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2014/07/28

才能と努力の不思議な関係:短距離走vs長距離走

なんでも1万時間ほど打ち込むとエキスパートになれる、という「1万時間の法則」。最近は本当に当てはまるどうか話題になってますが、陸上競技も練習すればするほど早くなるんでしょうか?それとも生まれ持った素質が命?

そんな疑問にランナーズワールドの「Talent v. Training in Runners」という記事が答えています。

下の図は、生まれつきの素質のある人・ない人が練習でどれだけ伸びるかをわかりやすく表した仮想的なグラフ。100mと10000mでは大きく違いが出ています。

努力と才能

x=0の各点から線が2本出ているのは、人それぞれ、練習での伸び具合が違うから。これをトレーナビリティ(練習に対する適合・適応能力)と言うそうです。

短距離は、才能がない人がいくら頑張っても、才能がある人に勝つのは難しいようです(この論文などでも検証されています)。一方長距離走では、「頑張ってる素人>才能はあるけど練習してない人」となることもあるとか。

例えば、2012ロンドン五輪と2013世界陸上の5000m&10000mで2冠を果たしたモハメド・ファラー選手には双子の兄弟がいます。彼の名はハッサン。ランナーではなく、電気通信エンジニアです。なので極端な話、市民ランナーでも下手したら、DNA的に天才アスリートの素質のあるハッサン・ファラーに長距離走で勝てるのかもしれません。これがボルトの兄弟と100m対決とかなると、そう簡単な話ではないはず。

野口みずき選手の「走った距離は裏切らない」という言葉がありますが、よく考えてみると、距離云々はともかく、努力は報われるという点ではすごく本質を捉えた名言ですね!

練習すればするほど伸びるとは、長距離ランニングやっていて良かったです!
※最近ほとんど走れてないけど・・・





余談ですが、仕事ができるできないは、才能と努力どちらが大きいでしょうか?カーネギーメロン大学のビジネススクールの教授がいろいろな会社のエース級社員を調べ、その仕事ぶりや経歴を紹介している本があるのですが、その本によれば「Stars are made, not born」だそうです。MBAの教科書にもなったりしてますが、堅苦しくない普通の読み物なので、英語でビジネス系の本を読んでみたいな、という方にはおすすめの一冊です。


How to Be a Star at Work: 9 Breakthrough Strategies You Need to Succeed



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2014/06/02

ACSM2014から最新ランニング研究15本

というわけで、先週の米国スポーツ医学会の年次会議で発表されたてほやほやの研究から、ランニング関連の気になるものを探してみました。




3500件(!)もある発表から検索ツールでランニングに関係してそうなのを絞り込んでアブストラクトをざっと流し読みしただけなので、間違っていたりしたらごめんなさい。アブストラクト全文がプログラムから読めるので、発表番号を手がかりに探してください。あと、他にも面白そうなのがあれば教えて下さい。


※RE=ランニングエコノミー(走りの経済性、つまり燃費のようなもの)。


ブログ内関連記事:
・ 「スニーカー走歴5年のランナーが初めてターサーで走った結果」
・ はじめてのレースシューズ!【番外編:試着して驚いたシューズ】・・・日本で製造中止になり、アメリカで独自の進化を遂げたエリクサー7が登場

なるほど、そうするとトランジションで起きる変化は、ミニマリスト以外では使わないような鍛えにくい筋肉が鍛えられることになるのかな?

ブログ内関連記事:
・米ビブラムが1足最大$94の返金手続き開始
・裸足系vsクッションたっぷりシューズ、フォームに違いは出るか?


そういえば昨年のACSM2013と比べるとベアフット・ミニマリズム系の発表件数は明らかに減ってます。

REは1kmを走るのに必要な酸素の量 [ml/kg/km]を表します。ケニア人エリートランナーで190あたりだそうですが、中には150ぐらいの人もいるそうで、個人差大きいですね。VO2max [ml/kg/min]はここまでばらつかないはず。

東アフリカ勢が突出して強い理由を探った記事、良い資料があるので書きたいと思いつつ、下書きのまま半年放置中です…。








音楽テンポとジャンルが影響するっていう研究を取り上げた記事が書きかけになったまま半年放置されてるんですが(笑)、そこで私が個人的に感じてるランに合う音楽の条件としても、テンポ(の倍数)とケイデンスが合っている曲というのがあります。Jamiroquai - Virtual Insanity、Aerosmith - Love in an Elevator、Metallica - That Was Just Your Lifeなど。



※あくまで一指標の数値に影響するかです。
ブログ内関連記事:怪我予防のために知っておくべき3つの陥りがちな罠

ブログ内関連記事:データで見る体脂肪率と(ウルトラ)マラソンのタイムの関係

これは自分的にちょっと意外。

ブログ内関連記事:トレッドミルのよくある疑問と答え【ランナーズワールドより】

ブログ内関連記事:50歳以上のすごいランナー



追記:追加で気になったもの


プロテイン

  • 383 - Effects Of Whey, Casein, Or Milk Protein Ingestion On Muscle Protein Synthesis After Endurance Exercise
    • 結論: "It is concluded that milk protein is a ideal protein source that combines the characteristic effects of whey and casein on muscle protein synthesis after endurance exercise."
    • コメント:長距離とプロテインの研究は探してもなかなか見つからないので、これは超貴重!ただしプロテイン商品を作っている明治の研究者の発表という点は差し引いて考える必要あり。
  • 380 - Anti-fatigue Effects Of Long-term Supplementation With Soy Protein Bar In College Sports Teams
    • 結論: "soy protein bar may have potential as an anti-fatigue supplements."
  • 172 - Cycling Performance is Not Enhanced by Either Whey Protein or L-Alanine Intake During Prolonged Exercise
    • 結論: "the ingestion of PRO or ALA alone did not enhance performance during prolonged cycling."
    • 前か後でなく、競技中にプロテインが役立つかの話
  • 378 - Effect of Whey Protein in Carbohydrate-Electrolyte Solutions On Post-Exercise Rehydration
    • 結論: "During a 4 hour recovery after the 60 min run, the CE solution with medium or high whey protein was more effective for rehydration when compared to the CE or CE with low whey protein."
    • 練習後のプロテインとハイドレーション。
ブログ内関連記事:マラソンレース後のダメージと回復時間

有酸素運動

  • 613 - Aerobic Exercise Improves Cardiovascular Disease Risk, According to Aerobic Center Longitudinal Study Cardiorespiratory Fitness Values
    • 結論: " Improvements in CRF consequent to participation in relatively short-term exercise aerobic substantially reduces CVD risk according to ACLS CRF values."
    • 短期間の有酸素運動でも心肺体力を上げると心血管疾患のリスクが激減する
  • 805 - Aerobic Fitness Enhances Working Memory in Older Adults
    • 結論: "Independent of age, PA and body composition, older adults with higher AF had better working memory performances, in terms of reaction times, compared to those with lower AF"
    • 70歳前後の人は有酸素運動によってワーキングメモリが向上

カフェイン

  • 2746 - Creatine And Caffeine Associated Improve Performance In Runners Without Increase In Total Body Weight.
    • 結論: "creatine supplementation works sinergistically with acute ingestion of caffeine improving running performance."
  • 423 - Does Caffeine Consumption Induce Higher Physical Activity In Sedentary People Undergoing An Exercise Intervention?
    • 結論: "Subjects drinking the equivalent of 2 cups of coffee per day or more (i.e. caffeine intake>1.5 g/wk) were able to increase twice more their level of MVPA for a 1-year period compared to subjects having lower caffeine consumption."
    • 40-65歳の人のカフェイン摂取と運動。N=247、一年がかりの大規模実験。
  • 2748 - The Effect Of Caffeine Supplementation On Olympic Distance Triathletes And Triathlon Performance in South Africa
    • 結論: "Caffeine enhanced triathlon performance, but the field effect was not as pronounced as seen in previous laboratory trials."
    • オリンピック選手(トライスロン)へのカフェイン効果


ハイドレーション

  • 1787 - Deep Ocean Minerals Supplementation Enhances Body Rehydration Status Following Exercise-induced Dehydration
    • 結論: "Our results demonstrated that provision of deep ocean minerals can increase recovery status following intense exercise, suggesting that deep ocean minerals supplementation is effective to promote rehydration status."
    • 海洋深層水とプラセボ(水)の給水効果比較。普通のミネラルウォーターとも比べてない理由がよくわからない。N=8。
  • 1809 - Thirst Perception Tracks Progressive Dehydration During Exercise In The Heat
    • 結論: "When our subjects were not allowed to drink, progressive dehydration had a strong association with thirst perception."
ブログ内関連記事:
・新常識?水分補給は「渇く前」でなく「渇いてから」という理論
・夏に涼しく走る8つのコツ【RW記事より】

プライオメトリックトレーニング

  • 951 - Effects Of Plyometric and Endurance Training On Aerobic and Anaerobic Power.
    • 結論: Plyometric training is an effective means by which to enhance indices of aerobic and anaerobic fitness.
  • 2705 - Improved Economy and Acceleration Profiles Among High School Runners Following Eight Weeks of Plyometric Training
    • 結論:"8 weeks of plyometric training resulted in improved running economy"
オレゴンプロジェクトも、REとスピード強化のためプライオメトリックトレーニングを採用してるそうです。


ブログ内関連記事:モハメド・ファラー所属のオレゴンプロジェクトとは?


高地トレーニング

  • 3395 - The Influence Of Altitude On Aerobic Performance In Peruvian Children And Adolescents
    • 結論: "The advantage of living at high altitude in Peru appears to benefit children’s endurance performance both before and even after controlling for differences in body size, age and maturation."

遺伝

  • 690 - Association Between Actn3 R577x Genotype And Elite Japanese Truck And Field Athlete Status
    • 結論: "ACTN3 R577X genotype was associated with elite Japanese power/sprint athlete status in Asian cohort."
ブログ内関連記事:スポーツと遺伝(スタンフォード大学ゲノム学資料より)



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  • 科学的トレーニングで知っておきたいこと 前編、中編、後編
    研究成果は鵜呑みにしないように注意!
  • なぜ運動前の静的ストレッチは逆効果なのか?
    「長距離走において、ほとんどすべてのスポーツサイエンスの研究結果は競技には役立たずだと思う。」あるサイエンスばりばりのコーチのこの一言、含蓄深いです。本記事に興味があるタイプの人は、この記事で紹介したこのコーチの本も好きなはずです。


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2014/05/31

なぜ運動前の静的ストレッチは逆効果なのか?

