2013/11/22

ランニングで脚が痙攣する仕組みと対処方法

ブログ背景を変えてみました。
クリスマスな雰囲気にしたつもりが、ただ緑なだけのブログに・・・w


さて、以前紹介した「賛否両論?ランニングにおける10の俗説」のうち、まずは一番自分に身近なテーマ、運動中の痙攣(足のつり、こむら返り)について書いてみたいと思います。

8. カリウムは痙攣防止になる
前出マルチネス氏は、最近の研究ではカリウム摂取と痙攣の相関関係は見られていないとしています。 「ティム・ノックス氏は痙攣は筋肉の疲労からくるものとしています」「痙攣とより関係あるのは、練習不足または脱水なのです」

元記事はカリウムが痙攣防止になるのが俗説としていますが、さてどうなんでしょう・・・?

結論から書くと、いろいろな記事を調べた結果、「痙攣の厳密な仕組みは解明されていない」「電解質(ナトリウム、塩化物、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどのイオン)不足が痙攣を起こすという、広く信じられている説は疑わしい」というような内容の記事が多かったです。そして、有力そうな仮説もあるようです。

以下、詳細です。

痙攣の俗説

文献レビュー by 彦井氏

彦井浩孝氏(オレゴン州立大PhD・運動生理学・栄養学)が関連研究をまとめた記事から、引用します。
競技中に EAMC を起こしたランナーでも血清中の電解質濃度は正常な範囲内にあり、しかも脱水との因果関係も示されていません(Schwellnus ら、2004 年)。最近の研究では、電解質不足や脱水が必ずしも EAMC の原因ではないと考えられています(Miller ら、2010 年、Schwellnus、2009 年)。
(引用元:日本フィットネス協会HEALTH-NETWORK August, 2010, p41 [PDF])

※「EAMC (Exercise-Associated Muscle Cramps)」は、運動中に脚を攣ること。「運動誘発性筋けいれん」。

電解質不足・脱水は痙攣の直接の原因ではなさそうですね。

だからといって、電解質不足、脱水で走っても良いというわけではないので要注意。低ナトリウム血症や脱水症状になったら大変です。また、後述しますが、要因として100%除外できるわけでもないようです。

「俗説は消えない」・・・フリール氏

以前にもちらっと紹介した、長距離自転車コーチのジョー・フリール氏のブログは、論文がたくさん登場するかなり濃いブログです。痙攣については、こんなことを書かれています。
筋肉の痙攣が起きる原因は誰も知りません。通説では電解質が犯人ということになっているが、それは限りなく疑わしいです。スポーツ・栄養産業は、この俗説に乗っかって商売をしています。
過去25年の間に様々な研究が電解質と脱水は痙攣の原因ではないとしているが、この俗説は消える気配を見せません。
(引用元:Joe Friel - Muscle Cramps and Mythology

25年間のいろいろな論文のリンクは[123456]です。

痙攣の最新説については、タッカー氏のブログ(後述)を見てください、とのこと。

なぜ俗説が生まれたか?

なぜ電解質が痙攣と関連付けられたのか、フリール氏は経緯について解説しています。
20世紀のはじめ、港湾労働者は荷物の積み下ろしの最中、よく痙攣を起こすことで知られていました。そこで当時の科学者が痙攣を起こしていた者の汗を調べたら塩化物イオンCl-が見つかりました。痙攣を起こしていない者の汗の成分を調べもせず、短絡的に「痙攣と電解質不足(と湿度と湿度)は関連がある」との結論が作られました。こうしてこの俗説は誕生したのです。
(引用元:Joe Friel - Muscle Cramps and Mythology

一旦広く信じられてしまうと、なかなか難しいんでしょうね…。

痙攣の原因

「神経説」・・・タッカー氏の解説

タッカー氏は、この記事で触れた「セントラル・ガバナー理論」提唱のティム・ノックス博士のもとでPhDを取った現役の運動生理学者。専門分野は疲労。

彼はサイエンス・オブ・スポーツというブログで濃い情報を発信しています。痙攣についても何本か書いています。

その中の一つの記事では、痙攣は電解質不足や脱水では説明できない、けど100%除外することもできない、としています。

そして、同記事では疲労による痙攣の仕組みの有力そうな説を細かく解説してるのですが、第一線の研究者が書いてるだけに、そのまま訳しても恐らくちんぷんかん…。

先ほどの彦井氏の解説の続きのほうがわかりやすいと思いますので、まずはこちらをどうぞ。
一方で、EAMC が起こる前兆として、筋の放電量が高まっていることが指摘されています(Schwellnus ら、1997 年、Sulzer ら、2005 年)。この筋放電量の増加は筋疲労や中枢疲労による筋神経系の過剰な活動の結果として起こっていると考えられており、筋疲労や中枢疲労のある状態では、無理な姿勢や急な筋力発揮によって筋神経系へ急激な刺激を与えやすくなります。これが、過剰な反射を引き起こし、過度の収縮、つまり EAMC をもたらすと考えられます(Miller ら、2010 年)。また、興奮や緊張、不安などの精神状態や力みが、中枢から筋肉へ過度の刺激を発生させ、筋神経系に過剰な反射を引き起こす可能性もあるようです。


・・・もっとわかりやすい説明ですか?

