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2014/05/31

なぜ運動前の静的ストレッチは逆効果なのか?

大分前に紹介した「賛否両論?ランニングにおける10の俗説」のうち、今回は次の俗説について掘り下げてみたいと思います。


2. ランニングの前にストレッチをすべし
トライアスロンのコーチ、ホリー・ケニー氏の説明によれば、筋肉が温まる前のストレッチは、故障のリスクが高まりますとのこと。

筋肉を伸ばしたまま数十秒静止するいわゆるストレッチは、厳密には静的(スタティック)ストレッチと呼ばれており、運動前に行うことの有害説が近年広まってきています。

この静的ストレッチ有害説、まだ知らなくても無理はありません。プロの方たち(理学療法士、コーチなど)にもまだ完全には広まっていないという、比較的新しい発見なのですから…。


発端

ジェフ・ゴーデットさん(コーチ・著者・フルPR2:22のランナー)の記事によると、Dr. Herbert Popeという研究者のこの論文によって、運動前に静的ストレッチをしてもしなくてもケガの発生とは全く関係ないことがわかったそうです。※すでに故障持ちの方は例外

2000年に発表されたこの研究を発端に、一気に研究が進んだようです。その後、静的ストレッチあるなしで比較をして、実は静的ストレッチをするとかえって垂直跳びや陸上タイムなどのパフォーマンスが落ちる!という研究報告が、いろんな独立した研究から出てきてしまいました。

スポーツ医学団体の見解

NYタイムズやランナーズワールドなどいろいろなところでも取り上げられ、各方面に広まってきています。

ランナーズワールドの「Should I Stretch Before or After My Runs?」(ランの前か後にストレッチをするべきですか?)という記事から紹介すると・・・
専門家によれば、静的ストレッチ(筋肉を伸ばしたまま数十秒静止するストレッチ)は練習前後どちらもすべきではないとされています。練習前は特にで、もしどうしてもやりたいなら練習後にとのこと。このテーマは近年よく論争されていますが、静的ストレッチが怪我を予防したりパフォーマスを向上させるエビデンスはなく、むしろ逆に怪我につながるとのエビデンスあり。
とのこと。

多くの新しい研究結果から、欧州スポーツ医学会のストレッチに関する公式見解では、「最大筋力を測る実験では、静的ストレッチがパフォーマンス低下につながる可能性のある固い証拠が見つかっている」と、スポーツ医学会も従来の考えを見直すに至っています。

※このブログではよく取り上げていますが、スポーツ界ではエビデンス(=根拠・証拠、特に医学生物学系では理論より実験と統計的分析によるもの)もないのに信じられている俗説が意外と多いです。

静的ストレッチあるなしでどれだけパフォーマンスに差が出る?

トップアスリートを多く抱えるナイキオレゴンプロジェクト(記事)の元コーチでスポーツ科学の専門家であるマグネス氏のブログのStretching?? Is it useless?という記事に静的ストレッチをした場合としなかった場合の研究報告が載っていました。
  • 単純運動:ニーエクステンションからベンチプレスまでいろいろなエキササイズで、1RMの6~8%の減少が見られた(※1RM=1回だけならかろうじて反復させられるぐらいの限界の重量)。
  • 垂直跳び:コンスタントに4~5%距離が落ちる報告があります。
  • ジャンプ系テスト:地面接地時間が伸びることがわかっています(ランニングではこれはマイナス)。
  • 40mダッシュ:大学陸上部(LSU)を対象にした実験だと、0.1秒遅くなりました。

これらの研究では、静的ストレッチの静止時間を15秒と30秒で比べても同じような結果で、逆に言うとたった15秒だけ伸ばしただけでマイナス効果が見られたとのこと。やり過ぎた時に悪影響とかではなく、適度に思われる静的ストレッチでも影響が出てしまうんですね。

一方2012年のサーベイ論文によると、もっと長い(60秒以上)静的ストレッチだと悪影響、と少し違う結論を出しています。

なおこの論文は静的ストレッチが筋肉の最大パフォーマンスに及ぼす影響を調べた査読付き論文4559件を調査した力作(そんなにあるのか…!)。その中で統計や実験設定がまともなのだけを選び、傾向を報告しています。グラフを1枚抜き出してみると、多くの独立した研究で同じような傾向、つまり静的ストレッチをすると瞬発力が下がっていることがわかります。

静的ストレッチの効果はマイナス

パワー系は平均して5%もパフォーマンスが下がるんですね…。

静的ストレッチがダメな理由

マグネス氏の同ブログは、ランニングにおける悪影響の原因として、弾性エネルギー(バネ)が失われることを主因としています。
(ストレッチは成績向上につながる?)いいえ、逆に害があります。短距離から長距離まで、多くの研究がパフォーマンスを下げることを裏付けています。どうしてかって?それは神経筋回りで起きる現象が主因なのですが、静的ストレッチにより筋動員低下・筋系の剛性低下が見られ、その結果ランニング中における弾性エネルギーが低下するのです。(訳注:つまり「バネ」が失われるってことですかね。)
The Science of Running - Common Misconceptions in Running


また別記事ではマグネス氏はこう説明します。
バネは固いほうがより多くのエネルギーを蓄え、また放出することができます。昔ならった物理の授業を思い出してください。フックの法則F=-kxによればバネの力Fは変位xとバネ固有の固さkに従います。わかりやすく言えば、硬いバネのほうがより「自由」なエネルギーを持ち、効率がいいということ。長距離走者が走れば走るほど体が硬くなるのには理由があるのです、つまり人間の体は順応するということ。
The Science of Running - Stretching?? Is it useless?

ストレッチして柔らかくなったほうが速くなるというのは、ほとんどのランナーが信じていることだが、実は間違っている・・・との主張です。(学術的な詳細は、こちらの関連文献をご覧ください:論文1論文2論文3


静的ストレッチ有害説の信ぴょう性は高い

同ブログによると、静的ストレッチが有害という仮説は、実験がコントロールしやすいので裏付けの信ぴょう性が高いそうです。
実際の所、長距離走において、ほとんどすべてのスポーツサイエンスの研究結果は競技には役立たずだと思う。モデル上の説明変数を分離しようとするのはいいけれど、本当は変数というは独立したものではないので、全体へ及ぼす影響を無視しているからだ。

だが、ストレッチングの研究は少し違う。結果(パフォーマンス)に対して変数がコントロールしやすいという実験環境にあるからだ。なので、ストレッチをしたときとしていない時で結果がどう変わるかなどが簡単に実験できる。こういった種類の研究はアスリートにとっても役に立つものなのだ。
The Science of Running - Common Misconceptions in Running

「ほとんどすべてのスポーツサイエンスの研究結果は競技には役立たずだと思う」・・・言い切りましたね。現場も知り尽くし、運動生理学の修士まで取り、いろいろな論文を読みあさってブログ紹介しているマグネス氏が言うだけに、痛快です。

他のトピックでも多々あるように、矛盾する結果が報告されることはあるようです(例:十分ウォームアップしてからなら悪影響はなくなるとの論文と、十分ウォームアップしても悪影響があるとする論文)。

ただ、多くの独立した研究結果が「静的ストレッチ→最大筋力低下」合致しているようです。

では静的ストレッチが役に立つのはどういう時?

運動後

(決定的な証拠はないが可能性としては、)もし仮にストレッチによってIGF-1 (インスリン様成長因子)と MGF(メカノ成長因子)の濃度が上昇するなら、運動後の静的ストレッチには効果がある。これらのホルモンを放出させてあげられれば、回復は早くなる上、適応とパフォーマンス向上につながるだろう。
The Science of Running - Stretching?? Is it useless?


故障持ちの人や慢性的な筋肉の緊張がある人

静的ストレッチで可動域が広がっても、それはランニングに本来必要のない箇所の場合が多いです。ただし、ケガや慢性的な筋肉の緊張がある人の場合(例えばふくらはぎなど)、走るのに必要な可動域が普通の人とは変わってくる場合があります。アキレス腱の痛みにつながるぐらいの固いふくらはぎは、ランに必要な足首関節や足底屈の動きを制限してしまうことがあり、そういう人には練習前でも静的ストレッチで可動域を広げることが効果的になります。
The Science of Running - Common Misconceptions in Running

では具体的な症状名はというと、五輪マラソン選手団のコーチなどを務めたマリオ・フライオーリさんの記事によれば、足底筋膜炎やアキレス腱炎にはふくらはぎの静的ストレッチが効果的な模様。故障持ちの方は、主治医にご相談を。


それから、ランニング以外の競技で柔軟性が求められるものや、試合前であっても静的ストレッチによって広げられる可動域によるメリットのある運動では、したほうがいいのかもしれません。これまでの研究からは、一番悪影響が大きいのは瞬発系競技の試合前と推測できます。

練習前は動的ストレッチを

勘違いしてはいけないのは、動的(ダイナミック)ストレッチのほうはむしろ推奨されており、練習前に行うとパフォーマンスが向上することが知られています。

動的ストレッチとは、アメリカスポーツ医学会の出しているACSM's Guidelines for Exercise Testing and Prescriptionによると「ある姿勢から別の姿勢までゆっくり移動し、回数を重ねるごとに徐々に範囲・可動域を広げていくストレッチ法」。

※「ダイナミック」という言葉から連想される激しい動きという意味ではないので注意。

たとえばランニング・タイムズ誌の「練習とレース前はダイナミックストレッチのほうが良い」(英語記事)という記事で紹介されていたメニューは、以下のとおり。

ダイナミックストレッチの例


他にもやり方はYoutubeで探すと動画がいっぱい見つかります。アスリートがやっている動画もあります。


まとめ

「なんとなく」の習慣で運動前に静的ストレッチ(筋肉を伸ばしたまま数十秒静止するタイプのストレッチ)をしている人は多いと思います。

ここ10~15年で急速に研究が進み、運動前の静的ストレッチはパフォーマンスを下げる(特に瞬発系)というエビデンスが多数報告されています。

運動前は静的ストレッチではなく動的ストレッチを、そして静的ストレッチをするなら運動後がいいようです。

※ケガで可動域の問題があるなどの事情がある場合は別。運動種目によっても違うので、詳細は整形外科にご相談を。

おまけ:マグネス氏のThe Science of Running書籍化!