大分前に紹介した「賛否両論?ランニングにおける10の俗説」のうち、今回は次の俗説について掘り下げてみたいと思います。


2. ランニングの前にストレッチをすべし
トライアスロンのコーチ、ホリー・ケニー氏の説明によれば、筋肉が温まる前のストレッチは、故障のリスクが高まりますとのこと。

筋肉を伸ばしたまま数十秒静止するいわゆるストレッチは、厳密には静的(スタティック)ストレッチと呼ばれており、運動前に行うことの有害説が近年広まってきています。

この静的ストレッチ有害説、まだ知らなくても無理はありません。プロの方たち(理学療法士、コーチなど)にもまだ完全には広まっていないという、比較的新しい発見なのですから…。


発端

ジェフ・ゴーデットさん(コーチ・著者・フルPR2:22のランナー)の記事によると、Dr. Herbert Popeという研究者のこの論文によって、運動前に静的ストレッチをしてもしなくてもケガの発生とは全く関係ないことがわかったそうです。※すでに故障持ちの方は例外

2000年に発表されたこの研究を発端に、一気に研究が進んだようです。その後、静的ストレッチあるなしで比較をして、実は静的ストレッチをするとかえって垂直跳びや陸上タイムなどのパフォーマンスが落ちる!という研究報告が、いろんな独立した研究から出てきてしまいました。

スポーツ医学団体の見解

NYタイムズやランナーズワールドなどいろいろなところでも取り上げられ、各方面に広まってきています。

ランナーズワールドの「Should I Stretch Before or After My Runs?」(ランの前か後にストレッチをするべきですか?)という記事から紹介すると・・・
専門家によれば、静的ストレッチ(筋肉を伸ばしたまま数十秒静止するストレッチ)は練習前後どちらもすべきではないとされています。練習前は特にで、もしどうしてもやりたいなら練習後にとのこと。このテーマは近年よく論争されていますが、静的ストレッチが怪我を予防したりパフォーマスを向上させるエビデンスはなく、むしろ逆に怪我につながるとのエビデンスあり。
とのこと。

多くの新しい研究結果から、欧州スポーツ医学会のストレッチに関する公式見解では、「最大筋力を測る実験では、静的ストレッチがパフォーマンス低下につながる可能性のある固い証拠が見つかっている」と、スポーツ医学会も従来の考えを見直すに至っています。

※このブログではよく取り上げていますが、スポーツ界ではエビデンス(=根拠・証拠、特に医学生物学系では理論より実験と統計的分析によるもの)もないのに信じられている俗説が意外と多いです。

静的ストレッチあるなしでどれだけパフォーマンスに差が出る?

トップアスリートを多く抱えるナイキオレゴンプロジェクト(記事)の元コーチでスポーツ科学の専門家であるマグネス氏のブログのStretching?? Is it useless?という記事に静的ストレッチをした場合としなかった場合の研究報告が載っていました。
  • 単純運動:ニーエクステンションからベンチプレスまでいろいろなエキササイズで、1RMの6~8%の減少が見られた(※1RM=1回だけならかろうじて反復させられるぐらいの限界の重量)。
  • 垂直跳び:コンスタントに4~5%距離が落ちる報告があります。
  • ジャンプ系テスト:地面接地時間が伸びることがわかっています(ランニングではこれはマイナス)。
  • 40mダッシュ:大学陸上部(LSU)を対象にした実験だと、0.1秒遅くなりました。

これらの研究では、静的ストレッチの静止時間を15秒と30秒で比べても同じような結果で、逆に言うとたった15秒だけ伸ばしただけでマイナス効果が見られたとのこと。やり過ぎた時に悪影響とかではなく、適度に思われる静的ストレッチでも影響が出てしまうんですね。

一方2012年のサーベイ論文によると、もっと長い(60秒以上)静的ストレッチだと悪影響、と少し違う結論を出しています。

なおこの論文は静的ストレッチが筋肉の最大パフォーマンスに及ぼす影響を調べた査読付き論文4559件を調査した力作(そんなにあるのか…!)。その中で統計や実験設定がまともなのだけを選び、傾向を報告しています。グラフを1枚抜き出してみると、多くの独立した研究で同じような傾向、つまり静的ストレッチをすると瞬発力が下がっていることがわかります。

静的ストレッチの効果はマイナス

パワー系は平均して5%もパフォーマンスが下がるんですね…。

静的ストレッチがダメな理由

マグネス氏の同ブログは、ランニングにおける悪影響の原因として、弾性エネルギー(バネ)が失われることを主因としています。
(ストレッチは成績向上につながる?)いいえ、逆に害があります。短距離から長距離まで、多くの研究がパフォーマンスを下げることを裏付けています。どうしてかって?それは神経筋回りで起きる現象が主因なのですが、静的ストレッチにより筋動員低下・筋系の剛性低下が見られ、その結果ランニング中における弾性エネルギーが低下するのです。(訳注:つまり「バネ」が失われるってことですかね。)
The Science of Running - Common Misconceptions in Running


また別記事ではマグネス氏はこう説明します。
バネは固いほうがより多くのエネルギーを蓄え、また放出することができます。昔ならった物理の授業を思い出してください。フックの法則F=-kxによればバネの力Fは変位xとバネ固有の固さkに従います。わかりやすく言えば、硬いバネのほうがより「自由」なエネルギーを持ち、効率がいいということ。長距離走者が走れば走るほど体が硬くなるのには理由があるのです、つまり人間の体は順応するということ。
The Science of Running - Stretching?? Is it useless?

ストレッチして柔らかくなったほうが速くなるというのは、ほとんどのランナーが信じていることだが、実は間違っている・・・との主張です。(学術的な詳細は、こちらの関連文献をご覧ください:論文1、論文2、論文3)


静的ストレッチ有害説の信ぴょう性は高い

同ブログによると、静的ストレッチが有害という仮説は、実験がコントロールしやすいので裏付けの信ぴょう性が高いそうです。
実際の所、長距離走において、ほとんどすべてのスポーツサイエンスの研究結果は競技には役立たずだと思う。モデル上の説明変数を分離しようとするのはいいけれど、本当は変数というは独立したものではないので、全体へ及ぼす影響を無視しているからだ。

だが、ストレッチングの研究は少し違う。結果(パフォーマンス)に対して変数がコントロールしやすいという実験環境にあるからだ。なので、ストレッチをしたときとしていない時で結果がどう変わるかなどが簡単に実験できる。こういった種類の研究はアスリートにとっても役に立つものなのだ。
The Science of Running - Common Misconceptions in Running

「ほとんどすべてのスポーツサイエンスの研究結果は競技には役立たずだと思う」・・・言い切りましたね。現場も知り尽くし、運動生理学の修士まで取り、いろいろな論文を読みあさってブログ紹介しているマグネス氏が言うだけに、痛快です。

他のトピックでも多々あるように、矛盾する結果が報告されることはあるようです(例:十分ウォームアップしてからなら悪影響はなくなるとの論文と、十分ウォームアップしても悪影響があるとする論文)。

ただ、多くの独立した研究結果が「静的ストレッチ→最大筋力低下」合致しているようです。

では静的ストレッチが役に立つのはどういう時?

運動後

(決定的な証拠はないが可能性としては、)もし仮にストレッチによってIGF-1 (インスリン様成長因子)と MGF(メカノ成長因子)の濃度が上昇するなら、運動後の静的ストレッチには効果がある。これらのホルモンを放出させてあげられれば、回復は早くなる上、適応とパフォーマンス向上につながるだろう。
The Science of Running - Stretching?? Is it useless?


故障持ちの人や慢性的な筋肉の緊張がある人

静的ストレッチで可動域が広がっても、それはランニングに本来必要のない箇所の場合が多いです。ただし、ケガや慢性的な筋肉の緊張がある人の場合(例えばふくらはぎなど)、走るのに必要な可動域が普通の人とは変わってくる場合があります。アキレス腱の痛みにつながるぐらいの固いふくらはぎは、ランに必要な足首関節や足底屈の動きを制限してしまうことがあり、そういう人には練習前でも静的ストレッチで可動域を広げることが効果的になります。
The Science of Running - Common Misconceptions in Running

では具体的な症状名はというと、五輪マラソン選手団のコーチなどを務めたマリオ・フライオーリさんの記事によれば、足底筋膜炎やアキレス腱炎にはふくらはぎの静的ストレッチが効果的な模様。故障持ちの方は、主治医にご相談を。


それから、ランニング以外の競技で柔軟性が求められるものや、試合前であっても静的ストレッチによって広げられる可動域によるメリットのある運動では、したほうがいいのかもしれません。これまでの研究からは、一番悪影響が大きいのは瞬発系競技の試合前と推測できます。

練習前は動的ストレッチを

勘違いしてはいけないのは、動的(ダイナミック)ストレッチのほうはむしろ推奨されており、練習前に行うとパフォーマンスが向上することが知られています。

動的ストレッチとは、アメリカスポーツ医学会の出しているACSM's Guidelines for Exercise Testing and Prescriptionによると「ある姿勢から別の姿勢までゆっくり移動し、回数を重ねるごとに徐々に範囲・可動域を広げていくストレッチ法」。

※「ダイナミック」という言葉から連想される激しい動きという意味ではないので注意。

たとえばランニング・タイムズ誌の「練習とレース前はダイナミックストレッチのほうが良い」(英語記事)という記事で紹介されていたメニューは、以下のとおり。

ダイナミックストレッチの例


他にもやり方はYoutubeで探すと動画がいっぱい見つかります。アスリートがやっている動画もあります。


まとめ

「なんとなく」の習慣で運動前に静的ストレッチ(筋肉を伸ばしたまま数十秒静止するタイプのストレッチ)をしている人は多いと思います。

ここ10~15年で急速に研究が進み、運動前の静的ストレッチはパフォーマンスを下げる(特に瞬発系)というエビデンスが多数報告されています。

運動前は静的ストレッチではなく動的ストレッチを、そして静的ストレッチをするなら運動後がいいようです。

※ケガで可動域の問題があるなどの事情がある場合は別。運動種目によっても違うので、詳細は整形外科にご相談を。

おまけ:マグネス氏のThe Science of Running書籍化!