わかりました、私が調べながら解釈した内容を書いてみます。

(一応他のソースも調べましたが、細かいとこ間違ってたらすみません!)



■ 通常時1

α運動ニューロン「ども、筋肉の収縮をコントロールしてるものです」

筋紡錘「自分は筋肉のセンサー(^O^)」
筋紡錘「伸びすぎると発動する安全装置みたいなもんっす」
筋紡錘「脳を通さず反射的に体に信号送れるっす」

筋紡錘「お、さっそく筋肉が伸びてるっ!」
筋紡錘「このままじゃ筋肉切れるのでは? つД`)・゚・。・゚゚」
筋紡錘「筋肉収縮命令ファイアー!(*°∀°)=3」

α運動ニューロン「確かに、Ia線維経由で脊椎より命令承りました」
α運動ニューロン「筋肉よ、収縮するが良い!」



■ 通常時2

ゴルジ腱器官「自分は腱についているセンサーっす」

ゴルジ腱器官「おや、腱に負荷かかってる・・・」
ゴルジ腱器官「筋肉には収縮やめてもらわないと つД`)・゚・。・゚゚」
ゴルジ腱器官「筋肉リラックス命令ファイアー!(*°∀°)=3」

α運動ニューロン「確かに、Ib線維経由で脊椎より命令承りました」
α運動ニューロン「筋肉よ、リラックスするが良い!」



■ レースでの疲労時

筋紡錘「(;´Д`)ハァハァ疲れて混乱するー・・・」
筋紡錘「収縮命令いっぱいファイアー!!!ヽ(`Д´)ノウワァァァン!!」

ゴルジ腱器官「(;´Д`)ハァハァ疲れて混乱するー・・・」
ゴルジ腱器官「リラックス命令減らします!収縮の方向でヽ(`Д´)ノウワァァァン!!」

α運動ニューロン「お、なんだ収縮祭りか?!?!」
α運動ニューロン「よし筋肉よ、思う存分収縮するが良い!」

筋肉「痙攣 キタ━━(;゚Д゚)━━!!」

α運動ニューロン「やべ、やりすぎたwww」



大体こういうイメージみたいです。(適当すぎたかw)

研究では、疲労時の反射の異常(Ia線維の活動活発化とIb線維の活動低下)がエビデンスとして出ているそうです。

また記事には、神経説では説明がつくけど電解質不足説では説明できない問題がいくつか挙げられています。例えば「どうして脚の特定の筋肉が攣りやすいのか」。確かに…。

その他原因色々・・・ロー氏の解説

ロー氏は理学療法士の博士号を持つ元体操選手。彼の記事によると、痙攣は以下の様な原因で起こるそうです。

  • 衝撃や怪我
  • 痙攣/細胞ダメージ/循環機能低下 → 血流の低下 → 該当部分の酸素不足 → 代謝機能低下 → ATP不足など → 痙攣が続くことに。
  • 運動ニューロンの機能が適切に動いていない/逆にアクティブすぎる。(※先ほどの神経説ですね)
  • 筋肉の使いすぎ
  • 栄養の摂り過ぎ/不足により、電解質のバランスが崩れることによって(※運動中の発汗による電解質の不足が痙攣を起こすわけではないとのこと)

その他にも、重要度は低いですが、
  • 可動範囲の狭さ。体が固い人はたいてい筋肉が張っていて、血流が悪く、上の2番目のシナリオと同様のことが起きる。
なお、記事では乳酸は痙攣とは関係ないとしています。「血中乳酸濃度との相関は見られるかもしれませんが、乳酸が痙攣を起こすのではないのです」だそうです。

痙攣した後の対処

痙攣が起きた時の対処法としては、タッカー氏の先ほどの記事では、「一番効果的な対処方法はストレッチだ」「20秒ほどのストレッチでα運動ニューロンの活動低下がみられた(つまり痙攣が収まる方向へ)」と書いています。

じてトレの記事では、神経説の前提のもと、対策として「ピクルスジュース」「芍薬甘草湯」「疲労抜き」が紹介されています。
2010年のブリガムヤング大学の研究では、60mlのピクルスジュースを飲むことで、筋肉の痙攣が45%速く、平均で約85秒以内に収まるという興味深い研究結果が出ている。
(引用元:じてトレ - 足つりの予防方法や対処方法に関する情報

元論文はこれ。酸(酢酸)が鍵だとしたら、レモンジュースや梅干しでも効くのかな・・・?