上で引用しまくったマグネス氏のランニングブログ「The Science of Running」ですが、トップアスリートを指導した経験と、最先端の論文からの理論の両方から導き出された知見が惜しげも無く披露されており、大変貴重なリソースです。(ところでマグネス氏がアシスタント・コーチとして働いていたナイキ・オレゴンプロジェクトのゲーレン・ラップ選手が、昨日、事前に予告していたとおり10000mの米国新記録26:44:36を打ち立てました→動画。すごすぎです。この記事でマグネスが語るところによれば、ラップが他の選手と違うのは驚異的な回復力だそうで遺伝、トレーニング両方によるものだろうと語っていました。)

そのマグネス氏のブログが、今年2月に書籍化されていました。The Science of Runningの名の通り、スポーツ科学バリバリの濃い内容で、22章、344ページからなる力作です。アマゾンUSのレビューは、発売3ヶ月ちょっとで40件、5段階中4.5と高評価!日本のアマゾンでもキンドル版と紙の本が買えますが、英語版のみです。


本書には、こんなことが書かれているそうです(裏表紙より)。
  • 疲労とは何か?脳を中心とした疲労についての理論を最先端の研究から紹介
  • なぜ最大酸素摂取量はラボとトラック両方で過大評価・誤解されているのか
  • 心拍「ゾーン」トレーニングは、なぜベストなトレーニングではないのか
  • 練習を個々の生理学的特性に合ったものにカスタマイズする方法
  • 練習プロセスを「刺激」と「適応」という観点からユニークに評価する方法
  • 800mからフルマラソンまでの完全な練習メニュー例
レビューによれば、単なる医学・生物学のゴタクが並べてあるのではなく、すぐランニングに役立つエビデンスベースの知識が書いてある印象。

面白そう・・・(゚A゚;)ゴクリ


マグネス氏の科学ベースのトレーニングに対する考え方はこの記事でも紹介したのですが、彼の作ったあるスライド(下図参照)に集約されていると思います。コーチはアンチサイエンスかサイエンス盲信派の両極端に分かれがちだが、それは両方とも間違っていて、強み・弱みを理解した上で、強くなるための科学知見を有効に利用しようということですね。


【著者プロフィール】
スティーブ・マグネス(Twitter: @stevemagness
現在ヒューストン大学クロスカントリーチーム、ヘッドコーチ。現在コーチする主な選手はJackie Areson (2013世界陸上出場、4:12-1500、15:12-5k)、Sara Hall、Tommy Schmitz。ナイキ・オレゴンプロジェクトでのアシスタント・コーチ経験、オリンピック選手への指導経験もあり。1マイルでのテキサス州高校記録(4:01.02)を保持する元中長距離選手。ヒューストン大学学士(運動生理学、2008年)。ジョージ・メーソン大学修士(運動生理学、2011年)。


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2014/02/04

持久系の運動をしている人は、抗酸化サプリ摂取に注意

昨日発表されたばかりの気になる論文を ScienceDaily 経由で見つけたので、軽く紹介します。
一言で言うと、ビタミンC、Eのサプリを飲むと、持久力がつくにくくなるという実験結果が出たそうです。


タイトル:Vitamin C and E supplementation hampers cellular adaptation to endurance training in humans: a double-blind randomized controlled trial(ビタミンCとEのサプリ摂取は、ヒトにおける持久トレーニングへの細胞順応を妨げる:無作為化二重盲検プラセボ対照試験)

背景として、最近の研究では抗酸化サプリがエキササイズ効果(例:持久トレーニングにおけるミトコンドリア発生など)を鈍らせるのではないか、ということが指摘されているそうです。まだヒトへの研究結果は少なく、矛盾した結果もあるとのこと。

そこでこの研究では、54人の若者を2つのグループに分け、片方には一日当たりビタミンC 1000mgとビタミンE 235mgのサプリを、もう片方には有効成分のない偽薬を与え、11週間トレーニングしてもらったそうです。

トレーニング内容は週3~4回で、HRmax90%以上の負荷のHIITと、HRmax70-90%程度の30分~60分のランニング。

11週間後に2つのグループを調べたところ、最大酸素摂取量(VO2max)と20mシャトルテスト(往復ダッシュ)の成績に変化は見られなかった。ところが、筋肉を細胞レベルで見てみると、前者のグループでは持久力向上に関連するCOX4(ミトコンドリア内膜局在タンパク質複合体)の増加が妨げられていたことがわかった。他のマーカーからも、抗酸化サプリが細胞のシグナル伝達に影響を及ぼしている可能性が示唆された。

結論として、持久トレーニングをする人は、抗酸化サプリの摂取には気をつけたほうがいいとのこと。


ビタミンC、Eは持久系スポーツに良くない
Figure 1




Figure 5

以上、こちらの論文からでした。

Paulsen G, Cumming K, Holden G, Hallen J, Ronnestad B, Sveen O, Skaug A, Paur I, Bastani N, Ostgaard H, Buer C, Midttun M, Freuchen F, Wiig H, Ulseth E, Garthe I, Blomhoff R, Benestad H and Raastad T. Vitamin C and E supplementation hampers cellular adaptation to endurance training in humans: a double-blind randomized control trial. Journal of Physiology, February 2014 DOI: 10.1113/jphysiol.2013.267419

こういう分野にしては珍しく、上のリンクからウェブで全文公開されてます。


上の論文でキーワードとなってくる、「ミトコンドリア」と持久力の関係については、次の文章がわかりやすいです。
ロード・レースの基礎である持久力に大きく影響するのがミトコンドリアや毛細血管だといわれている。というのも長時間運動する場合には主として糖や脂肪からエネルギーを生み出すことになるが、その役割を担うのがミトコンドリアだからだ。また毛細血管には、血液に含まれる酸素などを筋肉へと送り届ける役割などがある。ミトコンドリアや毛細血管を増やすためのトレーニング方法としては、LSDやLT付近での練習(L2~L4辺り)がよく知られているが、これにはちょっとした注意点がある。

それはミトコンドリアや毛細血管は使った筋繊維でしか増えないという指摘がある点だ。
(じてトレ - LTを上げるのに高強度練を組合せた方が効果的と考えられる理由


ちなみに「抗酸化サプリ」とは・・・
活性酸素の働きを抑えるベータ・カロテン、ビタミンA・C・E、セレニウム(ミネラルの一種)などは、「抗酸化微量栄養素」とよばれる。これらの栄養素を、食物を通して食べるだけではなく、サプリメント(抗酸化サプリメント)として多量に投与することで、心筋梗塞・脳梗塞・がんの予防などを通して、健康を改善する可能性が考えられてきた。
(引用元:apital - 抗酸化サプリをのみ続けると、かえって寿命を縮める可能性

上の記事は別の論文紹介ですが、なんとなく健康によさそう、とサプリを飲むのは危険そうです。詳しくはリンクをたどってみてください。



ところで、ちょっと風邪気味だった私が最近飲んでるサプリが、Emergen-C。
成分表を見たらビタミンCが1,000mg入ってます。
用法には1日2回までと書いてあるので、1日計2,000mg((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

箱には「1000mgのビタミンCや抗酸化物質は、あなたの免疫システムをサポートします(※)」と書いてあり、下の方にちっちゃく「※FDAによって評価が裏付けられたわけではありません。この製品はいかなる病気の予防などを意図しているわけではありません。」と書いてありました。薬事法みたいなので書かされてるんでしょうけど、まあちゃんと書いてるだけまともな製品ですね。他のサプリとか見たことないんで他がどうだかわかりませんが。



▲Emergen-C


まだいっぱい残ってるけど、これからは調子が悪い時だけ飲もうかな・・・。



活性酸素を抑えるため、抗酸化サプリを飲むべきか?


2014/2/7追記

「有酸素運動をすると有害な活性酸素が発生して老化したりするので、対策として抗酸化物質を摂るべき」というようなことがよく言われていますが、ランナーは抗酸化サプリを飲むべきなのでしょうか?

その話題に関連した記事をいくつか探しました。取り急ぎ、英語のまま引用します。後日、日本語での詳細をまた追記するかもしれません。


  • (2013/11) Competitor - Should Runners Take Antioxidants During Exercise?「ランナーは練習中に抗酸化物質を摂るべきか?」
    これは良記事。抗酸化サプリを摂るべきかどうかについてですが、「In recent years, exercise scientists have been trying to figure out whether antioxidant supplementation during exercise is an aid or a crutch. This question is not yet settled」と完璧な正解がまだ見つかっていないとした上で、最新の研究結果から、「Consequently, when free radicals are prevented from performing their full actions by antioxidants consumed during a workout, that workout may yield less benefit.」と抗酸化物質の負の側面を紹介。結局「We recommend that an adequate intake of vitamins and minerals through a varied and balanced diet remains the best approach to maintain the optimal antioxidant status in exercising individuals.」とのことで、食事から十分摂るのが推奨となっています。
  • (2009/11) The Science of Running - Antioxidants=Overated「抗酸化物質=過大評価されすぎ」
    オレゴンプロジェクト(米トップ実業団チーム)元コーチのマグネス氏のブログの記事。
  • (2013/7) Runner's World - Sweat Science - Resveratrol Blocks the Benefits of Exercise「レスベラトロールはエキササイズからの恩恵を妨げる」
    ランナーズワールド誌の人気ライター、アレックス・ハッチンソン氏が最新論文を紹介する記事。レスベラトロールは赤ワインなどに含まれるポリフェノールの一種で、抗酸化物質だそうです。
  • (2013/10) Runner's World - Sweat Science - When Exercise and Supplements Don't Mix「エキササイズとサプリメントの相性が悪いとき」
    上と同様レスベラトロールの記事だが、別の研究論文の紹介。
  • (2007/12) Running Times - Fueling the Runner: Anti-Oxidants
    ちょっと古い記事です。管理栄養士でフルベスト2:45のママさんランナーが、当時の最新研究を紹介しています。「Supplements may seem like the easiest way of ensuring that you are meeting your antioxidant needs.  However, there are a few important things to remember in considering supplementation.  First, we already know of over 5,000 different antioxidants.  A runner can be shortchanged by consuming only one or two antioxidants via supplementation.  A diet rich in variety of whole foods containing many antioxidants is encouraged.  Second, excessive amounts of antioxidants can themselves become free radicals (1).  This situation can occur when using supplements.  Finally, supplementation can also offset the benefits of other nutrients and can be toxic when consumed in excess.  」


別に抗酸化サプリ批判の記事だけを意識して集めたわけではないですが、結果的にそういう傾向になりました。

以下個人的な意見ですが、健康の不安を煽るような宣伝文句を見たら、誰がどういう根拠で書いているかを見ると良いと思います。サプリ業者などは、サプリのマイナス面は書きませんので、差し引いて考える必要があると思います。また対極の、極端な自然派志向も、根拠に注意して参考にする必要があると思います。


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2013/12/13

スポーツと遺伝(スタンフォード大学ゲノム学資料より)

アメリカに23andMeという遺伝子(SNP)解析を受けられるサービスがあります。専用容器にサンプルを入れて郵送すると、1万円ほどで解析してくれ、結果をウェブで見られるというものなんですが、どうもここ最近、FDAと揉めている模様…。

唾液(だえき)に含まれるDNAから、糖尿病や心臓病など約120の病気のリスクを判定していた遺伝子解析の米最大手「23アンドミー」(本社・カリフォルニア州)は、健康関連の情報提供をやめると発表した。
同社によると、今後も解析キットの販売は続けるが、判定は先祖にかかわる項目など一部に限定する。一方、判定や解釈を加えない生データの提供は続けるという。
(引用元:朝日新聞デジタル - 米遺伝子解析企業、判定情報の提供中止 FDA警告受け


23andMeはグーグル創業者の奥さんが創業したベンチャーで、業界最大手。私のオフィスメイトも試したみたいで、先日結果が出てきたと、すごく興奮した様子で結果画面を見せてくれましたw 利用者は50万人と、結構流行っていたようです…。


さて、遺伝子といえば、運動能力に関係ある遺伝子もいろいろあるようです。
※ただし、センセーショナルな書かれ方が多いので要注意

日本語での網羅的な情報はあまりなく、探していて行き着いたのが、スタンフォード大の「ゲノム学とオーダーメイド医療」という授業。主にそこで見つけた「Genetics of Athletic Performance (PDF)」という資料を参考にしながら、まとめてみたいと思います。2012年の学生プロジェクトの発表スライドなんですが、めちゃくちゃよくまとまっています。

環境 vs 遺伝:運動能力を左右する要素


ジャック・ダニエルズ氏は有名な著書のイントロで、長距離競技で成功するための4大要素として、「Inherent Ability」「Motivation」「Opportunity」「Direction」を挙げています。
(参考記事:ダニエルズ氏とランニングフォーミュラ

一方このスライドでの分類は、パフォーマンスを左右する要素を「環境」「遺伝」の2つに分け、さらに細かい要素に分解しています。


【環境要素】

 Page 3


【遺伝要素】

Page 4


ところで遺伝つながりですが、数週間前、某元陸上選手の「アスリートもまずその体に生まれるかどうかが99%」の炎上発言がツイッターで話題になったそうです。

何%であっても、科学的エビデンスがどれだけあったとしても、社会的影響力のある人がうかつにそういう発言をするもんじゃないと思います。

どういう風に生まれたいかなんて、自分の努力ではコントロールできるものじゃないので。

アメリカだとそういった種類の発言は問題視されます。例を挙げると、ジェームズ・ワトソン氏とローレンス・サマーズ氏。前者はDNAの二重らせん構造でノーベル賞を取ったような人ですが、コールド・スプリング・ハーバー研究所の会長をそういった発言で辞任するはめに。後者も同様に、ハーバード大学の学長を舌禍辞職しています。