上で引用しまくったマグネス氏のランニングブログ「The Science of Running」ですが、トップアスリートを指導した経験と、最先端の論文からの理論の両方から導き出された知見が惜しげも無く披露されており、大変貴重なリソースです。(ところでマグネス氏がアシスタント・コーチとして働いていたナイキ・オレゴンプロジェクトのゲーレン・ラップ選手が、昨日、事前に予告していたとおり10000mの米国新記録26:44:36を打ち立てました→動画。すごすぎです。この記事でマグネスが語るところによれば、ラップが他の選手と違うのは驚異的な回復力だそうで遺伝、トレーニング両方によるものだろうと語っていました。)

そのマグネス氏のブログが、今年2月に書籍化されていました。The Science of Runningの名の通り、スポーツ科学バリバリの濃い内容で、22章、344ページからなる力作です。アマゾンUSのレビューは、発売3ヶ月ちょっとで40件、5段階中4.5と高評価!日本のアマゾンでもキンドル版と紙の本が買えますが、英語版のみです。


本書には、こんなことが書かれているそうです(裏表紙より)。
  • 疲労とは何か?脳を中心とした疲労についての理論を最先端の研究から紹介
  • なぜ最大酸素摂取量はラボとトラック両方で過大評価・誤解されているのか
  • 心拍「ゾーン」トレーニングは、なぜベストなトレーニングではないのか
  • 練習を個々の生理学的特性に合ったものにカスタマイズする方法
  • 練習プロセスを「刺激」と「適応」という観点からユニークに評価する方法
  • 800mからフルマラソンまでの完全な練習メニュー例
レビューによれば、単なる医学・生物学のゴタクが並べてあるのではなく、すぐランニングに役立つエビデンスベースの知識が書いてある印象。

面白そう・・・(゚A゚;)ゴクリ


マグネス氏の科学ベースのトレーニングに対する考え方はこの記事でも紹介したのですが、彼の作ったあるスライド(下図参照)に集約されていると思います。コーチはアンチサイエンスかサイエンス盲信派の両極端に分かれがちだが、それは両方とも間違っていて、強み・弱みを理解した上で、強くなるための科学知見を有効に利用しようということですね。


【著者プロフィール】
スティーブ・マグネス(Twitter: @stevemagness)
現在ヒューストン大学クロスカントリーチーム、ヘッドコーチ。現在コーチする主な選手はJackie Areson (2013世界陸上出場、4:12-1500、15:12-5k)、Sara Hall、Tommy Schmitz。ナイキ・オレゴンプロジェクトでのアシスタント・コーチ経験、オリンピック選手への指導経験もあり。1マイルでのテキサス州高校記録(4:01.02)を保持する元中長距離選手。ヒューストン大学学士(運動生理学、2008年)。ジョージ・メーソン大学修士(運動生理学、2011年)。


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2014/05/30

米ビブラムが1足最大$94の返金手続き開始~5本指シューズの健康効果誇張による集団訴訟を受け

今月初め、ビブラムUSAが集団訴訟を受け和解案を出していましたが、ついに返金申し立てのサイトがオープンした、とランナーズワールドが報じています。
対象商品
ビブラムファイブフィンガー(VFF)シリーズ35種類
対象者
米国で2009年3月21日~2014年5月27日に対象商品を買った人全員
(※以前はレシート不要と報じられていましたが、要レシートになった模様)
返金額
1足あたり最大$94(同様の和解事例に習うと$20~$50になりそうとのこと)、1人2足まで
申し立て締め切り
2014年9月24日
申し立て用URL
https://www.fivefingerssettlement.com/claim/

ビブラムファイブフィンガーシリーズの典型的な5本指シューズ
▲VFF (Vibram FiveFingers) 5本指シューズ BIKILA LS



集団訴訟の背景


この訴訟は2012年から続くものだそうです。ようやく辿り着いた今回の和解については日本のニュースメディアはほとんど取り上げていないようです。
 手袋のように5本の足の指をそれぞれ分けて履くランニングシューズを製造・販売しているビブラムUSA(株式非公開)が、5本指シューズの健康効果を誇張していたとして提訴されていた件で和解に向けて動き始めた。

 ビブラムは自社製品の購入者に総額375万ドル(約3億8100万円)を支払うと提案したほか、今後は広告の中で健康効果をうたうことをやめると明言した。

 集団訴訟の原告団はマサチューセッツ州の地方裁判所に訴状を提出、その中で、5本指シューズを履けば筋肉が鍛えられてけがを予防できる、という根拠のない宣伝文句のおかげで、ビブラムは1足100ドル近い価格でランニングシューズを販売することができたと主張している。
(2014/5/9) ウォールストリートジャーナル日本版:靴メーカーのビブラムUSA、健康効果訴訟で和解案


なお、日本は対象外・・・?
ビブラムファイブフィンガーズを日本に輸入しているBarefootinc Japanに日本での対応を聞いてみると「日本法人としては米国の訴訟で問題になったような誇張表現についてはもとから取っていないので、特に返金対応などは予定しておりません。今後も、正しい使い方の周知を徹底させていきたいと思います」とのことだった。
(2014/5/13)日刊SPA! - 「ベアフットラン」用靴で米靴メーカー、集団訴訟で返金に



ビブラムのマーケティング


私はVFFを持っていないので感想は書けませんが、売り文句が誇張されすぎてるな~と思うことはあります。

裁判資料(英語PDF)によれば、ビブラム社が科学的根拠に基づかずに広告やウェブサイトで主張していたというVFFの効果は以下のとおり。
(1) 足と下腿の筋肉を強化する
(2) 足首、足、つま先の可動域を広げる
(3) バランスと敏しょう性に重要な神経系を刺激する
(4) 背骨の歪みを取り、姿勢を改善する
(5) 足とカラダが自然に動けるようになる

ビブラムUSAの元CEOはマーケティング戦略がうまい人だったみたいです。
ビブラム社は元々は保守的で、宣伝なども殆どしない会社。いい物は宣伝しなくても売れる。そんな会社なのですが、Vibram USAの代表のTony Postは超マーケティングが出来る人で、戦略をしっかりと立て、BORN TO RUNという世の中のランナーに超強烈な衝撃を与える本とリバーマン博士の裸足で走った方が衝撃が激減するというデータとBIKILAの発売を合わせたのです。
(引用元:吉野剛の裸足ランニング - ビブラムファイブフィンガーズ開発秘話)

↑ブログ村でも有名人、裸足ラン第一人者吉野さんという方のブログ。貴重なビブラム社についての歴史についての日本語記事で、興味深いです。

ちなみに米ビブラム元代表のTony Postですが、独立してシューズ会社を作り、自身の名前を縮めた「Topo」というシューズを作りました。「生まれながら本来持っているバイオメカニクスを増幅する」という謳い文句の、なんと2本指シューズです(笑)。以前書いた記事で触れましたので、ご参考まで:「はじめてのレースシューズ!【日米流行比較編】」


トランジションは必須


ベアフット・ミニマリスト系シューズでケガをしにくい鍵は、「トランジション」(移行)の仕方だと言われています。距離や練習強度を徐々に増やしていったり、間にクッションやヒールトゥドロップが中間レベルのシューズを挟んで慣らすことですね。

コーチ・著者のジェイソン・フィッツジェラルド氏は、VFFへのトランジションは2~3年はかかることもあると言っています(ソース)。でも、聞くところによると、慣らしもせず普通のシューズから一気に切り替えてケガをするパターンは多いようですね。


履き回しの効果


ところで昨年、違うタイプのシューズを履き回したほうが怪我のリスクが減るかもしれない、という論文(英語)が発表されました。種類の違うシューズを履き回したほうが、それぞれ違う種類の筋肉に負荷を分散でき、ケガのリスクが減るようです。

海外の人気ブログ「ラン・ブロガー」の著者でフォーム分析が専門の元大学教授、ラーソン氏もこの考えを以前から持っており、例えばこの記事では、クッション系、レース用、トレイル用、ウルトラミニマル、ミニマルなどを履き回しレパートリーとしてあげています。

もしビブラムが効果的だとしたら、それは違うタイプのシューローテーションの恩恵によるものも大きいのかもしれませんね。私もそういう意味でミニマリスト系に興味あります。

ともかく、履くだけで痩せると謳ったシューズも訴訟になりましたが、履くとけが予防とか、短絡的な売り方はよくないですね!

※今回は短絡的な誇張マーケティングのせいで問題になりましたが、ビブラムが好きな方は何もやめる必要はないと思います。合っている人には合っているんでしょうし、これから長期的な効果が発見されていくかもしれませんし、裸足の感覚で走っていて楽しい・気持ちいい、というならそれをやめる必要はないですからね・・・!


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2014/02/04

持久系の運動をしている人は、抗酸化サプリ摂取に注意

昨日発表されたばかりの気になる論文を ScienceDaily 経由で見つけたので、軽く紹介します。
一言で言うと、ビタミンC、Eのサプリを飲むと、持久力がつくにくくなるという実験結果が出たそうです。


タイトル:Vitamin C and E supplementation hampers cellular adaptation to endurance training in humans: a double-blind randomized controlled trial(ビタミンCとEのサプリ摂取は、ヒトにおける持久トレーニングへの細胞順応を妨げる:無作為化二重盲検プラセボ対照試験)

背景として、最近の研究では抗酸化サプリがエキササイズ効果(例:持久トレーニングにおけるミトコンドリア発生など)を鈍らせるのではないか、ということが指摘されているそうです。まだヒトへの研究結果は少なく、矛盾した結果もあるとのこと。

そこでこの研究では、54人の若者を2つのグループに分け、片方には一日当たりビタミンC 1000mgとビタミンE 235mgのサプリを、もう片方には有効成分のない偽薬を与え、11週間トレーニングしてもらったそうです。

トレーニング内容は週3~4回で、HRmax90%以上の負荷のHIITと、HRmax70-90%程度の30分~60分のランニング。

11週間後に2つのグループを調べたところ、最大酸素摂取量(VO2max)と20mシャトルテスト(往復ダッシュ)の成績に変化は見られなかった。ところが、筋肉を細胞レベルで見てみると、前者のグループでは持久力向上に関連するCOX4(ミトコンドリア内膜局在タンパク質複合体)の増加が妨げられていたことがわかった。他のマーカーからも、抗酸化サプリが細胞のシグナル伝達に影響を及ぼしている可能性が示唆された。

結論として、持久トレーニングをする人は、抗酸化サプリの摂取には気をつけたほうがいいとのこと。


ビタミンC、Eは持久系スポーツに良くない
Figure 1




Figure 5

以上、こちらの論文からでした。

Paulsen G, Cumming K, Holden G, Hallen J, Ronnestad B, Sveen O, Skaug A, Paur I, Bastani N, Ostgaard H, Buer C, Midttun M, Freuchen F, Wiig H, Ulseth E, Garthe I, Blomhoff R, Benestad H and Raastad T. Vitamin C and E supplementation hampers cellular adaptation to endurance training in humans: a double-blind randomized control trial. Journal of Physiology, February 2014 DOI: 10.1113/jphysiol.2013.267419