まとめ

というわけで、いろいろな仮説が出ているようですが、完璧な理論はまだないとはいうものの、神経説が有力な印象を受けました。

確かに、マラソンに限って毎回攣っている自分の体験とも合います。エリーマラソンなんて、走る直前に塩をつまんだのに、そしてコンプレッション・ソックスも試したのに、攣りましたし。ただ、攣った後はストレッチは特にしなかったんですが、エイド毎にゲータレードを2杯飲んでいたおかげで走り続けられた気がしないでもありません。まあ気のせいかもしれませんが(笑)


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8 件のコメント:

  1. こんばんは。前に記事にされた時から、この問題興味があったので記事にしてくださってうれしいです(´・∀・)ノ
    今のところ、「これをすれば防げる‼」みたいな決定的なものはまだわからないのですね…。レース中に足が攣ってしまうのは、精神的にもかなりきついでしょうね。絶対足が攣らない秘密の方法を教えて欲しいのですが…(笑)

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    1. おお、あゆさんも攣り仲間ですか
      ・゚・(つД`)人(´Д⊂)・゚・。ナカーマ

      どうも疲労が怪しいみたいなんで、
      絶対攣らない秘密の方法は
      疲れないように走ることかと( ー`дー´)キリッ

      ↑ムリですね・・・w

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  2. ちゃらら2013/11/22 20:41

    先々週のハーフでえらい目に遭ったので(笑)、大変参考になりました!
    電解質サプリが効いた!とかいうのはプラシーボ効果なんでしょうかね。面白いです。

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    1. ここにも攣り仲間が!
      ・゚・(つД`)人(´Д⊂)・゚・。ナカーマ

      プラシーボ効果かもしれませんが、
      電解質もどっかで疲労とリンクしてれば間接的に
      効くのかもしれないですね。
      不足じゃなくてバランスが崩れると攣る説もありますし・・・。

      あと水だけ飲んでても低ナトリウム血症/水中毒のリスク
      があるので、摂って損はないと思いますよ(゚∀゚)
      私も次回レース用に一応サプリ買う予定です!

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  3. あっ、私も攣り仲間に入れて下さい(笑)9月に痙攣でDNFしましたんで。
    FBでランナー仲間にSaltstickの効果のアンケートをとったのですが、半分以上が何らかの効果あり、2割の人が数分以内に驚くほどの効果があったと答えてました。まあ、思い込みも効き目のうちと言う事ですかねw 
    ちなみに、私はSaltstickなど摂っても何も感じませんでした。でも、しっかり水分やGUは摂るようにしました。

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    1. DNFされるくらいだと、これはもう立派な攣り仲間ですね
      ・゚・(つД`)人(´Д⊂)・゚・。ナカーマ

      Saltstickのサイトを見てみたら、こんな記述がありました。
      > Salt Science
      > Why do many athletes need electrolyte supplementation?
      > Hyponatremia, a medical condition marked by low blood sodium levels, can lead to nausea, fatigue, ...
      http://www.saltstick.com/products/sscaps/cscience.htm

      電解質不足で低ナトリウム血症になりかけるぐらい不足してる人だとfatigueが起きるので、それが痙攣を起こす・・・という形で間接的に電解質が関係してるのかもしれない・・・とはっと思いました。

      実際に自分の体で試してみたいところでもあります・・・。

      厳密にどうなってるか、スポーツ科学者に解明をさらにすすめて貰いたいですね!

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  4. マサトゥー2014/01/18 7:26

    はじめまして。日本田舎在住のランナーです。
    ガーミンの検索をしててこのサイトにたどり着き、中身の濃い内容に日々勉強させていただいています。

    自分も過去出場した2回のフルで毎回後半ふくらはぎが痙攣してつらい思いをしています。そんな未熟者ランナーですが昨年秋に100kmウルトラマラソンに出ました。一番の懸念事項はふくらはぎの痙攣でしたので塩サプリをまめにとっていましたが、30km過ぎで痙攣してしまい、残り70kmだましだまし走るのはさすがに無理でリタイアも考えました。

    そこでお守り代わりに持って行った食塩を2,3つまみなめると、数分後には痙攣が収まり快調に走ることが出来たのです。その後も10kmおきぐらいに痙攣しましたが都度食塩をつまんで無事走りきることが出来ました。ゴールまでに大さじ1杯以上の食塩を食べたことになります。

    春のフルマラソンでは食塩持参でサブ3狙いたいと思います。

    私の経験談が何かの参考になればと思い投稿させていただきました。

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    1. はじめまして。

      痙攣してからの残り70kmはかなり大変なことだったと察します…。
      それでも食塩で完走ですか!
      貴重な体験談を有難うございます。

      仕組みが完全にわからないブラックボックスのような人体のシステムですが、
      何かしらの仕組みに作用して塩分が有効なこともあるのかもしれないですね。

      私の場合はレース直前は効かなかったので、今度マラソンに出る時は
      レース中の攣った直後にもっと多めの量で試してみたいと思います。
      体験談、参考になりました(`・ω・´)ゞ

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