ACE

「遺伝」のほうを見ていくと、まず持久力に関係してそうな遺伝子はACE。
  • I/I 型:持久能力 [p=0.009]
  • D/D型:瞬発力 [p=0.004]

ただし、矛盾する結果も多く、8つの研究で運動能力との関係が見られたが、5つの研究では見られなかったそうです。まあ多数決じゃないので数はどうでもいいのですが、完全にはわかってないということですね。

また、オレゴンプロジェクト元コーチのマグネス氏が最近の論文を紹介していました。エリート選手層のケニア人のACEエチオピア人のACEをそれぞれ調べた研究によると、どうもACE遺伝子のタイプの違いは持久力に関係なさそう、とここでも従来の仮説を覆す結果が出てきています。


その他関連文献
Gayagay et al., 1998Montgomery et al., 1998Montgomery et al., 1999Myerson et al., 1999Thompson et al., 2007SNPedia


ACTN3

スポーツ関連の遺伝子では、ACTN3も有名なようです。

(CG: Wikipedia - Actinin, alpha 3

まずは日経による説明。
スポーツで注目されている「ACTN3」遺伝子は筋肉構造の特徴を決めると言われている。研究は2003年にさかのぼる。「ACTN3」は、速筋の働きが安定する「R」と、持久的な体の働きが強くなる「X」の2種類の遺伝子で構成される。父母からそれぞれの遺伝子を受け継ぐため、その組み合わせは大きく「RR」(パワー・スプリント系)、「XX」(持久力系)、「RX」(パワー・スプリント/持久力系)という3つのタイプに分類できる。
シドニー大学などは2000年代前半、オーストラリアで50人のオリンピック選手を含む300人以上のトップアスリートを対象に「ACTN3」を調査。スピードスケートや短距離水泳種目の選手に「XXタイプ」が一人もいないことを解明した。さらにスポーツ競技を瞬発力が求められる競技と持久力が重要になる競技に分類して調べたところ、高い持久力を求められる競技の順に、「XXタイプ」の割合が高くなることが分かった。
(引用元:日経新聞 - 筋肉を作る「スポーツ遺伝子」、トレーニングに生かす 


ACTN3と運動能力の研究は、上記事でも触れられている通り、Yang et al., 2003にさかのぼるようです。
  • CC (=RR) 型:瞬発力 (p=0.0001)
  • TT (=XX) 型:持久力 (p=0.148)


ただし、この研究の第二著者が寄稿したあるブログ記事によると、こんな注意事項が…。
ACTN3は運動能力に影響を及ぼすたくさんある要素の中のたった一つである
ACTN3は個々の筋肉のばらつきについてたった2~3%説明するのみです。
ACTN3はあなたの子供がスーパーアスリートになるかどうか教えてくれるわけではありません
(引用元:Science Blogs - The ACTN3 sports gene test: what can it really tell you?、強調は私による)


しかも、その後矛盾する結果も出ています。あるサーベイによると、RR型と瞬発力の関係があるとした研究が10つ、ないとした研究が2つ。XX型と持久力の関係があるとした研究が1つ、ないとした研究が7つ

ちなみに、川内優輝選手の速さの秘密を知るべく、彼のACTN3遺伝子を某大学が調べた番組がYoutubeに載っていましたが、意外なことに川内選手はRR型だそうです。その動画ではRR型は回復力に関係していると分析していました。


関連書籍
アマゾンなか見!検索で調べたところ、以下の書籍がACTN3にからめた持久力の話を書いています。



1冊目ニュートンは例の2003年の研究ベースの話、その他2冊も恐らくそうかな?若原氏のは前述ACEも登場。2003年の研究があまりにインパクトがあったのか、書籍や報道では釣り気味の紹介のされ方が多い気がします。


その他関連文献
Roth et al., 2007、9つの関連研究のメタ分析をしたAlfred et al., 2011など。SNPedia


その他遺伝子もろもろ

・・・すみません、全部紹介する予定でしたが、長くなるのでやめましたw
つづきは上で紹介した資料でどうぞ。
他の遺伝子としては、以下が載っていました。

  • ADRB1、ADRB2、ADRB3
  • COL5A1、COL6A1
  • EDN1
  • MSTN
  • NRF1、NRF2
  • PPARGC1A
  • AMPD1
  • APOE
  • BDKRB2
  • SLC9A9
  • FABP2
  • UCP1
  • : : :


COL5A1についてはコンペティター誌に先月「Study: Better Runners Are … Inflexible?」という記事が載っていました。この遺伝子がランニングエコノミーと関連しているのは先行研究で知られていたそうですが、2011年のある研究はちょっと視点が違います。70人のウルトラランナーを調べたら、COL5A1 BstUI RFLP型の人はランニングエコノミーが良く、かつ体が硬かったそう。実はCOL5A1が体の柔軟性に関係していて、柔軟性がないほうがバネが使えるとかなんとかで、ランニングエコノミーが良いのではないか、という論文です。体の硬い人は部位によっては怪我リスクも増えるみたいですが、柔軟性がないのがかえってランニングにプラスになっている可能性もあるんですね。私は硬いので、本当なら良いニュースです。

MSTN(ミオスタチン)は筋肉量に関係していることで知られているそうです。ネットでよく見る(?)筋肉ムキムキの犬は、この遺伝子変異によるものだそうです。

(写真: Google Image - "bully whippet")


まとめ

遺伝子が個人で気軽に調べられる時代ですが、まだまだわかっていないことも多かったり、解釈が難しいので、振り回されないようにお気をつけください…。(そういう混乱があるからたぶんFDAも検査を規制するんですよね。)

まあランニングに限って言えば、市民ランナーレベルだったら環境要素のほうが大きくて、あんまり関係ない話かもしれないですけどねw

またスライドには、実際はパフォーマンスは複合的要因で決まると書いてあります。そこらへんの話は「科学的トレーニングで知っておきたいこと」でも書きましたので、よければそちらの記事もどうぞ。

またこちらの拙記事もあわせてどうぞ。


関連記事: 23andMe



関連記事: 遺伝子解析と規制


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2013/11/28

新常識?水分補給は「渇く前」でなく「渇いてから」という理論

賛否両論?ランニングにおける10の俗説という記事には、「給水エイドには全て立ち寄ること」、つまり「水をできるだけ飲め」というのは俗説だという話がありました。

7. 給水エイドには全て立ち寄ること
スポーツ医のルイス・マハラム先生によれば、「ノドが渇いてると感じた時には、すでに脱水状態で手遅れであるというのは俗説」「ノドが渇いたら飲めばいい、そうすれば過剰なハイドレーションを防げるし、お腹のトラブルが起きる可能性を減らせる」

詳細を調べてみると、「渇いたら飲む(Drink to Thirst)」というアドバイスの多くがティム・ノックス博士のWaterloggedという本を参照しているので、今回はその本に書かれている「渇いたら飲む」理論を紹介したいと思います。

「渇いたら飲む」理論とは

読んで字のごとくですが、喉が渇いてから水分補給するのがベストだよ、という理論です。ノックス氏が昨年出した著書「Waterlogged: The Serious Problem of Overhydration in Endurance Sports」(水浸し:持久系スポーツにおける水分過剰摂取の深刻な問題)で提唱しています。



ノックス氏は痙攣の記事セントラル・ガバナー理論の記事でも紹介した、南アフリカの運動生理学者。アマゾンの著者紹介によると、複数のスポーツ科学の論文誌編集委員を務めたベテラン研究者で、70以上のフル・ウルトラマラソンを完走したランナーでもあるそうです。

Waterloggedは数十年の大量の研究結果を元に書かれた本で、これだけのシンプルなメッセージ+αを伝えるのに450ページを費やしています(最初の原稿は1000ページ以上あったそうですw)。

長ければいいっていうわけではないですが、それだけ裏付けがある、ということなんでしょうね。そんな濃い内容を全部は紹介できない(※私はこの本持ってないです)ので、今回はノックス氏がランニング・タイムズに寄稿した記事(これは読みましたが長かったw)から要点だけかいつまんで紹介したいと思います。

「渇き」は最も信頼できる兆候

ノックス氏によれば、脱水で起こる唯一の症状は「喉の渇き」だとのこと。
体内の水分量が減ると、その分血液の成分(特にナトリウム)濃度が上がります。それによる浸透圧の変化を脳が検知することで、喉の渇きという症状が起きます。
(引用元:Running Times - Drink to Thirst

だから、脱水を適切に防ぐには、信頼できる手がかりである「喉の渇き」を頼りに水分補給をしよう、とのことのようです。

記事にはもっと細かく、生理学的に○○ホルモンが△△に作用して喉が渇く、というように説明がしてありました。では理論はいいとして、実際はどうかというと、こんな研究が。
米陸軍省環境医学研究所の科学者は、異なる脱水レベルのグループ(体重の0%、3%、5%、7%の脱水)を作り、ノドの渇き、疲労、衰弱具合、立ちくらみ、めまいなどの兆候がそれぞれどれだけ脱水レベルと関連しているか調べました。脱水レベルとこれら各要素は相関が見られたが、一番強い兆候を表したのが喉の渇きでした。
(引用元:同記事)

喉の渇きは実際にも脱水の兆候をよく表すようですね。

ただ、昔ながらの説明だと、渇いてからだともう脱水が始まっていて手遅れで、パフォーマンスも落ちることだし、渇く前にどんどん補給しないといけないのでは・・・?と思いますよね。その答えも載っていました。

本当に脱水=パフォーマンス低下なのか?

過去に「水分補給とパフォーマンス」という記事を書いた時、ランス・アームストロング選手(いろんな意味で超有名な自転車選手)の著書より、「体重の4~5%の体液が失われると能力が30%低下する」というような内容に触れました。

これは事実なのでしょうか?

ノックス氏の記事によると、ある年の南アフリカ・アイアンマン(スイム3.8km+自転車180km+フルマラソンという過酷なトライアスロン)では、トップ5人のゴール後の体重を測ったところ、全員に6~8%の体重減が見られたそうです。そして、ニュージーランド・アイアンマンでも同様の傾向が見られたそうです。

仕組みはこういうことみたいです。

まず、走る燃料である脂肪&グリコーゲンの分の重さが失われます。さらには、筋肉/肝臓中にはグリコーゲン:水=1:3の割合で水分子が含まれているので、その分の再チャージはすぐできません(12~36時間かかる)。
この理論だけで、運動中に最低2,000g体重が減ることが説明できます。測定可能な体水分量が変わらないまま、1,000gの水分を失うことがある、という研究結果も。

なるほど…。体重が減るのは発汗だけが原因ではないんですね。

夏に1時間走って発汗で体重が2kg減った場合と、100kmのウルトラマラソンのゴール地点で2kg減っていた場合では大違い、とも言えるでしょうか。

燃料分の体重が2kg減ったとして、体重が減ったからといってそれを補おうと水分を2L摂ったら明らかに飲み過ぎですね。

6~8%の体重減は燃料分よりも減っていそうですが、そのぐらいの脱水ならパフォーマンスは落ちない(軽くなった分で相殺?)ということも推測できます。

※脂肪・グリコーゲンが燃料って何の話?という方は、手前味噌ですが、拙記事「マラソン前のグリコーゲンローディングについて」をぜひ。

※南アフリカ・ニュージーランド人のトライアスロン選手(恐らくでかくてゴツイ)と日本人のマラソンランナー(小柄・細い)だと体格がだいぶ違うので、体水分量の割合も違うかもしれず、上のトライアスロンでの数字がそのまま当てはまるわけではないのでご了承ください。

水分を摂り過ぎると・・・?