こういう分野にしては珍しく、上のリンクからウェブで全文公開されてます。


上の論文でキーワードとなってくる、「ミトコンドリア」と持久力の関係については、次の文章がわかりやすいです。
ロード・レースの基礎である持久力に大きく影響するのがミトコンドリアや毛細血管だといわれている。というのも長時間運動する場合には主として糖や脂肪からエネルギーを生み出すことになるが、その役割を担うのがミトコンドリアだからだ。また毛細血管には、血液に含まれる酸素などを筋肉へと送り届ける役割などがある。ミトコンドリアや毛細血管を増やすためのトレーニング方法としては、LSDやLT付近での練習(L2~L4辺り)がよく知られているが、これにはちょっとした注意点がある。

それはミトコンドリアや毛細血管は使った筋繊維でしか増えないという指摘がある点だ。
(じてトレ - LTを上げるのに高強度練を組合せた方が効果的と考えられる理由)


ちなみに「抗酸化サプリ」とは・・・
活性酸素の働きを抑えるベータ・カロテン、ビタミンA・C・E、セレニウム(ミネラルの一種)などは、「抗酸化微量栄養素」とよばれる。これらの栄養素を、食物を通して食べるだけではなく、サプリメント(抗酸化サプリメント)として多量に投与することで、心筋梗塞・脳梗塞・がんの予防などを通して、健康を改善する可能性が考えられてきた。
(引用元:apital - 抗酸化サプリをのみ続けると、かえって寿命を縮める可能性)

上の記事は別の論文紹介ですが、なんとなく健康によさそう、とサプリを飲むのは危険そうです。詳しくはリンクをたどってみてください。



ところで、ちょっと風邪気味だった私が最近飲んでるサプリが、Emergen-C。
成分表を見たらビタミンCが1,000mg入ってます。
用法には1日2回までと書いてあるので、1日計2,000mg((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

箱には「1000mgのビタミンCや抗酸化物質は、あなたの免疫システムをサポートします(※)」と書いてあり、下の方にちっちゃく「※FDAによって評価が裏付けられたわけではありません。この製品はいかなる病気の予防などを意図しているわけではありません。」と書いてありました。薬事法みたいなので書かされてるんでしょうけど、まあちゃんと書いてるだけまともな製品ですね。他のサプリとか見たことないんで他がどうだかわかりませんが。



▲Emergen-C


まだいっぱい残ってるけど、これからは調子が悪い時だけ飲もうかな・・・。



活性酸素を抑えるため、抗酸化サプリを飲むべきか?


2014/2/7追記

「有酸素運動をすると有害な活性酸素が発生して老化したりするので、対策として抗酸化物質を摂るべき」というようなことがよく言われていますが、ランナーは抗酸化サプリを飲むべきなのでしょうか?

その話題に関連した記事をいくつか探しました。取り急ぎ、英語のまま引用します。後日、日本語での詳細をまた追記するかもしれません。


  • (2013/11) Competitor - Should Runners Take Antioxidants During Exercise?「ランナーは練習中に抗酸化物質を摂るべきか?」
    これは良記事。抗酸化サプリを摂るべきかどうかについてですが、「In recent years, exercise scientists have been trying to figure out whether antioxidant supplementation during exercise is an aid or a crutch. This question is not yet settled」と完璧な正解がまだ見つかっていないとした上で、最新の研究結果から、「Consequently, when free radicals are prevented from performing their full actions by antioxidants consumed during a workout, that workout may yield less benefit.」と抗酸化物質の負の側面を紹介。結局「We recommend that an adequate intake of vitamins and minerals through a varied and balanced diet remains the best approach to maintain the optimal antioxidant status in exercising individuals.」とのことで、食事から十分摂るのが推奨となっています。
  • (2009/11) The Science of Running - Antioxidants=Overated「抗酸化物質=過大評価されすぎ」
    オレゴンプロジェクト(米トップ実業団チーム)元コーチのマグネス氏のブログの記事。
  • (2013/7) Runner's World - Sweat Science - Resveratrol Blocks the Benefits of Exercise「レスベラトロールはエキササイズからの恩恵を妨げる」
    ランナーズワールド誌の人気ライター、アレックス・ハッチンソン氏が最新論文を紹介する記事。レスベラトロールは赤ワインなどに含まれるポリフェノールの一種で、抗酸化物質だそうです。
  • (2013/10) Runner's World - Sweat Science - When Exercise and Supplements Don't Mix「エキササイズとサプリメントの相性が悪いとき」
    上と同様レスベラトロールの記事だが、別の研究論文の紹介。
  • (2007/12) Running Times - Fueling the Runner: Anti-Oxidants
    ちょっと古い記事です。管理栄養士でフルベスト2:45のママさんランナーが、当時の最新研究を紹介しています。「Supplements may seem like the easiest way of ensuring that you are meeting your antioxidant needs.  However, there are a few important things to remember in considering supplementation.  First, we already know of over 5,000 different antioxidants.  A runner can be shortchanged by consuming only one or two antioxidants via supplementation.  A diet rich in variety of whole foods containing many antioxidants is encouraged.  Second, excessive amounts of antioxidants can themselves become free radicals (1).  This situation can occur when using supplements.  Finally, supplementation can also offset the benefits of other nutrients and can be toxic when consumed in excess.  」


別に抗酸化サプリ批判の記事だけを意識して集めたわけではないですが、結果的にそういう傾向になりました。

以下個人的な意見ですが、健康の不安を煽るような宣伝文句を見たら、誰がどういう根拠で書いているかを見ると良いと思います。サプリ業者などは、サプリのマイナス面は書きませんので、差し引いて考える必要があると思います。また対極の、極端な自然派志向も、根拠に注意して参考にする必要があると思います。


関連記事(ブログ内)



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2014/01/17

VDOT表もパワーアップ☆「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」第3版発売!

あの本の第3版が、第2版から8年を経て出版されました!
発売前からアマゾンで予約していたのですが、昨日ようやく手元に届きました。

世界で最も著名な陸上コーチの一人である、氏のベストセラーです!


第3版の主な加筆点

  • ランニングにおける10の基本法則
  • 様々なアプローチや練習量による成功事例
  • 週間走行距離だけでなく、ストレス(負荷)の強度による練習記録法
  • レスト(休養)は練習を避けることではなく、練習の一部としての位置づける
  • 男女ごと&さまざまな年齢のランナーの走力を比較できる新VDOT表
  • 初心者からエリートまで幅広い種類のマラソン特化の練習プログラム

おおお!最後2つは特に嬉しい。

男女のタイムの差ってボストン参加資格を参考に、フルマラソン30分差で同じぐらいの実力かな~と思っていましたが、第3版で追加された表にはデータに裏付けられた換算値が載っています。さらに、同様に年代別の相対的な走力比較もできてしまいます。

また、第2版ではハーフとフルマラソンが同じ章でしたが、第3版はフルマラソンの章が独立しており、50ページも割かれています。


第3版目次


  • 第1章:The Ingredients of Success(成功のための要素)
    才能、モチベーション、機会、方向性、そして新規追加の「ランニングの基本法則」
  • 第2章:Training Principles and Running Technique(練習の原理とランニング技術)
    どの練習をするとどういう能力が上がるのかの理論が明確で、特定の練習をする意義がわかります。第2版で読んだときは目からうろこの連続でした。
  • 第3章:Aerobic and Training Profiles(有酸素能力と練習の分析)
    最大酸素摂取量やランニングエコノミーについてなど。男女差が出る原理など。
  • 第4章:Training Runs and Intensities(各練習方法と強度)
    有名なR, I, T, M, Eペースの練習についての説明。
  • 第5章:VDOT Values(VDOT)
    走力換算ができる画期的なVDOTシステムについての詳細。
  • 第6章:Season Training(シーズン内練習計画)
    フェーズごとのトレーニング例など。
  • 第7章:Fitness Training(体力向上練習)
    ウォーキングからストライド走、筋トレまで。
  • 第8章:Altitude Training(高地練習)
    エリート向け高地トレーニング。
  • 第9章:800-Meter Training(800mのための練習)
  • 第10章:1,500 to 2-Mile Training(1500~3200mのための練習)
  • 第11章:5K to 10K Training(5K~10Kのための練習)
  • 第12章:Cross Country Training(クロスカントリーのための練習)
  • 第13章:Half-Marathon Training(ハーフマラソンのための練習)
  • 第14章:Marathon Training(マラソンのための練習)
  • 第15章:Training Breaks and Supplemental Training(休養と補助練習)
    長期休養や怪我から復帰したときの練習、クロストレーニングなど。
全305ページ

とりあえず、ぱっと読みたい人は4、5章だけでも役立つはずです。
もうちょっと時間がある人は1~5章を集中的に読むのがお勧め。


▼左:第2版、右:第3版
「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」第2版と第3版

第3版表紙はJanet Cherobon-Bawcom。


内容を一部紹介


▼新たに追加された性別・年齢別の走力(VDOTレベル)比較の表
VDOTテーブル(性別・年齢別の走力)

私の場合、VDOTは50ちょっとなので、VDOTレベルは10段階中「4」みたいです。

女子のVDOT=44.6と同じぐらいのレベルなんですね。
ハーフマラソンで言うと男女差は10分ちょっとです。

▼年齢も加味したレベル換算表
進化したVDOTテーブル(年齢も加味した走力換算表)

18~38歳男子の私には第2版でも十分だったかもしれませんが、
それ以外の方にはすごく役立つと思います。

18~38歳はひとくくりですが、それ以外は1歳刻みのデータになっており、
範囲はなんと6~58歳!
ランナー人口のほとんどをカバーしていそうですね。

そもそもランニング・フォーミュラって?

