったとか。


シューズ関連記事(ブログ内)



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