体に備わっている優秀なセンサー/アラームである喉の渇きベースではなく、時間や距離ベースで給水をすると、飲み過ぎてしまうリスクがあるとのこと。

飲み過ぎると腹痛リスクや、体が重くなることで不利になりますし、何より低ナトリウム血症/水中毒になると、最悪の場合は生命の危険が。
水中毒(みずちゅうどく、英: water intoxication)とは、過剰の水分摂取によって生じる中毒症状である。
人間の腎臓が持つ最大の利尿速度は毎分16mlであるため、これを超える速度で水分を摂取すると体内の水分過剰で細胞が膨化し、低ナトリウム血症を引き起こす水中毒に陥る。
症状
血液中のナトリウムイオン濃度の低下に伴い以下の症状が生じる。
(略)
100mEq/L - 神経の伝達が阻害され呼吸困難などで死亡
(引用元:ウィキペディア - 水中毒、強調は私による)

水中毒の死亡例

逆に水分を摂らないと・・・?

間違ったメッセージが伝わるといけないので強調したいのですが、提唱されているのは水を飲むのを我慢することではないので、要注意。飲まなきゃいけない、でも渇いたタイミングで飲むのが最適、ということのようです。

例外として、一部選手はあまり飲まない人もいて、高岡寿成さんがフルマラソン男子日本記録を2002年のシカゴマラソンで達成したときは給水なしだったらしいです(ちゃんとしたソースはないけど、ウェブ上にそういう記述がたくさんヒットしました)。

でも普通の人は、暑い日に水を飲まないでマラソンを走ったら、とんでもないことになりますよね。

例えば、ランネットの評価が36点/100点(342人)という低評価だった某大会。運営の不手際で給水切れを起こしたそうで、レポを読むと地獄絵図です。

15km給水を最後にその先給水はなく、25km以降は怖くて歩きました。喉はカラカラ、人がゴロゴロ、倒れているランナーを救護もせず進む自分の不甲斐なさに涙がでました。
救急車のサイレンが鳴りっぱなし、道の端に倒れたり動けない選手が何人もいて、リタイアバスや救護対応が遅れているのを感じた。
道のあちこちで嘔吐してる人、倒れてる人、救急車が何台も走り去り、まさに地獄絵図状態。
側溝水をすすらざるをえなかった屈辱感、倒れる人々を見捨てた罪悪感、高架からの逃げ道もなく、リタイアしても救護される目途がつかない恐怖・・・。ゾンビのようにうつろな目で歩く群れが、一人倒れると連鎖的に倒れていく、それも疲れ果ててうずくまるのではなく、意識を失い落ちていく、あと10メートルで陸橋の日陰があるのに、たどりつけず倒れ伏しているのです。あの一滴の水もない23キロ給水点で「次の給水点どこか不明&水の有無も不明」と聞かされてからの、絶望街道死の行軍を味わった仲間のランナーと、特に挫折せざるを得なかった無念のランナーたちのために、どうしてもこの大会の評価は最低点を付けたいのです。
(引用元:ランネット


私も練習で経験してますが、喉が渇いた時に水がないと、ほんと辛いですよね…。

ノックス氏の記事で紹介されている研究によれば、ゴール時に7~10%ほどの脱水ではただちに影響のある健康リスクはないそうですが、15~20%だと臓器不全のリスクがあると書かれていました。

実際に「渇いたら飲む」でウルトラ完走した人の話

161kmの山岳ウルトラレースで「渇いたら飲む」を実践してみた、というiRunFarの記事を、日本語訳で紹介している良記事を見つけました。まず、こんな冒頭で始まります。
iRunFar.comで今年のWS100で9位の好成績を残したJoe Uhanが、南アフリカのスポーツ生理学の大家、Tim Noakes博士の近著、”Waterlogged”に書かれている補給の考え方をもとにWS100を走った結果について書いている。 
“Waterlogged”は「飲めるときに飲めるだけ」という水分補給の考え方はドリンクメーカーの宣伝にすぎない、塩分補給は無用、と説いていて、従来の補給の考え方(少なくともアメリカの考え方)を覆すものとして注目されている。
(引用元:DogsorCaravan - ウルトラマラソンでは水分と塩分の補給は最小限で、糖質補給は切れ目なく:”Waterlogged”からの教え


Joeさんの体験談はというと、
Joeが今年のWS100を走ってみたところ、前半で体が重くなってペースがダウン。経験上いつも摂っていた塩分補給のサプリ(S!Caps)を摂ったところ調子が戻ってよい結果をおさめることができたとのこと。
これについてNoakes教授は、「塩分の摂取が脳に刺激を与えて良い結果につながったといえるかもしれないが、塩分を取らなかったからパフォーマンスが落ちるとはいえない」とのこと。
(引用元:DogsorCaravanの同記事)

う~ん、もっといろいろな人の体験談が知りたいですね。特にフルとウルトラで違いがあるのか、なども知りたいところ。

あと気になったノックス氏の説明:
・ランニングによって体温が上昇する程度は、運動量、具体的には走るスピードによる。100マイルのウルトラマラソンではスピードはさほど出さないのだから、特段体温上昇を気にする必要はない。
(引用元:DogsorCaravanの同記事)

ということは、距離によっては多めに飲んだほうがいいのかな…?


面白い記事でしかも日本語なので、興味のある方はぜひ上のリンクから全文を読んでみてください。

まとめ

ポイントをまとめると、こんな感じかと。
  • 水分補給タイミングは、「渇いてから飲む」がベスト
    • 渇きセンサーは優秀
    • 距離/時間ごとに飲むのは、飲み過ぎるリスク
    • 飲み過ぎも、飲まなすぎも、両方まずい
  • 持久競技での脱水とパフォーマンスの関係には誤解がある
    • 体重減は発汗だけではないので、減った分だけ水分補給してたら飲み過ぎに
    • 少々の脱水は実はそこまで悪影響がない

もっと知りたい方は「Drink to thirst」「Noakes Waterlogged」などのキーワードでググるといろいろ情報が出てきますが、まだ日本語の記事はほとんどないようです。

感想

実は最初は眉唾セオリーかと思ってました。「ノドが渇いてると感じたら手遅れ」「走った後は走る前と同じぐらいの体重になるぐらい水分を補給しろ」「脱水はとにかく避けなくてはいけないし、パフォーマンス低下にも繋がる」などと、今まで良く目にしていましたので・・・。

でも説明を読んでみると、今は少し説得されてきました(まだ少し引っかかるところもありますがw)。

「渇いたら飲む」を実際に試している方がいたら、どういう結果になったか教えてくださいm(__)m


関連記事(ブログ内)


関連記事(外部サイト)

  • iRunFar - Waterlogged – A Dogma-Shattering Book?
    本文中で紹介した記事のパート1で、Waterlogged本の解説(英語のみ)。この本には「渇いたら飲む」以外にも、「水分補給は熱中症予防にはならない」「ウルトラでは塩分補給の必要はない」「尿の頻度・色はハイドレーションや腎臓機能とは関係ない」などの従来の常識を覆すような主張があるのですが、本記事ではそういった点には触れませんでした。

タイプ別ハイドレーション


▲揺れにくい型

▲リュック型

▲手持ち型

▲腰巻き型
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2013/11/22

ランニングで脚が痙攣する仕組みと対処方法

ブログ背景を変えてみました。
クリスマスな雰囲気にしたつもりが、ただ緑なだけのブログに・・・w


さて、以前紹介した「賛否両論?ランニングにおける10の俗説」のうち、まずは一番自分に身近なテーマ、運動中の痙攣(足のつり、こむら返り)について書いてみたいと思います。

8. カリウムは痙攣防止になる
前出マルチネス氏は、最近の研究ではカリウム摂取と痙攣の相関関係は見られていないとしています。 「ティム・ノックス氏は痙攣は筋肉の疲労からくるものとしています」「痙攣とより関係あるのは、練習不足または脱水なのです」

元記事はカリウムが痙攣防止になるのが俗説としていますが、さてどうなんでしょう・・・?

結論から書くと、いろいろな記事を調べた結果、「痙攣の厳密な仕組みは解明されていない」「電解質(ナトリウム、塩化物、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどのイオン)不足が痙攣を起こすという、広く信じられている説は疑わしい」というような内容の記事が多かったです。そして、有力そうな仮説もあるようです。

以下、詳細です。

痙攣の俗説

文献レビュー by 彦井氏

彦井浩孝氏(オレゴン州立大PhD・運動生理学・栄養学)が関連研究をまとめた記事から、引用します。
競技中に EAMC を起こしたランナーでも血清中の電解質濃度は正常な範囲内にあり、しかも脱水との因果関係も示されていません(Schwellnus ら、2004 年)。最近の研究では、電解質不足や脱水が必ずしも EAMC の原因ではないと考えられています(Miller ら、2010 年、Schwellnus、2009 年)。
(引用元:日本フィットネス協会HEALTH-NETWORK August, 2010, p41 [PDF])

※「EAMC (Exercise-Associated Muscle Cramps)」は、運動中に脚を攣ること。「運動誘発性筋けいれん」。

電解質不足・脱水は痙攣の直接の原因ではなさそうですね。

だからといって、電解質不足、脱水で走っても良いというわけではないので要注意。低ナトリウム血症や脱水症状になったら大変です。また、後述しますが、要因として100%除外できるわけでもないようです。

「俗説は消えない」・・・フリール氏

以前にもちらっと紹介した、長距離自転車コーチのジョー・フリール氏のブログは、論文がたくさん登場するかなり濃いブログです。痙攣については、こんなことを書かれています。
筋肉の痙攣が起きる原因は誰も知りません。通説では電解質が犯人ということになっているが、それは限りなく疑わしいです。スポーツ・栄養産業は、この俗説に乗っかって商売をしています。
過去25年の間に様々な研究が電解質と脱水は痙攣の原因ではないとしているが、この俗説は消える気配を見せません。
(引用元:Joe Friel - Muscle Cramps and Mythology

25年間のいろいろな論文のリンクは[123456]です。

痙攣の最新説については、タッカー氏のブログ(後述)を見てください、とのこと。

なぜ俗説が生まれたか?

なぜ電解質が痙攣と関連付けられたのか、フリール氏は経緯について解説しています。
20世紀のはじめ、港湾労働者は荷物の積み下ろしの最中、よく痙攣を起こすことで知られていました。そこで当時の科学者が痙攣を起こしていた者の汗を調べたら塩化物イオンCl-が見つかりました。痙攣を起こしていない者の汗の成分を調べもせず、短絡的に「痙攣と電解質不足(と湿度と湿度)は関連がある」との結論が作られました。こうしてこの俗説は誕生したのです。
(引用元:Joe Friel - Muscle Cramps and Mythology

一旦広く信じられてしまうと、なかなか難しいんでしょうね…。

痙攣の原因

「神経説」・・・タッカー氏の解説

タッカー氏は、この記事で触れた「セントラル・ガバナー理論」提唱のティム・ノックス博士のもとでPhDを取った現役の運動生理学者。専門分野は疲労。

彼はサイエンス・オブ・スポーツというブログで濃い情報を発信しています。痙攣についても何本か書いています。

その中の一つの記事では、痙攣は電解質不足や脱水では説明できない、けど100%除外することもできない、としています。

そして、同記事では疲労による痙攣の仕組みの有力そうな説を細かく解説してるのですが、第一線の研究者が書いてるだけに、そのまま訳しても恐らくちんぷんかん…。

先ほどの彦井氏の解説の続きのほうがわかりやすいと思いますので、まずはこちらをどうぞ。
一方で、EAMC が起こる前兆として、筋の放電量が高まっていることが指摘されています(Schwellnus ら、1997 年、Sulzer ら、2005 年)。この筋放電量の増加は筋疲労や中枢疲労による筋神経系の過剰な活動の結果として起こっていると考えられており、筋疲労や中枢疲労のある状態では、無理な姿勢や急な筋力発揮によって筋神経系へ急激な刺激を与えやすくなります。これが、過剰な反射を引き起こし、過度の収縮、つまり EAMC をもたらすと考えられます(Miller ら、2010 年)。また、興奮や緊張、不安などの精神状態や力みが、中枢から筋肉へ過度の刺激を発生させ、筋神経系に過剰な反射を引き起こす可能性もあるようです。


・・・もっとわかりやすい説明ですか?