そんな方のために、軽く紹介します。
こんな本です。

  • 対象距離:800m~フルマラソン
  • 対象者:初心者からオリンピック選手まで
  • 累計販売数:14万部
  • 著者:ジャック・ダニエルズ。元五輪選手、ランナーズワールド「世界のベストコーチ」選出コーチ、博士(運動生理学)。
  • 某書評:「(ダニエルズ式は)アメリカで最も保守的かつ主流な練習法」


以下引用。
ダニエルズ本がすごいのは、長距離走のパフォーマンスを様々な要素(前エントリーのLT、ランニングエコノミーなど)に分解し、それぞれにあった練習方法を具体的に提案しているところ。つまり、この本があればコーチがいなくても一人で練習できます。
そしてさらに、ある距離のベストタイムがわかると、VDOTという最大酸素摂取量をベースにしたモデルを使って、別の距離のタイムと練習ペースをはじき出せる表を作り出したのも画期的です。


ロンドンオリンピックの陸上競技長距離種目で金メダル2個のモハメド・ファラーや10000m銀メダルのゲーレン・ラップはこの理論に基づいてトレーニングを行っているそうです。アフリカ勢が長く上位を独占してきた長距離種目ですが、この理論が浸透してから、アメリカでは長距離選手が次々と誕生し、成果を上げています。日本でも高岡寿成さん(マラソン日本記録保持者)が紹介し、一気に広まりました。個々のトレーニング内容の解説が具体的で、メニューを多く例示しているので、多くの中長距離選手、市民ランナーのバイブルになるのではないでしょうか。
(引用元:日本語版、アマゾン最も参考になったカスタマーレビュー by 植田さん)



拙ブログ過去記事では、ダニエルズ本で紹介された閾値走とインターバル走についてそれぞれ触れています。また、公式VDOT計算ツールの使い方、ダニエルズさんのコーチングサイトや、練習でVDOTを上げるタイミングについても書きました。


市民ランナーの私の場合、この本をどう練習に取り入れているかというと、

1. レースのベストタイムからVDOTを出す
2. そのVDOTに対応するペースでスピード練(Iペース、Tペース)
3. ジョグもできればEペースになるように走る

と、最近は上のような感じです。
長期的な練習メニューなどはなく行き当たりばったり
なんですが、個々の練習はダニエルズ方式を参考にする感じです。


第3版はまだ英語版のみ


ランニングフォーミュラの日本語版は、まだ第2版の翻訳版しか出ていません。

英語版しかない第3版は、英語の勉強にもなると思いますし、VDOT表だけなら英語力なくても見られます(笑)


ダニエルズさんも序章で書いていますが、個人差があるので万人に対して完璧な理論というのはありません。でも、練習の意味や強度の目安が知りたいランナーには、こういう本はぴったりだと思います。

というわけで、6~58歳で初心者~オリンピックレベルの中長距離のランナー(広いw)の方はぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。




▲日本語版

▲英語第3版

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2013/12/13

スポーツと遺伝(スタンフォード大学ゲノム学資料より)

アメリカに23andMeという遺伝子(SNP)解析を受けられるサービスがあります。専用容器にサンプルを入れて郵送すると、1万円ほどで解析してくれ、結果をウェブで見られるというものなんですが、どうもここ最近、FDAと揉めている模様…。

唾液(だえき)に含まれるDNAから、糖尿病や心臓病など約120の病気のリスクを判定していた遺伝子解析の米最大手「23アンドミー」(本社・カリフォルニア州)は、健康関連の情報提供をやめると発表した。
同社によると、今後も解析キットの販売は続けるが、判定は先祖にかかわる項目など一部に限定する。一方、判定や解釈を加えない生データの提供は続けるという。
(引用元:朝日新聞デジタル - 米遺伝子解析企業、判定情報の提供中止 FDA警告受け)


23andMeはグーグル創業者の奥さんが創業したベンチャーで、業界最大手。私のオフィスメイトも試したみたいで、先日結果が出てきたと、すごく興奮した様子で結果画面を見せてくれましたw 利用者は50万人と、結構流行っていたようです…。


さて、遺伝子といえば、運動能力に関係ある遺伝子もいろいろあるようです。
※ただし、センセーショナルな書かれ方が多いので要注意。

日本語での網羅的な情報はあまりなく、探していて行き着いたのが、スタンフォード大の「ゲノム学とオーダーメイド医療」という授業。主にそこで見つけた「Genetics of Athletic Performance (PDF)」という資料を参考にしながら、まとめてみたいと思います。2012年の学生プロジェクトの発表スライドなんですが、めちゃくちゃよくまとまっています。

環境 vs 遺伝:運動能力を左右する要素


ジャック・ダニエルズ氏は有名な著書のイントロで、長距離競技で成功するための4大要素として、「Inherent Ability」「Motivation」「Opportunity」「Direction」を挙げています。
(参考記事:ダニエルズ氏とランニングフォーミュラ)

一方このスライドでの分類は、パフォーマンスを左右する要素を「環境」「遺伝」の2つに分け、さらに細かい要素に分解しています。


【環境要素】

 Page 3


【遺伝要素】

Page 4


ところで遺伝つながりですが、数週間前、某元陸上選手の「アスリートもまずその体に生まれるかどうかが99%」の炎上発言がツイッターで話題になったそうです。

何%であっても、科学的エビデンスがどれだけあったとしても、社会的影響力のある人がうかつにそういう発言をするもんじゃないと思います。

どういう風に生まれたいかなんて、自分の努力ではコントロールできるものじゃないので。

アメリカだとそういった種類の発言は問題視されます。例を挙げると、ジェームズ・ワトソン氏とローレンス・サマーズ氏。前者はDNAの二重らせん構造でノーベル賞を取ったような人ですが、コールド・スプリング・ハーバー研究所の会長をそういった発言で辞任するはめに。後者も同様に、ハーバード大学の学長を舌禍辞職しています。

ACE

「遺伝」のほうを見ていくと、まず持久力に関係してそうな遺伝子はACE。
  • I/I 型:持久能力 [p=0.009]
  • D/D型:瞬発力 [p=0.004]

ただし、矛盾する結果も多く、8つの研究で運動能力との関係が見られたが、5つの研究では見られなかったそうです。まあ多数決じゃないので数はどうでもいいのですが、完全にはわかってないということですね。

また、オレゴンプロジェクト元コーチのマグネス氏が最近の論文を紹介していました。エリート選手層のケニア人のACE、エチオピア人のACEをそれぞれ調べた研究によると、どうもACE遺伝子のタイプの違いは持久力に関係なさそう、とここでも従来の仮説を覆す結果が出てきています。


その他関連文献
Gayagay et al., 1998、Montgomery et al., 1998、Montgomery et al., 1999、Myerson et al., 1999、Thompson et al., 2007。SNPedia。


ACTN3

スポーツ関連の遺伝子では、ACTN3も有名なようです。

(CG: Wikipedia - Actinin, alpha 3)

まずは日経による説明。
スポーツで注目されている「ACTN3」遺伝子は筋肉構造の特徴を決めると言われている。研究は2003年にさかのぼる。「ACTN3」は、速筋の働きが安定する「R」と、持久的な体の働きが強くなる「X」の2種類の遺伝子で構成される。父母からそれぞれの遺伝子を受け継ぐため、その組み合わせは大きく「RR」(パワー・スプリント系)、「XX」(持久力系)、「RX」(パワー・スプリント/持久力系)という3つのタイプに分類できる。
シドニー大学などは2000年代前半、オーストラリアで50人のオリンピック選手を含む300人以上のトップアスリートを対象に「ACTN3」を調査。スピードスケートや短距離水泳種目の選手に「XXタイプ」が一人もいないことを解明した。さらにスポーツ競技を瞬発力が求められる競技と持久力が重要になる競技に分類して調べたところ、高い持久力を求められる競技の順に、「XXタイプ」の割合が高くなることが分かった。
(引用元:日経新聞 - 筋肉を作る「スポーツ遺伝子」、トレーニングに生かす )


ACTN3と運動能力の研究は、上記事でも触れられている通り、Yang et al., 2003にさかのぼるようです。
  • CC (=RR) 型:瞬発力 (p=0.0001)
  • TT (=XX) 型:持久力 (p=0.148)


ただし、この研究の第二著者が寄稿したあるブログ記事によると、こんな注意事項が…。
ACTN3は運動能力に影響を及ぼすたくさんある要素の中のたった一つである
ACTN3は個々の筋肉のばらつきについてたった2~3%説明するのみです。
ACTN3はあなたの子供がスーパーアスリートになるかどうか教えてくれるわけではありません。
(引用元:Science Blogs - The ACTN3 sports gene test: what can it really tell you?、強調は私による)


しかも、その後矛盾する結果も出ています。あるサーベイによると、RR型と瞬発力の関係があるとした研究が10つ、ないとした研究が2つ。XX型と持久力の関係があるとした研究が1つ、ないとした研究が7つ。

ちなみに、川内優輝選手の速さの秘密を知るべく、彼のACTN3遺伝子を某大学が調べた番組がYoutubeに載っていましたが、意外なことに川内選手はRR型だそうです。その動画ではRR型は回復力に関係していると分析していました。


関連書籍
アマゾンなか見!検索で調べたところ、以下の書籍がACTN3にからめた持久力の話を書いています。



1冊目ニュートンは例の2003年の研究ベースの話、その他2冊も恐らくそうかな?若原氏のは前述ACEも登場。2003年の研究があまりにインパクトがあったのか、書籍や報道では釣り気味の紹介のされ方が多い気がします。


その他関連文献
Roth et al., 2007、9つの関連研究のメタ分析をしたAlfred et al., 2011など。SNPedia。


その他遺伝子もろもろ

・・・すみません、全部紹介する予定でしたが、長くなるのでやめましたw
つづきは上で紹介した資料でどうぞ。
他の遺伝子としては、以下が載っていました。

  • ADRB1、ADRB2、ADRB3
  • COL5A1、COL6A1
  • EDN1
  • MSTN
  • NRF1、NRF2
  • PPARGC1A
  • AMPD1
  • APOE
  • BDKRB2
  • SLC9A9
  • FABP2
  • UCP1
  • : : :


COL5A1についてはコンペティター誌に先月「Study: Better Runners Are … Inflexible?」という記事が載っていました。この遺伝子がランニングエコノミーと関連しているのは先行研究で知られていたそうですが、2011年のある研究はちょっと視点が違います。70人のウルトラランナーを調べたら、COL5A1 BstUI RFLP型の人はランニングエコノミーが良く、かつ体が硬かったそう。実はCOL5A1が体の柔軟性に関係していて、柔軟性がないほうがバネが使えるとかなんとかで、ランニングエコノミーが良いのではないか、という論文です。体の硬い人は部位によっては怪我リスクも増えるみたいですが、柔軟性がないのがかえってランニングにプラスになっている可能性もあるんですね。私は硬いので、本当なら良いニュースです。

MSTN(ミオスタチン)は筋肉量に関係していることで知られているそうです。ネットでよく見る(?)筋肉ムキムキの犬は、この遺伝子変異によるものだそうです。

(写真: Google Image - "bully whippet")


まとめ

遺伝子が個人で気軽に調べられる時代ですが、まだまだわかっていないことも多かったり、解釈が難しいので、振り回されないようにお気をつけください…。(そういう混乱があるからたぶんFDAも検査を規制するんですよね。)

まあランニングに限って言えば、市民ランナーレベルだったら環境要素のほうが大きくて、あんまり関係ない話かもしれないですけどねw

またスライドには、実際はパフォーマンスは複合的要因で決まると書いてあります。そこらへんの話は「科学的トレーニングで知っておきたいこと」でも書きましたので、よければそちらの記事もどうぞ。

