2013/07/15

GPS/地図の高度データが信用ならない理由

あらすじ5/5のピッツバーグマラソンで自己ベスト3:34で無事完走した私SCR。ところがある日突然、9/15のエリー湖マラソンで、サブ3:05を目指す流れに。いくらなんでも無茶だと思いつつ、サブ目標として2ヶ月前に30km@4:45/km(結果)、1ヶ月前に30km@4:30/kmをこなせたら…という条件を設定。現在一日置き練習でPR30分短縮に挑戦すべく練習中。一体どうなることやら…?!


エリーマラソンのコースについて、某サイトでは高度が「パンケーキフラット」とありましたが、ほんとにどこ行っても平らでした。ところが、エリーマラソンの標高データを検索すると、獲得標高が3mのサイトもあれば、70mになっているサイトもあります。この違いは一体・・・??

この理由を探るべく、GPSと地図の高度の誤差について調べながらまとめてみたいと思います。

GPSの誤差

ガーミン(GPS付き運動用スマートウォッチ)のほとんどのモデルはGPSを使って高度を測定しています(後述しますが一部は気圧高度計)が、誤差があります。

ガーミンのサポートによる高度の精度についての説明によると、GPS衛星の配置が一番関係してそうです。

Garmin Support - How accurate is the GPS elevation reading?
The main source of error has to do with the arrangement of the satellite configurations during fix determinations. The earth blocks out satellites needed to get a good quality vertical measurement.
GPS測位には理論上最低3個(運用上は4個以上)の衛星からGPS受信機が電波を捕まえられないといけませんが、衛星は相対的に常に動いているものなので、常に捕まえられる保証はないですからね。

また、ウィキペディアGPSページにはこんな記述が。
空間の (x, y, z) 方向の誤差は均等であるが、前述のようにGPS受信機の多くは地表に沿って動く(地表と鉛直方向には動かない)ため、計算アルゴリズムを工夫して、地表に沿った方向の位置推定の精度を上げる代わりに高度方向の位置推定を犠牲にしているためである。
なるほど、GPSで測定する高度には誤差があり、水平方向の誤差より大きいことはわかりました。これだと「スタートとゴールが同じ場所なのに高度が違う」などといった現象については説明できそうです。

でもこれだと、まっ平らな400mトラックをグルグル走ったのに、ガーミンコネクトのエレベーションチャートでみると高度差2.5mのきれいな山と谷が周期的に出てくる現象は説明できません(下のグラフ参照)。

トラックでの高度がデコボコになる件

地図データの誤差

上の現象についてたまーに考えていたのですが、ようやくピンときました。どうもガーミンコネクトの「高度修正」が不完全なことが原因のようです。この機能がオンになっていると、ガーミンコネクトは地図データに基づいて高度に補正をかけるのですが、その地図データの精度が完璧ではないのです。(逆に機能をオフにするとランダムな誤差のある高度のグラフが出てきます。)

地図の高度データの詳細は、GarminサイトやGoogle Elevation APIを見ても、はっきりしたことは書いてありませんでした。ただ海外のフォーラムなどで集めた情報を総合すると、NASAのSRTMミッションのデータ(スペースシャトルからのレーダーで測定)など、いろいろな高度データを組み合わせているようです。例えばSRTMは、数値標高モデル(DEM)に基いて、地球をたくさんのマス目に分割して、1つずつのマス目に高度を対応させています。パソコンのモニターには1280×1024ピクセルのように解像度がありますが、SRTMの解像度もいろいろな大きさがあって、一番代表的とされるSRTM-3のデータ(3秒角)は、1マス約90m×90mだそうです。これは荒いw

(※アメリカの場合は90m四方よりもっと細かい30m四方のデータで解像度が高かったりして、国によっても事情は少し違うようです。)

なので、上の400mトラックのデータのように、マス目をまたいでしまうと、高度ががくんと上がったり下がったりするんですね。そしてうまく補間をしているので、滑らかな山と谷になっているんだと思います。

どフラットなエリーマラソンコースの獲得標高が70mと出たのも、コース上のピンポイントな高度が取れず、コースを含んだマス目内のどこかの高度が出たからと推測できます。道路と湖の間のちょっとした丘なども影響してそうです。

Garmin Forerunner 910XT は気圧高度計を採用

高度の精度に高い水準が求められる航空機などでは、気圧高度計が使われるそうです。

ガーミン製品ではForerunner 910XT / ForeAthlete 910XTJが、気圧高度計とGPSデータによる補正を組み合わせて高度を計算しています(ソース)。正しくキャリブレーションができると誤差はたかだか数mとか。

ただし、もし一瞬で高度が一気に何kmも上がったら、それは不具合のせいです。私の友人SALTYさんもこの不具合を経験しており、詳細は「GARMIN Forerunner 910XT 高度測定不良」「GARMIN Forerunner 910XT 高度測定不良(その後)」をご覧ください。

GPSの意図的な精度劣化?

余談ですが、GPSには軍事上の理由で意図的に精度を落としてあるという話も聞いたことがあるかもしれませんが、それは2000年までの話のようです。以下、ウィキペディア同ページより。
1990年から2000年までは、米国の軍事上の理由(敵軍に利用されることを防止する)で、C/Aコードにおいて民間GPS向けのデータに故意に誤差データを加える操作(Selective Availability、略称 SA)が行われ、精度が100m程度に落とされていた。
※実際の予想精度はガーミン上で見られます。下の写真はちょっと見にくいかもしれませんが、±8mになっています。

ガーミン305のGPS衛星捕捉状況

GPSは元々、米国防高等研究計画局(DARPA)の前身組織から生まれた軍事プロジェクトだったようですが、民間に公開するとはすごいですね!

標高vs楕円体高

また、GPSの高度は標高ではなく楕円体高の表示がほとんどだと思うので、いわゆる標高とは直接比較できませんのでご注意を。ガーミンサポートによれば、±120mほど差異が出ることもあるそうです。

楕円体・ジオイド・標高の関係は、国土地理院によると以下のとおりです。
 H=HE-N
 H:標高、 HE:楕円体高、 N:ジオイド高
標高、楕円体高、ジオイド高の違い


というわけで、ランニングコース管理ツール(ルートラボ、MapMyRun、ガーミンコネクトなど)で出てくる高度データやGPSからの高度は完全に信用してはいけない、という話でした。


ブログ内関連記事:







というわけで、日曜はエリー湖に突き出した半島、プレスク アイル州立公園へ。エリーマラソンのコースを軽く下見してきました!

エリー地図


エリーマラソンは半島内を2周(ハーフは1周)するのですが、こんな感じの道が続いています。

エリーマラソンのコース(半島内)

嬉しいことに、道路両脇の街路樹のおかげで日陰が多かったです!9月のレースなんで気温がちょっと心配でしたが、これなら涼しく走れそうです。湖が見える区間もあり、景色は最高でした!

湖といっても、ほとんど海と変わりません。ビーチがあり、波も少しあり、淡水であることを除いたらもう海。というわけで、泳いだりBBQしたりしてきました(下見よりそっちがメインです♪)。

エリー湖BBQ

マシュマロ焼き、通称S'moreはアメリカのキャンプの定番らしいです。


娘は湖をすごく気に入ったようで、何度も入りました。

エリー湖

下見もして気合も入ったことだし、エリーマラソンがんばりたいと思います!
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