わかりました、私が調べながら解釈した内容を書いてみます。

(一応他のソースも調べましたが、細かいとこ間違ってたらすみません!)



■ 通常時1

α運動ニューロン「ども、筋肉の収縮をコントロールしてるものです」

筋紡錘「自分は筋肉のセンサー(^O^)」
筋紡錘「伸びすぎると発動する安全装置みたいなもんっす」
筋紡錘「脳を通さず反射的に体に信号送れるっす」

筋紡錘「お、さっそく筋肉が伸びてるっ!」
筋紡錘「このままじゃ筋肉切れるのでは? つД`)・゚・。・゚゚」
筋紡錘「筋肉収縮命令ファイアー!(*°∀°)=3」

α運動ニューロン「確かに、Ia線維経由で脊椎より命令承りました」
α運動ニューロン「筋肉よ、収縮するが良い!」



■ 通常時2

ゴルジ腱器官「自分は腱についているセンサーっす」

ゴルジ腱器官「おや、腱に負荷かかってる・・・」
ゴルジ腱器官「筋肉には収縮やめてもらわないと つД`)・゚・。・゚゚」
ゴルジ腱器官「筋肉リラックス命令ファイアー!(*°∀°)=3」

α運動ニューロン「確かに、Ib線維経由で脊椎より命令承りました」
α運動ニューロン「筋肉よ、リラックスするが良い!」



■ レースでの疲労時

筋紡錘「(;´Д`)ハァハァ疲れて混乱するー・・・」
筋紡錘「収縮命令いっぱいファイアー!!!ヽ(`Д´)ノウワァァァン!!」

ゴルジ腱器官「(;´Д`)ハァハァ疲れて混乱するー・・・」
ゴルジ腱器官「リラックス命令減らします!収縮の方向でヽ(`Д´)ノウワァァァン!!」

α運動ニューロン「お、なんだ収縮祭りか?!?!」
α運動ニューロン「よし筋肉よ、思う存分収縮するが良い!」

筋肉「痙攣 キタ━━(;゚Д゚)━━!!」

α運動ニューロン「やべ、やりすぎたwww」



大体こういうイメージみたいです。(適当すぎたかw)

研究では、疲労時の反射の異常(Ia線維の活動活発化とIb線維の活動低下)がエビデンスとして出ているそうです。

また記事には、神経説では説明がつくけど電解質不足説では説明できない問題がいくつか挙げられています。例えば「どうして脚の特定の筋肉が攣りやすいのか」。確かに…。

その他原因色々・・・ロー氏の解説

ロー氏は理学療法士の博士号を持つ元体操選手。彼の記事によると、痙攣は以下の様な原因で起こるそうです。

  • 衝撃や怪我
  • 痙攣/細胞ダメージ/循環機能低下 → 血流の低下 → 該当部分の酸素不足 → 代謝機能低下 → ATP不足など → 痙攣が続くことに。
  • 運動ニューロンの機能が適切に動いていない/逆にアクティブすぎる。(※先ほどの神経説ですね)
  • 筋肉の使いすぎ
  • 栄養の摂り過ぎ/不足により、電解質のバランスが崩れることによって(※運動中の発汗による電解質の不足が痙攣を起こすわけではないとのこと)

その他にも、重要度は低いですが、
  • 可動範囲の狭さ。体が固い人はたいてい筋肉が張っていて、血流が悪く、上の2番目のシナリオと同様のことが起きる。
なお、記事では乳酸は痙攣とは関係ないとしています。「血中乳酸濃度との相関は見られるかもしれませんが、乳酸が痙攣を起こすのではないのです」だそうです。

痙攣した後の対処

痙攣が起きた時の対処法としては、タッカー氏の先ほどの記事では、「一番効果的な対処方法はストレッチだ」「20秒ほどのストレッチでα運動ニューロンの活動低下がみられた(つまり痙攣が収まる方向へ)」と書いています。

じてトレの記事では、神経説の前提のもと、対策として「ピクルスジュース」「芍薬甘草湯」「疲労抜き」が紹介されています。
2010年のブリガムヤング大学の研究では、60mlのピクルスジュースを飲むことで、筋肉の痙攣が45%速く、平均で約85秒以内に収まるという興味深い研究結果が出ている。
(引用元:じてトレ - 足つりの予防方法や対処方法に関する情報

元論文はこれ。酸(酢酸)が鍵だとしたら、レモンジュースや梅干しでも効くのかな・・・?

まとめ

というわけで、いろいろな仮説が出ているようですが、完璧な理論はまだないとはいうものの、神経説が有力な印象を受けました。

確かに、マラソンに限って毎回攣っている自分の体験とも合います。エリーマラソンなんて、走る直前に塩をつまんだのに、そしてコンプレッション・ソックスも試したのに、攣りましたし。ただ、攣った後はストレッチは特にしなかったんですが、エイド毎にゲータレードを2杯飲んでいたおかげで走り続けられた気がしないでもありません。まあ気のせいかもしれませんが(笑)


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2013/11/19

科学的トレーニングについて知っておきたいこと<後編>

昨日の記事が意外と反響あって驚きました(笑)

科学トレーニングへの理解を深めるために参考になりそうな内容をまとめています。
今回は、前編中編の続きです。

研究結果は再現しないことも

再現性が低いケースも

先月エコノミスト誌に「How science goes wrong」(科学はどう間違いを犯すのか)という記事が載りました。論文で出た結果を他の人が試したら全然再現できないじゃないか、という指摘です。記事に出てくるケースを紹介すると・・・

  • アムジェン社がガン研究で重要とされるものを53件追試したところ6件、つまり11%しか再現できなかった。(詳細:Nature
  • Bayerという企業が67の研究プロジェクトを調べたところ、関連研究と合致する結果が出たのは20~25%ほどのプロジェクトのみだった。(詳細:Nature
  • MDアンダーソン癌センターの研究者への調査の結果、約50%の回答者は論文の結果を再現できなかった経験があると答えた。(詳細:この論文

生命科学とは状況が違うとは思いますが、スポーツ科学でも再現性の問題はあるのでは、と思います。

予想ですが、ほとんどの場合は別に捏造がどうとかではないと思います(もしそうだったら大問題)。前編で触れたような個人差による偶然もありえますし、再現に必要な前提が論文にちゃんと書いてなかったりとかはよくありそうな予感がします。

主観的アンケートには要注意

評価が被験者へのアンケート方式だったら、アンケート文も載せないと再現は難しいことも。

聞き方次第で結果が変わるという不思議だけど有名な例が、交通事故で死亡したときに臓器提供をしてもいいという人の割合(下グラフ参照)。国によって大きな差がついています。

(引用元:TED - Dan Ariely: Are we in control of our own decisions?、ちなみに元ネタはScienceのこの論文)

ドイツ・オーストリア、デンマーク・スウェーデンのように、文化的にも似ている国々で大差がついてしまった理由はただ一つ。

それは、質問の仕方がオプトイン式(=提供しますか?)かオプトアウト式(=提供したくないですか?)だったから。

質問の仕方次第で回答が極端に変わることもあるのですね。

プラセボ・ノセボ効果

客観的な評価だからといっても、油断は禁物。前編でも書いたようにプラセボ効果で出る場合もあるので、「ダミー」も用意したほうが結果は信頼できるでしょう。薬と違って被験者に違いがバレバレで、完全にコントロールするのは難しいかもしれませんが…。

アレックス・ハッチンソン氏の記事(Runner's World)によると、コンプレッションウェアの評価はこれまでいろいろな矛盾する結果が出ているそうです。


記事では「段階着圧のコンプレッションタイツ」と「伸縮性のある普通のタイツ」で回復に違いが出るかを比較をした研究(上のグラフ参照)を紹介しているのですが、これまでのほとんどのコンプレッションウェアの研究ではプラセボ対照実験をしていなかったとのこと。

ところでランナーズワールドは他より質が高い記事を書くライターが多い気がします。他誌でも論文紹介の記事もあるんですが、結果だけ書いて理由を書かないみたいな表面的な記事もあったり…。RWは批評もちゃんとしていることも多々あります。上の記事を書いている人は世界クロスカントリー選手権カナダ代表で、ケンブリッジ大で物理のPhDを取り、NSAを経て科学ジャーナリストになった異色の経歴の持ち主。RW内担当コーナーの「Sweat Science」は科学記事がずらっと並んでいて面白いです。

ラボ vs リアル

第三者が実験で再現できたとしても、実際に各自で再現できるとも限りません。またもや個人差の問題もありますし、中編「部分vs全体」で述べたように、複雑な要素が絡みあう中で実際に効果が出るかはわかりません。

他にもいろいろな要因がありえます。
population, equipment, study length, long term vs. short term, etc
(引用元:マグネス氏のスライド8ページ目)

population(集団)の差は重要そうです。日本人以外が対象の実験が筋骨格構造の違う日本人にも当てはまるかはわかりません。大学陸上部や軍人を対象とした実験結果が、一般人にも当てはまるかはわかりません。

また、ちょっと再現条件が変わると当てはまらない例も。トレミの結果をロードに当てはめるのは不適切かもしれないという論文(Nigg et al., 1995)もあります(そうでないという論文(Fellin et al., 2010)もありますが)。関連記事:トレッドミルFAQ

他にも上にあるように、短期的スパンの実験結果が必ずしも長い目線で見た結果に当てはまるとは限らないでしょうね。

研究するのは大変で、わかっていないことも多い

被験者が集めにくい

意外かもしれませんが、自明そうに見えて実は答えが出ていないテーマもたくさんあるようです。

例えば「柔らかい地面と固い地面、どちらで練習するべきか」という問題に対しても、まだ結論は出ていないようです。(参考:Nice Body Make・・・よもやま話 - 第148回 アスファルト vs 柔らかい地面

「実験してみればいいじゃん」と思われるかもしれませんが、実験するのは一苦労。

ミシガン大学のキネシオロジーの教授がコンペティター誌の記事の中で、上の問題に結論が出ていない理由についてこんなことを仰っています。
数百人のランナーを舗装路、ダート、トラックというように分け、違うサーフェスで全く同じ練習内容を1年間してもらい、実験するのが理想。ただ、そんな練習の実験台になりたいと思うようなランナーはほとんどいないのです。実際のところ、ランニングのフィールド上でのスタディのほとんどは、軍隊のブートキャンプで新入りの軍人によってデータがとられているのです。
(引用元:Competitor - Is There One Best Running Surface?、太字は私による)

分野によっても状況は違うと思いますが、スポーツ科学は被験者集めと長期的評価が大変と・・・。確かに、効くかもわからない練習に1年も付き合わされたくないですね(笑)

サーフェス比較ぐらいの実験ならいいですが、怪我のリスクのあるフォーム改善系とかの実験だともっと大変そうですね。

予算がないとできない

あと、研究は予算がないとできません。

シューズ絡みの研究などは企業スポンサーもつくかもしれません(それはそれで研究の独立性が保たれなくなってあまり良くないのかもしれません…)が、アメリカの場合だと多くはNSFやNIHなどの政府系の研究予算に頼ることになると思います。

NIHの仕組みはよく知りませんが、NSFだと研究プロポーザルの判断基準として、科学的な価値(Intellectua Merit)の他に広範囲な影響力(Broader Impact)があります。

後者の基準ではランニングのパフォーマンス解明が世の中にどれだけ役立つか説明できないといけないわけで、研究テーマによっては通りにくいんでしょうね。

余談ですが、有名な研究だと、ハーバード大リバーマン教授らの2010年の裸足ランニング研究はNSFに支援されていますが、スポーツ科学というより進化人類学ということで通りやすかったのかもしれません。