またこちらの拙記事もあわせてどうぞ。


関連記事: 23andMe



関連記事: 遺伝子解析と規制


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2013/12/03

目標タイムごとの練習方法と定番ランニング本比較【海外編】

今日はインターバル走。
天気も調子も良く、また飛ばしすぎました…。

ランナーズワールドの記事(英語)によると、「ランニング・バイブル」のリディア-ド式の期分けだとスタミナのベースを十分作ってから最後の仕上げにスピード練を増やすけど、「ランニング・フォーミュラ」のダニエルズ式は逆にスタミナベースを作る期間が短く、スピード練の割合が多いので、オーバートレーニングに気をつけたほうがいいとか。

その著者はオーバートレーニング症候群に苦しんだアスリートで、高校より大学のほうが練習量を増やしてるのに、タイムは落ちる一方だったそうです。で、オーバートレーニングが原因だとわかり、対策をしたところ5Kで17分台だったのが15:40になったとか。

でも私の場合、期分けは適当、練習計画もきまぐれでそんなにきっちりダニエルズ式でできているわけではないので、そこまで心配しなくてもいいのかな?
でも怪我は避けたいので、反省反省…。


世の中にランニング練習法はいろいろありますが、主要な方法をいくつか比較した濃いサイトがあったので、一部ご紹介します。フルマラソンの目標タイムごとに、各方法の適切さを5段階評価しています。


練習方法3:00
以下
3:00
~
4:30
4:30
~
5:30
5:30
以上
ダニエルズ・プランA5530
ダニエルズ・エリート5300
ダニエルズ・完走プラン0110
FIRST5530
ギャロウェイ0255
フィッツィンジャー4300
ハンソン2320
ヒグドン2320
ワイツ0220
(引用元:fellrnr.com - A Comparison of Marathon Training Plans)

この中だと、ダニエルズ式、FIRSTはスピード練の割合が多いそうです。対極はゆっくり走るギャロウェイ、ワイツ。

サブ3市民ランナーの方が個人サイトで主観評価した表なので、精度はわかりませんが、私は参考になりました。

各方法の細かい点も捕捉しておきます。ちなみに元サイトにはいい点悪い点など事細かく書いてあります。
  • ダニエルズ方式の詳細は、ジャック・ダニエルズ氏の名著「ランニング・フォーミュラ」(日本語版あり)にて。市民ランナーからサブテン・アスリートまで走力に応じて細かくペース設定できる点、マラソン以外の中長距離にも対応している点などが特徴。最初に紹介した記事には、ダニエルズ式はアメリカで最も保守的かつ主流な練習法だ、とありました。拙記事「ジャック・ダニエルズ氏とランニングフォーミュラとVDOTについての話」も参考にどうぞ。
  • FIRSTはランナーズワールドの出している「Run Less, Run Faster」という本に書かれている練習方法で、ダニエルズ方式をベースに発展させたものだそうです。週3ポイント練(ロング走、テンポ走、インターバル)に週2のクロストレーニングを組み合わせるとか。
  • ギャロウェイ方式はジェフ・ギャロウェイ氏が著書「Marathon: You can do it!」などで提唱。怪我しないようにゆっくり走るのが特徴で、故障歴のある人にも良いとか。ピッツバーグの地元ランニングクラブでもギャロウェイペースのグループがいるので、アメリカではわりとポピュラーかも。著者サイトによると、著書多数で計70万部売れているそうです。拙記事「週3ポイント練メソッド最強説(?)」でも取り上げていますので、よろしければご参照を。
  • フィッツィンジャーはピート・フィッツィンジャー氏とスコット・ダグラス氏の共著「アドバンスト・マラソントレーニング」で、日本でもおなじみ。さらに上を目指す市民ランナー~プロ選手、エビデンス重視の人に向いている本のようです。ちなみにフィッツ氏はフル自己ベスト2:11:43の元五輪選手。ランニング・タイムズのシニアライターも過去に務めており記事多数。当ブログでも2回ほどリンク紹介させていただきました。
  • ハンソン方式はケビン・ハンソン氏による方法。ロング走は16マイル(26km)まで、というルールで練習するのが特徴だとか。詳細はウェブサイトにて(英語)。
  • ヒグドン方式はハル・ ヒグドン氏の著書「Marathon: Ultimate Training Guide」に詳しいが、著者サイトでも一部無料公開されています(英語)。ランナーズワールドでの執筆歴が歴代最長の方だとか。伝統的な練習方法、とあります。
  • ワイツ方式は、元女子フル世界記録保持者、NYCマラソン9回制覇のグレテ・ワイツ氏の「Run your first marathon」によるもの。初マラソンの人向けのシンプルな練習内容だそうです。

私はまだランニング関係の本はダニエルズ本しか持っていません。「Run Less, Run Faster」は表紙だけ広告で見たことがある程度でしたが、かなり気になりました。次に買うならこれかな!?
あとハンソン、ヒグドン、ワイツは寡聞にして知りませんでした。

トレーニング方法に詳しい方、表の数字は感覚とマッチしてますか?
ダニエルズよりフィッツ推しだ( ー`дー´)キリッ、って人はいるかもしれませんね?
eA式とか金哲彦さんの本とか、日本の本/練習方法の比較・評価もどこかにあれば教えて下さいm(__)m。


ちなみに、著者さんの本棚。壮観ですw
ランニングの名著一覧
(写真:fellrnr.com - A Comparison of Marathon Training Plans)

一番左のノックス氏の「Lore of Running」…1000ページ近くあるらしいですが、すごい分厚いですねw
これも名著と聞きます。amazonでなか見!検索してみたら、こんな感じの本でした。

ランナーのバイブル:ノックス「Lore of Running」
※ランニング本です

筋肉の細胞レベルの解説から始まるようですw
生物の教科書かと思いましたw

日本語版は「ランニング事典」という名前で、600ページぐらいだとか。

(ノックス氏に興味がある方は、別の著書Waterloggedについての記事や、セントラルガバナーモデルについての記事も、よければぜひ。)

追記:科学エビデンスに基づいたランニング本を探してる方は、オリンピック級選手を育てるナイキオレゴンプロジェクトの元コーチが2014年に書いた「The Science of Running」がおすすめ。詳しくは「なぜ運動前の静的ストレッチは逆効果なのか?」を御覧ください。


【本日の練習内容】

ひさびさに暖かく、トラックの雪も消えていました。
でもまた急にマイナスになったりするんですけどね(TдT)

VDOTを +1 したので、3:45/kmだったIペースは今回から3:41/kmに。
5 x 1000m @ 3:41/km w/ 3-4分レストジョグの予定が、実際は・・・

3:40 - 3:40 - 3:38 - 3:37 - 3:36 (レスト3:40ぐらい)

ひさびさに天気がいいからって、ちょっと飛ばしすぎ?(; ・`д・´)
まあこのぐらいなら許容範囲かな?

オーバートレーニングには気をつけます。。。

|彡サッ


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2013/11/28

新常識?水分補給は「渇く前」でなく「渇いてから」という理論

賛否両論?ランニングにおける10の俗説という記事には、「給水エイドには全て立ち寄ること」、つまり「水をできるだけ飲め」というのは俗説だという話がありました。

7. 給水エイドには全て立ち寄ること
スポーツ医のルイス・マハラム先生によれば、「ノドが渇いてると感じた時には、すでに脱水状態で手遅れであるというのは俗説」「ノドが渇いたら飲めばいい、そうすれば過剰なハイドレーションを防げるし、お腹のトラブルが起きる可能性を減らせる」

詳細を調べてみると、「渇いたら飲む(Drink to Thirst)」というアドバイスの多くがティム・ノックス博士のWaterloggedという本を参照しているので、今回はその本に書かれている「渇いたら飲む」理論を紹介したいと思います。

「渇いたら飲む」理論とは

読んで字のごとくですが、喉が渇いてから水分補給するのがベストだよ、という理論です。ノックス氏が昨年出した著書「Waterlogged: The Serious Problem of Overhydration in Endurance Sports」(水浸し:持久系スポーツにおける水分過剰摂取の深刻な問題)で提唱しています。



ノックス氏は痙攣の記事やセントラル・ガバナー理論の記事でも紹介した、南アフリカの運動生理学者。アマゾンの著者紹介によると、複数のスポーツ科学の論文誌編集委員を務めたベテラン研究者で、70以上のフル・ウルトラマラソンを完走したランナーでもあるそうです。

Waterloggedは数十年の大量の研究結果を元に書かれた本で、これだけのシンプルなメッセージ+αを伝えるのに450ページを費やしています(最初の原稿は1000ページ以上あったそうですw)。

長ければいいっていうわけではないですが、それだけ裏付けがある、ということなんでしょうね。そんな濃い内容を全部は紹介できない(※私はこの本持ってないです)ので、今回はノックス氏がランニング・タイムズに寄稿した記事(これは読みましたが長かったw)から要点だけかいつまんで紹介したいと思います。

「渇き」は最も信頼できる兆候

ノックス氏によれば、脱水で起こる唯一の症状は「喉の渇き」だとのこと。
体内の水分量が減ると、その分血液の成分(特にナトリウム)濃度が上がります。それによる浸透圧の変化を脳が検知することで、喉の渇きという症状が起きます。
(引用元:Running Times - Drink to Thirst)

だから、脱水を適切に防ぐには、信頼できる手がかりである「喉の渇き」を頼りに水分補給をしよう、とのことのようです。

記事にはもっと細かく、生理学的に○○ホルモンが△△に作用して喉が渇く、というように説明がしてありました。では理論はいいとして、実際はどうかというと、こんな研究が。
米陸軍省環境医学研究所の科学者は、異なる脱水レベルのグループ(体重の0%、3%、5%、7%の脱水)を作り、ノドの渇き、疲労、衰弱具合、立ちくらみ、めまいなどの兆候がそれぞれどれだけ脱水レベルと関連しているか調べました。脱水レベルとこれら各要素は相関が見られたが、一番強い兆候を表したのが喉の渇きでした。
(引用元:同記事)

喉の渇きは実際にも脱水の兆候をよく表すようですね。

ただ、昔ながらの説明だと、渇いてからだともう脱水が始まっていて手遅れで、パフォーマンスも落ちることだし、渇く前にどんどん補給しないといけないのでは・・・?と思いますよね。その答えも載っていました。

本当に脱水=パフォーマンス低下なのか?

過去に「水分補給とパフォーマンス」という記事を書いた時、ランス・アームストロング選手(いろんな意味で超有名な自転車選手)の著書より、「体重の4~5%の体液が失われると能力が30%低下する」というような内容に触れました。

これは事実なのでしょうか?

ノックス氏の記事によると、ある年の南アフリカ・アイアンマン(スイム3.8km+自転車180km+フルマラソンという過酷なトライアスロン)では、トップ5人のゴール後の体重を測ったところ、全員に6~8%の体重減が見られたそうです。そして、ニュージーランド・アイアンマンでも同様の傾向が見られたそうです。

仕組みはこういうことみたいです。

まず、走る燃料である脂肪&グリコーゲンの分の重さが失われます。さらには、筋肉/肝臓中にはグリコーゲン:水=1:3の割合で水分子が含まれているので、その分の再チャージはすぐできません(12~36時間かかる)。
この理論だけで、運動中に最低2,000g体重が減ることが説明できます。測定可能な体水分量が変わらないまま、1,000gの水分を失うことがある、という研究結果も。

なるほど…。体重が減るのは発汗だけが原因ではないんですね。

夏に1時間走って発汗で体重が2kg減った場合と、100kmのウルトラマラソンのゴール地点で2kg減っていた場合では大違い、とも言えるでしょうか。

燃料分の体重が2kg減ったとして、体重が減ったからといってそれを補おうと水分を2L摂ったら明らかに飲み過ぎですね。

6~8%の体重減は燃料分よりも減っていそうですが、そのぐらいの脱水ならパフォーマンスは落ちない(軽くなった分で相殺?)ということも推測できます。

※脂肪・グリコーゲンが燃料って何の話?という方は、手前味噌ですが、拙記事「マラソン前のグリコーゲンローディングについて」をぜひ。

※南アフリカ・ニュージーランド人のトライアスロン選手(恐らくでかくてゴツイ)と日本人のマラソンランナー(小柄・細い)だと体格がだいぶ違うので、体水分量の割合も違うかもしれず、上のトライアスロンでの数字がそのまま当てはまるわけではないのでご了承ください。

水分を摂り過ぎると・・・?

体に備わっている優秀なセンサー/アラームである喉の渇きベースではなく、時間や距離ベースで給水をすると、飲み過ぎてしまうリスクがあるとのこと。

飲み過ぎると腹痛リスクや、体が重くなることで不利になりますし、何より低ナトリウム血症/水中毒になると、最悪の場合は生命の危険が。
水中毒(みずちゅうどく、英: water intoxication)とは、過剰の水分摂取によって生じる中毒症状である。
人間の腎臓が持つ最大の利尿速度は毎分16mlであるため、これを超える速度で水分を摂取すると体内の水分過剰で細胞が膨化し、低ナトリウム血症を引き起こす水中毒に陥る。
症状
血液中のナトリウムイオン濃度の低下に伴い以下の症状が生じる。
(略)
100mEq/L - 神経の伝達が阻害され呼吸困難などで死亡
(引用元:ウィキペディア - 水中毒、強調は私による)

水中毒の死亡例

逆に水分を摂らないと・・・?

間違ったメッセージが伝わるといけないので強調したいのですが、提唱されているのは水を飲むのを我慢することではないので、要注意。飲まなきゃいけない、でも渇いたタイミングで飲むのが最適、ということのようです。

例外として、一部選手はあまり飲まない人もいて、高岡寿成さんがフルマラソン男子日本記録を2002年のシカゴマラソンで達成したときは給水なしだったらしいです(ちゃんとしたソースはないけど、ウェブ上にそういう記述がたくさんヒットしました)。

でも普通の人は、暑い日に水を飲まないでマラソンを走ったら、とんでもないことになりますよね。

例えば、ランネットの評価が36点/100点(342人)という低評価だった某大会。運営の不手際で給水切れを起こしたそうで、レポを読むと地獄絵図です。

15km給水を最後にその先給水はなく、25km以降は怖くて歩きました。喉はカラカラ、人がゴロゴロ、倒れているランナーを救護もせず進む自分の不甲斐なさに涙がでました。
救急車のサイレンが鳴りっぱなし、道の端に倒れたり動けない選手が何人もいて、リタイアバスや救護対応が遅れているのを感じた。
道のあちこちで嘔吐してる人、倒れてる人、救急車が何台も走り去り、まさに地獄絵図状態。
側溝水をすすらざるをえなかった屈辱感、倒れる人々を見捨てた罪悪感、高架からの逃げ道もなく、リタイアしても救護される目途がつかない恐怖・・・。ゾンビのようにうつろな目で歩く群れが、一人倒れると連鎖的に倒れていく、それも疲れ果ててうずくまるのではなく、意識を失い落ちていく、あと10メートルで陸橋の日陰があるのに、たどりつけず倒れ伏しているのです。あの一滴の水もない23キロ給水点で「次の給水点どこか不明&水の有無も不明」と聞かされてからの、絶望街道死の行軍を味わった仲間のランナーと、特に挫折せざるを得なかった無念のランナーたちのために、どうしてもこの大会の評価は最低点を付けたいのです。
(引用元:ランネット)


私も練習で経験してますが、喉が渇いた時に水がないと、ほんと辛いですよね…。

ノックス氏の記事で紹介されている研究によれば、ゴール時に7~10%ほどの脱水ではただちに影響のある健康リスクはないそうですが、15~20%だと臓器不全のリスクがあると書かれていました。

実際に「渇いたら飲む」でウルトラ完走した人の話

161kmの山岳ウルトラレースで「渇いたら飲む」を実践してみた、というiRunFarの記事を、日本語訳で紹介している良記事を見つけました。まず、こんな冒頭で始まります。
iRunFar.comで今年のWS100で9位の好成績を残したJoe Uhanが、南アフリカのスポーツ生理学の大家、Tim Noakes博士の近著、”Waterlogged”に書かれている補給の考え方をもとにWS100を走った結果について書いている。 
“Waterlogged”は「飲めるときに飲めるだけ」という水分補給の考え方はドリンクメーカーの宣伝にすぎない、塩分補給は無用、と説いていて、従来の補給の考え方(少なくともアメリカの考え方)を覆すものとして注目されている。
(引用元:DogsorCaravan - ウルトラマラソンでは水分と塩分の補給は最小限で、糖質補給は切れ目なく:”Waterlogged”からの教え)


Joeさんの体験談はというと、
Joeが今年のWS100を走ってみたところ、前半で体が重くなってペースがダウン。経験上いつも摂っていた塩分補給のサプリ(S!Caps)を摂ったところ調子が戻ってよい結果をおさめることができたとのこと。
これについてNoakes教授は、「塩分の摂取が脳に刺激を与えて良い結果につながったといえるかもしれないが、塩分を取らなかったからパフォーマンスが落ちるとはいえない」とのこと。
(引用元:DogsorCaravanの同記事)

う~ん、もっといろいろな人の体験談が知りたいですね。特にフルとウルトラで違いがあるのか、なども知りたいところ。

あと気になったノックス氏の説明:
・ランニングによって体温が上昇する程度は、運動量、具体的には走るスピードによる。100マイルのウルトラマラソンではスピードはさほど出さないのだから、特段体温上昇を気にする必要はない。
(引用元:DogsorCaravanの同記事)

ということは、距離によっては多めに飲んだほうがいいのかな…?


面白い記事でしかも日本語なので、興味のある方はぜひ上のリンクから全文を読んでみてください。

まとめ

ポイントをまとめると、こんな感じかと。
  • 水分補給タイミングは、「渇いてから飲む」がベスト
    • 渇きセンサーは優秀
    • 距離/時間ごとに飲むのは、飲み過ぎるリスク
    • 飲み過ぎも、飲まなすぎも、両方まずい
  • 持久競技での脱水とパフォーマンスの関係には誤解がある
    • 体重減は発汗だけではないので、減った分だけ水分補給してたら飲み過ぎに
    • 少々の脱水は実はそこまで悪影響がない

もっと知りたい方は「Drink to thirst」「Noakes Waterlogged」などのキーワードでググるといろいろ情報が出てきますが、まだ日本語の記事はほとんどないようです。

感想

実は最初は眉唾セオリーかと思ってました。「ノドが渇いてると感じたら手遅れ」「走った後は走る前と同じぐらいの体重になるぐらい水分を補給しろ」「脱水はとにかく避けなくてはいけないし、パフォーマンス低下にも繋がる」などと、今まで良く目にしていましたので・・・。

でも説明を読んでみると、今は少し説得されてきました(まだ少し引っかかるところもありますがw)。

「渇いたら飲む」を実際に試している方がいたら、どういう結果になったか教えてくださいm(__)m


関連記事(ブログ内)


関連記事(外部サイト)

  • iRunFar - Waterlogged – A Dogma-Shattering Book?
    本文中で紹介した記事のパート1で、Waterlogged本の解説(英語のみ)。この本には「渇いたら飲む」以外にも、「水分補給は熱中症予防にはならない」「ウルトラでは塩分補給の必要はない」「尿の頻度・色はハイドレーションや腎臓機能とは関係ない」などの従来の常識を覆すような主張があるのですが、本記事ではそういった点には触れませんでした。

タイプ別ハイドレーション


▲揺れにくい型

▲リュック型

▲手持ち型

▲腰巻き型
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2013/11/23

VDOT++…練習強度をいつ上げるか?○○でしょ!

最近は、スピード練を目標週1で入れています。

ダニエルズ式計算ツールによると、5KレースPRから算出したVDOTは52.7で、閾値走は4:05/km、インターバルは3:45/kmの設定ペースが最適のようです。

ダニエルズ式計算ツールで最大酸素摂取量ベースの練習メニューを立てる

しかし、レースを控えてなくて練習がこなせている人は4~6週でVDOT+1相当の負荷アップが丁度いいとダニエルズ本にありました。

じゃあ練習強度をいつ上げるか?・・・今でしょ!というわけで、そろそろVDOT53.7の負荷に上げてみようかと。

閾値走@4:01/kmは大丈夫そう。インターバル@3:41/kmは・・・やってみないとわからないですが、つらそうです(笑)


今月のスピード練

スピード練の時は400mトラックで、基本ターサージールです。
ガーミン画面は「ラップタイム」「ラップ距離」「現在のペース」「ラップペース」に落ち着きました。

■インターバル走1
5 x 1000m
3:45 - 3:44 - 3:44 - 3:44 - 3:34

最後200mはダッシュ。
レストのジョグは5:00/km~6:30/km、平均3分でした。
2℃と寒かったですが、上は半袖+長袖で。


■閾値走
5000m
4:05 - 4:04 - 4:08 - 4:05 - 4:00

気温は7℃。
この時はたしかターサーじゃなくてスニーカーだったような。。。
(関連記事:「虎走・5K・TTするで」はじめてのレースシューズ!)