研究結果は正しく伝わりにくい


メディアが研究結果を伝える時は、紙面や尺の都合や、速報性への偏重や、分かりやすく伝えるという建前上、厳密さを犠牲に噛み砕きすぎてしまうことがありますね、下の方の例のように。
明らかに僕らの研究ではその方の病気をすぐにどうこうできるものではなかったから。(略)ライターが少し強調して記事にしたことで、二次的、三次的情報に尾ひれがついて、結果的に詐欺のような誇張した内容になってしまったのだ。
(引用元:アメリカポスドクの歩き方 - 情報伝達の難しさ

よくあるのは、相関関係と因果関係を混同させるような釣りタイトルになっていたり、転載されるうちに伝言ゲームのようにどんどん内容が変わっていったり・・・。
マスコミやマーケティング関係者の中には妙に相関係数を好み、実は全く関連が無いような事柄を強引に結び付けることによって、いかにも「世紀の大発見」をしたかのような騒ぎを演じる(確信犯か大マジメかは不明なので、一応演じるとしておきましょう)人々もいるようです。
(引用元:世の中ナナメに見てみよう! ~楽しい数字、怪しい数字、卑しい数字?~  - 相関関係と因果関係

自分が詳しいと思っている分野を見ていても、上みたいなことはしょっちゅうです。

まとめ

スポーツ科学は役に立つこともあれば、いろいろな理由で実際に効果が出ないこともあるので気をつけましょう☆


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2013/11/15

科学的トレーニングについて知っておきたいこと<中編>

前編の続きです。

スティーブ・マグネス氏の「コーチングへの科学の応用・導入について」というスライド紹介を中心に、科学トレーニングへの理解を深めるために参考になりそうな内容をまとめています。

研究は測定できるものばかり重視する


マグネス氏のスライドは、研究は測定可能な指標に重きを置きすぎている、としています。

測定できるものといえば、例えばV̇O2max、LT値、ランニングエコノミー、心拍数などです。定量化できるとわかりやすく、近似的にうまくいくので多くの人が使うわけですが、ランニングパフォーマンスを厳密に説明する要素としてはこれらだけでは不完全です。

例えば東アフリカランナーの圧倒的な強さ、ポーラ・ラドクリフの女子フルマラソン世界記録の圧倒的な速さを完璧に説明できる決定的な理論はまだないようですね。もちろん仮説・弱いエビデンスは山ほどあるようですが…。そこらへんの話はこの記事(英語)や下で紹介する論文などに詳しいです。

今はまだ定量化ができないせいで研究として陽の目を浴びにくいが、もっと他に何かあるんじゃないか、ということですかね。(このロジックだと「科学には限界があるので擬似科学的なもの、オカルト的なものに説明を求めよう」的なパターンにならないよう、注意も必要ですけどね。)

セントラル・ガバナー理論

定量化は難しいけどある程度支持されている仮説の一つとしては、体が壊れる前に発動する脳のリミッターによりパフォーマンスが左右されるという「セントラル・ガバナー理論(CGM)」なんてものもスポーツ生理学者のティム・ノックス博士により提案されています。

スポ根・精神論とも意外なところでつながっているかもしれず、興味深いです。

マグネス氏も自身のブログ「サイエンス・オブ・ランニング」のこの記事(英語)でV̇O2maxの限界とCGMについて説明しています。ノックス博士の弟子2人の綴るブログ「サイエンス・オブ・スポーツ」(英語)にも平易な解説記事がたくさんあります。

もっと専門的な記事だと、「ケニア人ランナーは脳が違うから速い」という論文の紹介記事がここで日本語で読めます。ノックス氏の原著は「V̇O2maxでなくセントラル・ガバナーが走力の限界を決めていますよ」というような内容の2001年の論文がPDFで公開されています。

なおCGMは賛否両論で、批判もたくさんされてはいます(英語版ウィキペディアのCentral_governor#Criticismsから反論記事へのポインターがたどれます)。

部分 vs 全体


科学者:要素を部分部分に分解してどれが効くのかを抽出する
コーチ:全体的アプローチ
(スライド8ページ目)

スライドだけだと実際どんな内容を講演したのかわかりませんが、推測するにこんな感じかと。

  • 科学者の場合は、XがYに効果があって、Yがパフォーマンスと関連している、というように変数Xを分離しようとする。しかもコントロールされたラボでの実験は、実際走る環境よりシンプル(トレッドミル、風なし、短期的etc)。
  • コーチは使えるものは取り入れつつも過信せず、「いろんな変数が組み合わさった時に実際の結果がどうなるか」を気にすべきで、実践的、マクロ的、長期的な視点が必要。

例を挙げると、反発力のあるシューズだと同じ重さのシューズよりランニングエコノミーが1%改善された、という研究結果が出たとします。でも、比較対象になりうる一般的なシューズより実は重くて、それによって改善分が打ち消される可能性もあります(参考:スプリング・ブレードの記事)。

「速くなる○△□」を採用するべきかの判断方法


マグネス氏の大学時代の教授が授けてくれたという、速くなるかもしれないアイディアを練習に取り入れる際の3つのチェックポイントです。
1.実践・・・実際に使えるの?
2.研究・・・裏付ける研究はあるの?
3.理論・・・理論的な裏付けができるの?
(スライド9ページ目)

ちょっと順序は入れ替わりますが、(2)良い結果のデータがちゃんと実験から出ており、(3)データが出た理由を合理的に説明できる理論があり、かつ(1)机上の理論でなく実践的、というのが理想ということですかね。

上の順番になっているのは、コーチから見た優先度がこうだからなんじゃないかと予想。

(スライド15ページ目:現実と机上理論の違い:血中乳酸濃度?)

2と3の違いですが、2○、3✕のケースは、実験したらいい結果が出てきたけど、なんでうまくいったかわからない、でしょうね。たまたま相関する変数は見つけたけど、因果関係があるかわからない、あってもどういう現象が起きているかわからない、的な。こういうデータ・ドリブンなアプローチはまあ許容できるケースもあるのかもしれませんが、正しく理解したい人は理論的な背景も知りたい所かと。

2と3が○でも1が✕なケースは、しょっちゅう見られるような気がします。「この商品は○○博士の研究成果・論文に基づいて開発されました」・・・みたいな謳い方がされていても、評価における統計的有意性(statistical significance)が必ずしも実践的な意義(practical significance)につながるわけではないですから、要注意です。

マグネス氏は自身のブログでも、上の3つの基準でコンプレッションウェアが本当に効果があるのか議論しています。(コンプレッションウェアについては、これまた賛否両論なのでまたいつか書きたいと思います!)




後編につづきます。


追記:マグネス氏の濃いブログがついに書籍化。詳しくはこちらの記事で触れました。
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2013/11/13

科学的トレーニングについて知っておきたいこと<前編>

ランニングにおける10の俗説」の記事に関連してそれぞれの俗説を掘り下げようと思いましたが、その前にコメントいただいた内容に関連して、科学的トレーニングの注意点を調べながらまとめてみようかと思います。

そもそもスポーツ科学とは

スポーツ科学とは、科学的な理論や技術をスポーツにおけるパフォーマンス向上に応用するための分野。
(引用元:Wikipedia - Sports Science

科学的トレーニングというと、全くなじみのない人にとっては、なんだかあやしげなマッドサイエンティストが特殊な器具やサプリを薦めているようなイメージがあるかもしれません(笑)。少なくとも某選手のインタビュー動画ではそう感じている印象を受けました。

私のイメージではこんなかんじです。
例えば「○△□をするとタイムが縮んだ」ということを見つけたとします。

○△□はインターバルのようなトレーニング方法かもしれませんし、前傾姿勢のようなフォームのことかもしれませんし、カーボローディングのような栄養関係の話かもしれませんし、シューズやウェアかもしれませんし、「左足からシューズを履いた時はいい結果が出る」(ジョー・フリールコーチのエピソードより)というおまじない/ゲン担ぎかもしれません(笑)

○△□がたまたまなのか、本当に効果があるのかを理論やデータから科学的手法で検証してから導入すること。それが科学的トレーニングなのではないか、と素人ながら解釈しています。

少しでも速くなると聞けば、おまじないの類だろうが真っ先に飛びついてしまうランナーは多いと思います。ランニングだけではなく、他の分野でも同様のようです。
“ブロウサイエンスとは、ボディビル界でのリーズニングの有力ブランドのことで、重い物を持ちあげてデッカクなった奴の逸話的な話しの方が、科学よりも信頼性があると考えられている。
一例を挙げると、
兄ちゃん!スクワットラックカールの最終セットが終わってから7秒以内に、カーボslam 40-60グラム(トウモロコシ成分で無糖)とBCAA20グラムを摂取しないと、筋肉がカタボリック(異化・分解)しちゃうよ!“といった具合です。
ダイエット、フィットネス、ウェイトトレーニングの分野では、ブロウサイエンスが蔓延しています。
(引用元:Nice Body Make・・・よもやま話: 第146回 サイエンス vs 都市伝説

難しいのは、おまじない・ゲン担ぎですら、プラセボ効果で実際に若干効くケースもあるところ。

そして、ちゃんと査読を経て発表されたような研究結果であっても、矛盾する結果が頻繁にあったり、個人差があったりで、何をどう信じていいのか・・・。

というわけで、科学にはどう向き合えばよいのでしょうか。

アンチサイエンス vs 科学盲信、どちらが正しい?


新しいトレーニング手法を積極的に試しているナイキのチーム(関連記事:モハメド・ファラー所属のオレゴンプロジェクトとは?)に2年間コーチとして在籍し、現在はヒューストン大学のクロスカントリーのヘッド・コーチを務めるスティーブ・マグネスさんというコーチがいます。

運動科学の修士号を持ち、ツイッターで「運動科学ギーク」を自称するこのコーチですが、ランニングを科学するブログ、その名もサイエンス・オブ・ランニングでも有名です。

そのマグネス氏が、「Integrating and Applying Science to Coaching」(コーチングへの科学の応用・導入について)という興味深い講演スライドを惜しげも無くスライドシェアにて公開しています。

コーチ向けの資料ですが、セルフ・コーチングの市民ランナーにもすごく役立つと思いますので、少しご紹介します。研究の利点とともに限界点も理解し、科学的トレーニングを正しく取り入れましょう、というような内容です。

(スライド、2ページ目)

まず冒頭で、科学的手法に対する態度として、コーチは「全く信じない」か「妄信的に信じる」人の2タイプに分かれがちだが、それは両方とも間違っているとバッサリ切っています。

前者は、経験則・直感・ときに精神論で指導するタイプのコーチでしょうか。本当に効果があることを指導してもらえるならいいですが、「練習では水を飲まない」「足腰を鍛えるにはうさぎ跳び」のように、現在では合理的とされないような指導が入る可能性はありますね。

一方後者は、データや理論などを表面的・盲目的に信じるタイプのコーチ。こちらは何が問題なのかというのがこの講演の重要テーマのようです。


研究では個人差は軽視されがち


平均 vs 個人

マグネス氏のスライドには「研究で扱うのは平均であり、そこに個人差は現れない」というような説明があります。

研究で「○△□で△%速くなる」などと結果が出ても、それは平均でみた時の話であり、人によっては変わらないかもしれないし、パフォーマンスは下がる可能性もありえるのです。

例えば、ある速くなる練習方法○△□があったとき、複数の人に試してみてビフォー・アフターを比べたら、下のようなグラフになったとします(横軸:時間、縦軸:評価指標)。

(スライド、7ページ目)

研究者は平均で見るので、この実験結果は「○△□では変化なし」となりがち。

一方コーチの場合は、「全体で見たら変わらないかもしれないが、個人差はこんなにある」ということを理解しないといけない。と、マグネス氏が言いたいのはそういうことでしょうね。

※一応研究者も、まともな人だったら表面上の数字だけ見ないでデータも見るはずです。

個人差を考えてコーチングすることの大切さ

ところでジャック・ダニエルズ氏も、選手を個人個人として扱うことが大切だと説いています。(関連記事:ダニエルズの「コーチング」フォーミュラ

例えば、ダニエルズさんの講演動画や本で紹介されている、ジェリー・リンドグレン元米五輪選手。5000mの全米高校記録をゲーレン・ラップが破るまで40年間保持した名選手のようです。彼の一番走った年の平均週間走行距離は386km!月間だと1700km弱ですかね。最大で週に580km練習したというからすごいです。しかもこれだけ走って、たった一度しか故障しなかったそうです(その一度の原因は、車にはねられたから)。

選手クラスでもそういうタフな脚を持つ人もいれば、故障がちな選手もいるわけで、ひとまとめにコーチ同じメニューを課したりするのは間違いだと、ダニエルズ氏は強調しています。

思うに、その対極の考え方は、みな同じペースで同じメニューを集団走する「量産型」のコーチングなのかもしれません。
 今年、箱根駅伝に出場した大学の駅伝部指導者も、個人の能力が伸びない事情を明かす。

「もし仮に、箱根駅伝がなくなれば、有望な選手にオーダーメードの指導が可能になり、選手の能力をより引き出すことはできるでしょう。でも、現状では箱根を目指すしかない。団体戦ですから、露骨な特別扱いはできないのです」

 これでは、将来性豊かな若き才能に、五輪で戦える指導をすることは難しい。箱根駅伝は1920年、日本マラソンの父・金栗四三により「世界に通用するランナーを育成したい」という理念のもと創設されたもの。学校経営というビジネスに利用される側面は避けられない現実だが、その理念を無視している大学も少なくない。

スターはいらない」という考えを持つ指導者が、選手の将来より大学の広告効果のほうに重きを置けば、学生選手権などのトラック競技を軽視し、一年中、箱根で走るための偏ったトレーニングばかりを行う。箱根の1区間は4区を除いてすべて20km以上。その距離を走り続けることで選手は皆、同じような〝箱根仕様〟になっていく。例えるなら、圧倒的な馬力を誇るポルシェを1台作るより、燃費がよく壊れにくいプリウスを10台作ることを優先し、事実、それで箱根を制した大学も存在する。
(引用元:現代スポーツ - 新春特別研究「マラソンでメダル」が見たいのに……なぜ日本人には「箱根駅伝までの選手」が多いのか、強調は私による)


科学的トレーニングの注意点、まだまだつづきます。

中編につづく


追記:マグネス氏の濃いブログがついに書籍化。詳しくはこちらの記事で触れました。
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2013/11/12

賛否両論?ランニングにおける10の俗説

コンペティター誌の「The 10 Biggest Myths About Running」という記事より、ランニングにおける10のMyth(俗説・神話)です。説明は抜粋・意訳ですので、全文を読みたい方は原文をぜひ。

以下、記事が俗説とするものです。

1. ランニングにはふさわしい体型というのがある

サンディエゴ・トライクラブのコーチ、スティーブン・タリー氏は説明します。「どんな体型の人でもランナーになれます」「レースではいろんな体型といろんなストライドの人を見ることができます」
【私のコメント】
体型やフォームの話は、バイオメカニクス(ランニングフォームを科学的に扱う学問領域)の専門家でも意見が割れるところのようです。「究極の理想型がある」ほうを支持する人の考えを、私が以前書いた記事から引用します。
オレゴンプロジェクトでは、スプリント練習のため2名の短距離専門コーチジョン・スミス氏とラルフ・マン氏(英語ウィキペディア)を雇っていて、後者はバイオメカニクスの博士号を持つ専門家でもあるそうです。
また、サラザール氏はインタビューでも、バイオメカニクスに基づいた理想的なフォームへの修正は必要不可欠としています(youtube)。人によって理想的なフォームがあるというのは昔の考え方とも言ってますが、指導を受けたリッツ選手はフォアフット走法への矯正で故障しているので、この考え方は個人的に賛否両論あるところだと思います。
(引用元:モハメド・ファラー所属のオレゴンプロジェクトとは?

2. ランニングの前にストレッチをすべし

トライアスロンのコーチ、ホリー・ケニー氏の説明によれば、筋肉が温まる前のストレッチは、故障のリスクが高まりますとのこと。

追記:この記事で掘り下げました「なぜ運動前の静的ストレッチは逆効果なのか?

3. ランナーは筋トレをしなくて良い

「フルを走るには、そして回復をするには、強い筋肉が必要です」「週5日走ればマラソン完走はできるでしょう。でも自己ベストやボストン参加資格を目指すなら、筋トレは必要です」とアイアンマン世界選手権のアシスタントヘッドドクター、ジョン・マルチネス氏は言います。

【私のコメント】
またまたオレゴンプロジェクトの話ですが、「ストライドの効率とパワーの改善のため」そして何より「怪我防止のため」に高負荷・低反復の補強・筋トレを重視しており、専属のスタッフがメニューを開発しています。

一方、負荷を低く回数をこなす補強をする選手もいます。たとえば高橋尚子さんはナンバー誌での瀬古さんとの対談で、「補強練習はどうしてました? 私は毎日2000回腹筋してました。」と語っています。

どちらが正しいのか正解はあるのでしょうか。それとも「人によって違う」が正解なのでしょうか。Qちゃんは女子フルマラソンの元世界記録保持者なわけで、この補強タイプの補強が間違っていたとも思えません。仮に高負荷・低回数だったらもっと記録が伸びていたのかどうか・・・?どうなんでしょうね。

4. ベアフットランニングは怪我を減らす

前出マルチネス氏いわく、「私のところに、ミニマリストシューズで5マイル走ってみたんだけどなんで疲労骨折が起きたのか、と来る人がいます。」「トライアスリートやランナーは、速くなるものを聞きつけたら、すぐさま値段を聞いて、クレジットカードを取り出します。」その前に、十分自分自身でリサーチをしてからミニマリストやベアフットに移行してください。

【私のコメント】
追記:裸足感覚の5本指ランニングシューズ、ビブラムファイブフィンガーズ(VFF)が科学的根拠のない効果を謳ってシューズを販売したとして集団訴訟を起こされました。その結果、該当期間にアメリカでVFFを購入した人に1足最大94ドルの返金となりました。詳しくはこちらに書きました:「米ビブラムが1足最大$94の返金手続き開始

5. 毎日走らないと速くならない

前出タリー氏いわく、「ランダムなスケジュールで走るのはダメだけど、週2、3日走ってもそれより多く走る人とほとんど変わらないぐらいのトレーニング効果がある」「その分長い距離を走ると良い」と語っています。
【私のコメント】
市民ランナーの場合はそうかもしれませんね。(関連記事:週3ポイント練メソッド最強説(?)

エリートレベルの人は恐らく話が別ですね。アスリートの練習メニューを見ると週6、7日で午前午後の2部練で走っている人が多いような。

例えば先日NYCマラソンに出た選手だと、優勝のジョフリー・ムタイが週6日(メニュー)、13位のライアン・ベイルは週7日オフ日なし(メニュー)で走っています。ベイルのほうはマラソン前13週間の全練習メニューをブログで公開しており、貴重なデータです。アスリートの方には参考になるかもしれません。

6. ランニングはヒザ/健康に悪い

ランニングコーチ、カール・リーバー氏は「ランナーでない人の中には、ランニングは健康に良くないとか健康を害すると思っている人がいます」「ランニングは健康に最も良いアクティビティーの一つで、関節のダメージとランニングを関連づける研究はありません」

【私のコメント】
まあ走りすぎでヒザを壊す人もよくいますし、マラソン後は免疫力も落ちて風邪をひいてしまったりということはあると思います。(関連記事:マラソン後のダメージと回復時間

でも、適度だと健康にいいという意見のほうが目にします。

健康にいい説
健康に悪い説

7. 給水エイドには全て立ち寄ること

スポーツ医のルイス・マハラム先生によれば、「ノドが乾いてると感じた時には、すでに脱水状態で手遅れであるというのは俗説」「ノドが乾いたら飲めばいい、そうすれば過剰なハイドレーションを防げるし、お腹のトラブルが起きる可能性を減らせる」
追記:この記事で掘り下げました「新常識?水分補給は「渇く前」でなく「渇いたら飲む」という作戦

8. カリウムは痙攣防止になる

前出マルチネス氏は、最近の研究ではカリウム摂取と痙攣の相関関係は見られていないとしています。 「ティム・ノックス氏は痙攣は筋肉の疲労からくるものとしています」「痙攣とより関係あるのは、練習不足または脱水なのです」
追記:この記事で掘り下げました「レースで痙攣する仕組みと対処方法

9. ランニングは過酷であるべきである

ランニングは辛い時もあるけど、そうである必要はない。「ランニング初心者は毎日のように全力で練習しようとしてしまいます。でもゆっくり走ればもっと長い距離が走れるようになりますし、楽しいですよ!」
【私のコメント】
以前も書きましたが、著名な運動生理学者、ジャック・ダニエルズ博士もこう言っています。
Your training should bring you a certain degree of enjoyment and satisfaction.
訳:トレーニングはある程度楽しく、満足感のあるものでなければならない
(Jack T. Daniels. Daniels' Running Formula. 2nd ed. P.97より)
関連記事:ダニエルズの「コーチング」フォーミュラ

これに相対するのは精神論的な練習方法ですかね。日本の体育会系だと多いと思うのですが、どちらが正しいかというのはよくわかりません。ちなみに私は圧倒的に前者タイプですが…w

ただ、後者に関連した研究もあって、体が壊れる前に発動する脳(≒精神)のリミッターにより、パフォーマンスが左右されるという仮説、それがセントラル・ガバナー理論です。ただし、過酷なほうがリミッターが上がりそうな気はするものの、私は詳しく知りません。セントラル・ガバナー理論についてはこの記事でも触れました「科学的トレーニングについて知っておきたいこと<中編>」。

10. クッションのあるシューズは怪我を防ぐ

クッションのありすぎるシューズは逆に故障を招きます、とタリー氏は語ります。もしプロネーションがある人がハーフインチ(1.3cm)のジェルの入ったシューズを履いた場合、最初の2週間は心地良いでしょうが、プロネーションの度合いは悪化し、故障リスクが高まるでしょう。
【私のコメント】
う~ん、これはどうなんでしょう。裏付ける論文は探したんですが見つかりませんでした。

関連した話で、柔らかい路面vsアスファルト、足にいいのはどっち?というテーマもありますね。

以前「走るのに最適なサーフェスって存在するの?」(Is There One Best Running Surface?)という気になる記事がコンペティター誌にありました。記事からまとめると、
  • テキサス大のタナカ・ヒロフミ博士が手術を受けるぐらいのヒザ(PCL)を故障をしてしまった。
  • 術後回復中は固い舗装路は避け、トレイルのようなやわらかいところで走るようよう主治医に言われた。
  • なので柔らかい不整地で走っていたところ、今度は足首を捻ってしまった。
  • 本当に柔らかい地面のほうが足にいいのだろうか。
  • その話がニューヨーク・タイムズの記事になり、やわらかい地面で走ることの価値について、論争になった(この記事かな?)。
ということです。自身も運動生理学者であるタナカ博士は、
Is there one best surface?
訳:(ランナーにとってケガのリスクが少ない)究極のサーフェスは存在しますか?
との質問に、
That’s the million dollar question
訳:それは超難問ですね
と答えています。地面の種類とケガの関係は、まだ科学的に解明されていないんですね。

こういう研究は被験者集めも大変(だから運動生理学の実験の被験者は学生や軍人が多い)ですし、研究費もつきにくそうで、大変ですね。

追記:違うタイプのシューズを履き回したほうが怪我のリスクが減るかもしれない、という論文(英語)が発表されました。詳しくはこちらの拙記事もご参考に:裸足系vsクッションたっぷりシューズ、フォームに違いは出るか?