■インターバル走2
5 x 1000m
3:45 - 3:45 - 3:47 - 3:42 - 3:33

ラストは全体的に速めで。
レストのジョグは5:00/km~6:00/km、平均3:10。

また2℃と寒かったです┐(´∀`)┌ヤレヤレ
↑別にこれぐらいの気温なら走りやすいんでいいんですけどねw

ちなみに明日の最高気温はマイナス3度・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

関連記事(ブログ内)


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2013/11/22

ランニングで脚が痙攣する仕組みと対処方法

ブログ背景を変えてみました。
クリスマスな雰囲気にしたつもりが、ただ緑なだけのブログに・・・w


さて、以前紹介した「賛否両論?ランニングにおける10の俗説」のうち、まずは一番自分に身近なテーマ、運動中の痙攣(足のつり、こむら返り)について書いてみたいと思います。

8. カリウムは痙攣防止になる
前出マルチネス氏は、最近の研究ではカリウム摂取と痙攣の相関関係は見られていないとしています。 「ティム・ノックス氏は痙攣は筋肉の疲労からくるものとしています」「痙攣とより関係あるのは、練習不足または脱水なのです」

元記事はカリウムが痙攣防止になるのが俗説としていますが、さてどうなんでしょう・・・?

結論から書くと、いろいろな記事を調べた結果、「痙攣の厳密な仕組みは解明されていない」「電解質(ナトリウム、塩化物、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどのイオン)不足が痙攣を起こすという、広く信じられている説は疑わしい」というような内容の記事が多かったです。そして、有力そうな仮説もあるようです。

以下、詳細です。

痙攣の俗説

文献レビュー by 彦井氏

彦井浩孝氏(オレゴン州立大PhD・運動生理学・栄養学)が関連研究をまとめた記事から、引用します。
競技中に EAMC を起こしたランナーでも血清中の電解質濃度は正常な範囲内にあり、しかも脱水との因果関係も示されていません(Schwellnus ら、2004 年)。最近の研究では、電解質不足や脱水が必ずしも EAMC の原因ではないと考えられています(Miller ら、2010 年、Schwellnus、2009 年)。
(引用元:日本フィットネス協会HEALTH-NETWORK August, 2010, p41 [PDF])

※「EAMC (Exercise-Associated Muscle Cramps)」は、運動中に脚を攣ること。「運動誘発性筋けいれん」。

電解質不足・脱水は痙攣の直接の原因ではなさそうですね。

だからといって、電解質不足、脱水で走っても良いというわけではないので要注意。低ナトリウム血症や脱水症状になったら大変です。また、後述しますが、要因として100%除外できるわけでもないようです。

「俗説は消えない」・・・フリール氏

以前にもちらっと紹介した、長距離自転車コーチのジョー・フリール氏のブログは、論文がたくさん登場するかなり濃いブログです。痙攣については、こんなことを書かれています。
筋肉の痙攣が起きる原因は誰も知りません。通説では電解質が犯人ということになっているが、それは限りなく疑わしいです。スポーツ・栄養産業は、この俗説に乗っかって商売をしています。
過去25年の間に様々な研究が電解質と脱水は痙攣の原因ではないとしているが、この俗説は消える気配を見せません。
(引用元:Joe Friel - Muscle Cramps and Mythology)

25年間のいろいろな論文のリンクは[1, 2, 3, 4, 5, 6]です。

痙攣の最新説については、タッカー氏のブログ(後述)を見てください、とのこと。

なぜ俗説が生まれたか?

なぜ電解質が痙攣と関連付けられたのか、フリール氏は経緯について解説しています。
20世紀のはじめ、港湾労働者は荷物の積み下ろしの最中、よく痙攣を起こすことで知られていました。そこで当時の科学者が痙攣を起こしていた者の汗を調べたら塩化物イオンCl-が見つかりました。痙攣を起こしていない者の汗の成分を調べもせず、短絡的に「痙攣と電解質不足(と湿度と湿度)は関連がある」との結論が作られました。こうしてこの俗説は誕生したのです。
(引用元:Joe Friel - Muscle Cramps and Mythology)

一旦広く信じられてしまうと、なかなか難しいんでしょうね…。

痙攣の原因

「神経説」・・・タッカー氏の解説

タッカー氏は、この記事で触れた「セントラル・ガバナー理論」提唱のティム・ノックス博士のもとでPhDを取った現役の運動生理学者。専門分野は疲労。

彼はサイエンス・オブ・スポーツというブログで濃い情報を発信しています。痙攣についても何本か書いています。

その中の一つの記事では、痙攣は電解質不足や脱水では説明できない、けど100%除外することもできない、としています。

そして、同記事では疲労による痙攣の仕組みの有力そうな説を細かく解説してるのですが、第一線の研究者が書いてるだけに、そのまま訳しても恐らくちんぷんかん…。

先ほどの彦井氏の解説の続きのほうがわかりやすいと思いますので、まずはこちらをどうぞ。
一方で、EAMC が起こる前兆として、筋の放電量が高まっていることが指摘されています(Schwellnus ら、1997 年、Sulzer ら、2005 年)。この筋放電量の増加は筋疲労や中枢疲労による筋神経系の過剰な活動の結果として起こっていると考えられており、筋疲労や中枢疲労のある状態では、無理な姿勢や急な筋力発揮によって筋神経系へ急激な刺激を与えやすくなります。これが、過剰な反射を引き起こし、過度の収縮、つまり EAMC をもたらすと考えられます(Miller ら、2010 年)。また、興奮や緊張、不安などの精神状態や力みが、中枢から筋肉へ過度の刺激を発生させ、筋神経系に過剰な反射を引き起こす可能性もあるようです。


・・・もっとわかりやすい説明ですか?

わかりました、私が調べながら解釈した内容を書いてみます。

(一応他のソースも調べましたが、細かいとこ間違ってたらすみません!)



■ 通常時1

α運動ニューロン「ども、筋肉の収縮をコントロールしてるものです」

筋紡錘「自分は筋肉のセンサー(^O^)」
筋紡錘「伸びすぎると発動する安全装置みたいなもんっす」
筋紡錘「脳を通さず反射的に体に信号送れるっす」

筋紡錘「お、さっそく筋肉が伸びてるっ!」
筋紡錘「このままじゃ筋肉切れるのでは? つД`)・゚・。・゚゚」
筋紡錘「筋肉収縮命令ファイアー!(*°∀°)=3」

α運動ニューロン「確かに、Ia線維経由で脊椎より命令承りました」
α運動ニューロン「筋肉よ、収縮するが良い!」



■ 通常時2

ゴルジ腱器官「自分は腱についているセンサーっす」

ゴルジ腱器官「おや、腱に負荷かかってる・・・」
ゴルジ腱器官「筋肉には収縮やめてもらわないと つД`)・゚・。・゚゚」
ゴルジ腱器官「筋肉リラックス命令ファイアー!(*°∀°)=3」

α運動ニューロン「確かに、Ib線維経由で脊椎より命令承りました」
α運動ニューロン「筋肉よ、リラックスするが良い!」



■ レースでの疲労時

筋紡錘「(;´Д`)ハァハァ疲れて混乱するー・・・」
筋紡錘「収縮命令いっぱいファイアー!!!ヽ(`Д´)ノウワァァァン!!」

ゴルジ腱器官「(;´Д`)ハァハァ疲れて混乱するー・・・」
ゴルジ腱器官「リラックス命令減らします!収縮の方向でヽ(`Д´)ノウワァァァン!!」

α運動ニューロン「お、なんだ収縮祭りか?!?!」
α運動ニューロン「よし筋肉よ、思う存分収縮するが良い!」

筋肉「痙攣 キタ━━(;゚Д゚)━━!!」

α運動ニューロン「やべ、やりすぎたwww」



大体こういうイメージみたいです。(適当すぎたかw)

研究では、疲労時の反射の異常(Ia線維の活動活発化とIb線維の活動低下)がエビデンスとして出ているそうです。

また記事には、神経説では説明がつくけど電解質不足説では説明できない問題がいくつか挙げられています。例えば「どうして脚の特定の筋肉が攣りやすいのか」。確かに…。

その他原因色々・・・ロー氏の解説

ロー氏は理学療法士の博士号を持つ元体操選手。彼の記事によると、痙攣は以下の様な原因で起こるそうです。

  • 衝撃や怪我
  • 痙攣/細胞ダメージ/循環機能低下 → 血流の低下 → 該当部分の酸素不足 → 代謝機能低下 → ATP不足など → 痙攣が続くことに。
  • 運動ニューロンの機能が適切に動いていない/逆にアクティブすぎる。(※先ほどの神経説ですね)
  • 筋肉の使いすぎ
  • 栄養の摂り過ぎ/不足により、電解質のバランスが崩れることによって(※運動中の発汗による電解質の不足が痙攣を起こすわけではないとのこと)

その他にも、重要度は低いですが、
  • 可動範囲の狭さ。体が固い人はたいてい筋肉が張っていて、血流が悪く、上の2番目のシナリオと同様のことが起きる。
なお、記事では乳酸は痙攣とは関係ないとしています。「血中乳酸濃度との相関は見られるかもしれませんが、乳酸が痙攣を起こすのではないのです」だそうです。

痙攣した後の対処

痙攣が起きた時の対処法としては、タッカー氏の先ほどの記事では、「一番効果的な対処方法はストレッチだ」「20秒ほどのストレッチでα運動ニューロンの活動低下がみられた(つまり痙攣が収まる方向へ)」と書いています。

じてトレの記事では、神経説の前提のもと、対策として「ピクルスジュース」「芍薬甘草湯」「疲労抜き」が紹介されています。
2010年のブリガムヤング大学の研究では、60mlのピクルスジュースを飲むことで、筋肉の痙攣が45%速く、平均で約85秒以内に収まるという興味深い研究結果が出ている。
(引用元:じてトレ - 足つりの予防方法や対処方法に関する情報)

元論文はこれ。酸(酢酸)が鍵だとしたら、レモンジュースや梅干しでも効くのかな・・・?

まとめ

というわけで、いろいろな仮説が出ているようですが、完璧な理論はまだないとはいうものの、神経説が有力な印象を受けました。

確かに、マラソンに限って毎回攣っている自分の体験とも合います。エリーマラソンなんて、走る直前に塩をつまんだのに、そしてコンプレッション・ソックスも試したのに、攣りましたし。ただ、攣った後はストレッチは特にしなかったんですが、エイド毎にゲータレードを2杯飲んでいたおかげで走り続けられた気がしないでもありません。まあ気のせいかもしれませんが(笑)


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