以上です。

※繰り返しますが、数字が振ってある見出しの部分は記事にて俗説とされるものです。


元記事の説明不足のせいなどで一部う~ん、と思うようなのもあったんですが、みなさんはいかがでしょうか。賛否両論なのもありますね。

もし気になる項目があれば、掘り下げて調べますので教えてください♪


<追記>
掘り下げる前に、こちらの記事書きましたので、あわせてどうぞ。

関連記事(ブログ内)

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2013/06/23

カフェインによるマラソンなど持久系スポーツへの効果と、研究による裏付け

スタバのVentiコーヒーと試食サンプル

暑かったのでスーパーのスタバでVentiを注文。

隣の小さいのは試供品ですが、それにしてもでかい(笑)普段はGrandeなのですが、結構量が違います。もちろん砂糖抜き。値段は3ドルと、日本よりは安め?

これでもかなりでかいですが、アメリカのスタバにはこれのさらに1.5倍でかいTrentaというサイズがあります。容量は890mlだそうで…それはさすがに注文したことはないです。ブログネタ用に頼めば良かった。

コーヒーといえばカフェイン。というわけで、今回は持久系スポーツにおけるカフェインの作用についてです。


持久系スポーツとカフェインの歴史

以下、運動生理学者のSpriet & Graham博士が書いた記事(PDF)を要約します。

持久系スポーツにおけるカフェインの研究は1970年代から始まっており、カフェインが脂肪燃焼に役立つという仮説(カフェインが血中アドレナリン量を増やし、それが遊離脂肪酸の放出を促進し、有酸素系運動中の筋肉がそれをエネルギー源とする)ができました。

1980年代には多く研究がカフェインと運動における代謝の関係を否定し、パフォーマンス向上効果がないとしています。いくつかの研究が実際に実験をして確かめていますが、その数は少数で、しかもよく訓練されたアスリートのみを対象としていました。

近年の研究ではパフォーマンス向上が見られたという研究結果が多く出てきています。ただし、筋肉の代謝系の仮説だけではパフォーマンス向上は説明しきれず、詳しいメカニズムは謎に包まれたままです。

要約は以上です。


最近の研究


ブログネタ探しトレーニングのヒントを探しに今年のアメリカスポーツ医学会ACSM年次学会のプログラム(PDF)を見たりしてたのですが、「カフェインとその他興奮剤」というテーマのポスターセッションがあったりして、スポーツ医学では今もメジャーな研究対象みたいです。中には矛盾する結果もあるみたいですが、一応、持久系スポーツに役立つというエビデンスはたくさん見つかっているようです。

ランナーズワールド内にもカフェイン関連記事がいっぱいあります。今日は詳細まで紹介できませんが、今年の記事のリンクだけ貼っときます。それぞれが最新の研究成果に基づいた記事(英語)です。

カフェイン摂取量の目安


長距離走のパフォーマンスが最大化するカフェイン摂取量は、体重1kgあたり5~6mgと最近の研究からわかっており、その基準を勧めているコーチがいます(RC, GaudetteActive, Fitzgerald)。これがひとつの目安ですかね。体重70kgの人で350~420mgほどの量です。

ちなみにカフェイン錠剤は、日本だとエスタロンモカ(1錠100mg)、アメリカだとvivarin(1錠200mg)などいろいろな種類がアマゾンや薬局で処方箋なしで手に入ります。アメリカでは3回ぐらい買ったことがありますが、サプリコーナーではなく睡眠薬のコーナーにありました。


▼エスタロンモカに最初にお世話になったのは、高校生の時。睡眠削らなきゃいけないテスト前など、ときどきお世話になっていましたw



▼1錠200mgの錠剤も日本のアマゾンで輸入品が買えるようです。

ドーピング基準と健康リスク


ドーピング基準を見てみると、IOCで尿中濃度12 ug/ml、NCAAで15 ug/ml。運動1時間前に体重1kgあたり9mgのカフェインを摂取した人(体重70kgの人でコーヒー5、6カップ)が、1時間~1時間半運動をした後に尿検査をしてようやく12 ug/mlだそうです(Spriet & Graham - PDF)。同ソースによれば、10-15 mg/kgで副作用のリスクがあるそう。

また、「カフェインの半数致死量 (LD50) は一般に約200mg/kgと言われている」(ウィキペディア)だそうです。


どちらも前述の5~6mg/kgほどの摂取なら問題ないですね。

ただし、アメリカに行くとカフェイン抜きのコーヒーが当たり前のように普及しているのに気づくと思いますが、人種や人によってはカフェイン耐性が違います。かなりレアケースだと思いますが、人によっては480mgで亡くなった方も(ウィキペディア)。普段カフェインを取っていない人は、いきなり大量のカフェインを摂る前に、少量からテストしたほうがいいと思います。


カフェインと脱水/利尿作用のMyth


最近の研究では、運動中は特に、カフェインには利尿作用はほとんど見られないことがわかってきているそうで、主要ランニングメディアの記事は揃って同じ見解です。


2014/2/5追記
運動中以外でも、「コーヒーは水と同程度の脱水作用しかない」という研究結果が出てきているそうでうす。
詳細:No Evidence of Dehydration with Moderate Daily Coffee Intake: A Counterbalanced Cross-Over Study in a Free-Living Population (via コーヒーを飲んでも脱水状態にはならない、米研究


ランナーへの普及率

拙記事「ウルトラマラソンの痛み止め普及率が高すぎる件」でも触れましたが、あるウルトラマラソンでは、参加ランナーの22%がカフェインを摂取していたとのこと。



ブログ内関連記事


本日8.6 km 月間 174.4 km
テニス2時間




 
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2013/06/13

ウルトラマラソンの痛み止め普及率が高すぎる件

フルマラソン42.195kmより長距離のウルトラマラソン。100kmはざらで、さらにいろいろな距離の大会があるようです。私はまだフルでもいっぱいいっぱいなので出ることすら考えたことはないですが、ウルトラマラソン関係のブログを読むのは好きです。

ブログ村のマラソンカテゴリーでも50kmとか60kmの練習会をやっているそうです(オカンさんのブログより)。練習でそれだけ走るってすごいですなぁ・・・。私は1回の練習では30kmちょっとしか走ったことないです。いつかはウルトラデビューする日が来るんでしょうか?!


ウルトラマラソンといえば、読売新聞のこの記事が面白かったです。
24時間でそんなにも走れちゃうものなんですね。耐久レースでのトイレの話なども生々しく、様子が伝わって来ました。岩本さんの数字でランの他の記事も面白いです。


それから、今年4月に14日間かけて1100km(!)を走破する、第1回台湾一周 国際ウルトラマラソン「ツール・ド・台湾」というのがあったそうですが、そこでなんと日本人の井上真悟選手が109時間25分21秒で優勝したそうです。ここ数日、井上選手のブログにレースのレポートが上がってきており、興味深く読んでます。

大陸を走って横断する僕の話。


また、ちょうどタイミングよく、ウルトラマラソンランナーと鎮痛剤・サプリに関するこんな記事がRunner's Worldに上がっていました。

記事中で紹介されている論文によると、スペインで行われたアル=アンダルス・アルティメット・トレイル・レース(5ステージ、計230km)に出場した32人のウルトラマラソンランナー(男26人、女6人、平均39.5±7.9才、ウルトラ歴7.7±9年)へのアンケートの結果、44%の人がレースまたは練習中に鎮痛剤・痛み止めを使ったことがあり、3%の人が常用してるとのこと。230kmのレースに出ようと思うかなりの熟練ウルトラランナーでもやっぱり痛みが出てしまうって、本当に限界を超えた過酷な距離なんですね・・・。

使用した鎮痛剤はNSAID/非ステロイド性抗炎症薬(60%)、アセトアミノフェン(40%)。使用目的は筋骨格痛 (筋肉痛、関節痛、骨痛)を抑えるため(65%)、疲労対策(24%)。医師に処方してもらった人はたった6%。使用のきっかけは友人のすすめ(56%)、自分で調べて(22%)、コーチから(6%)。入手経路はお店(47%)、薬剤師・薬局(47%)、インターネット(6%)。副作用があることについては3分の2の人が知っており、認知度は腎不全(27%)、胃腸障害(18%)、肝不全(9%)。

サプリメント・補給の使用率については、スポーツドリンク・電解液(67+%)、炭水化物飲料・ビタミン(50+%)、ハーブサプリ(38%)、ミネラル(38%)、マグネシウム(28%)、アミノ酸(25%)、カフェイン(22%)。論文のアブストラクトしか一般公開されていないため詳細はわかりませんが、逆にこっちはスポーツドリンクやアミノ酸の使用率が意外と低い気がしました。(あとマグネシウムがミネラルに入ってないのがちょっと謎。)

論文では、ウルトラマラソンでこんなに痛み止めが普及しているのも関わらず、3分の1の人が重い副作用について知らないということに警鐘を鳴らしています。脱水と鎮痛剤の組み合わせは腎不全のリスクが高くなり、もしそうなったら透析の可能性も…。

マラソン・ウルトラマラソンで痛み止め(上の井上選手のレポにも出てくるロキソニンなど)を飲んでいる方へ。効果てきめんなのでついつい飲んでしまいがちです。私も飲んだことがありますが、魔法のように効いてびっくりしました。ただ、飲まざるを得ない時は持病に注意し、脱水には要注意です。もし可能なら医師に相談しましょう。

ちなみにピッツバーグマラソンに出た時に、整形外科と内科の先生と一緒に行動していてそういう話になったときに聞いたのですが、整形外科と内科では痛み止めの使用に関する認識が少し違うこともあるようです(内科のほうが慎重)。なおその内科の先生は、お守りとしてしっかりロキソニンを携帯してらっしゃいました(笑)



サイト内関連記事


外部サイト関連記事
  • 厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性腎不全(PDF
    • NSAIDs、ACEI、ARB による腎前性急性腎不全は有効循環血液量の減少が大きな危険因子である。有効循環血液量の減少の最も多い原因が脱水である。」
  • ウィキペディア:NSAIDs
    • NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)系鎮痛剤は具体的にはロキソニンイブプロフェンなど。
  • 2013/4/20 マラソン前の鎮痛薬の予防的使用は臓器にダメージを与える
    • 薬剤師さん執筆の専門的な記事。BMJの上と似たような論文や日本内科学会雑誌掲載の運動後急性腎不全についての論文など、関連文献へのポインター多数あり。曰く「急性腎不全の発症には脱水が重要な因子となるので、マラソンなんかは一番危険かも。」
  • iRunFar.com - Ibuprofen and Its Effects During Ultramarathons
    • イブプロフェン摂取とウルトラマラソンへの効果を調べた論文を3本紹介している英語記事。コメント欄も白熱。

関連論文
  •  Küster et al. 2013. "Consumption of analgesics before a marathon and the incidence of cardiovascular, gastrointestinal and renal problems: a cohort study". BMJ Open 2013; vol 3 issue 4. (abstract)
  • Wharam et al. 2006. "NSAID use increases the risk of developing hyponatremia during an Ironman triathlon", Medicine and Science in Sports and Exercise. 38(4): 618-622. (abstract)
    • 「アイアンマン・トライアスロン中のNSAIDの使用は低ナトリウム血症のリスクを高める」
  • Gorski et al. 2011. "Use of NSAIDs in triathletes: prevalence, level of awareness and reasons for use". Br J Sports Med 2011;45:85-90. (abstract)
    • 「トライアスリートにおけるNSAIDの使用実態およびリスク認識調査」
  • Davis et al. 2001. "Exercise-associated hyponatremia in marathon runners: a two-year experience".  The Journal of Emergency Medicine, vol 21, issue 1, pages 47–57.
    • 「マラソンランナーと低ナトリウム血症:2年間の経験から」。マラソン大会で低ナトリウム血症になった患者を調べたところ、NSAIDの使用傾向があった。
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