2013/08/16

モハメド・ファラーが世界陸上2冠!練習?シューズ?強さの秘密とは・・・?

スポンサーリンク
2012 ロンドンオリンピックで5000m&10000mの金メダルを獲得した、モハメド・ファラー選手。

本日の世界陸上モスクワ大会5000m決勝(動画)でも優勝し、10000m(動画)に続いての優勝で、またもや2冠達成ですね!

なぜこんなに速いんでしょう。

ラップタイム

IAAF2013、10,000m決勝のファラー選手の1,000mごとのスプリットタイム(PDF)です。

2:50.64 - 2:48.28 - 2:43.39 - 2:43.78 - 2:46.37
2:46.09 - 2:48.13 - 2:45.21 - 2:43.79 - 2:26.03



同じく、5000m決勝のスプリットタイム(PDF)です。

2:48.39 - 2:49.81 - 2:50.01 - 2:36.65 - 2:22.12



ラストスパートが爆発してますねw

5000mの最後の400mは、53.44秒です(笑)
その100mスプリットタイムは、

13.74 - 13.09 - 13.48 - 13.13


10000mの最後の400mは、54.41秒。
うち、最後の100mは12.82秒で走ってます(笑)


瞬発力、精神力・・・ともにタイムだけ見ていても凄まじいものを感じます。


ラップタイムが100m毎に公開されているので、何人かの選手の100mラップをプロットしてみました(下グラフ参照)。

世界陸上2013ラップタイム(男子10000m決勝)

ファラー(1位 27:21.71)、ラップ(4位 27:24.39)、リッツ(10位 27:37.90)、大迫(21位 28:19.50)が後述するオレゴンプロジェクトで練習する選手達です。宇賀地は15位 27:50.79。

途中まではほとんど同じようなペースなんですね!

そしてどうもラスト4分の1(2500m)ぐらいでバラけはじめ、ラスト1000mは先頭がどんどん加速していって、イーブンをキープするだけだと先頭集団に置いて行かれるみたいですね。

トラックで世界に太刀打ちするには、ラストの爆発的ペースアップについていけるようにする、そして、そのためにはスピードもつけたほうがいいのかもしれませんね。

・・・とまあ無責任に言うのは簡単ですが(^_^;)
がんばれ、日本の中長距離選手\(^o^)/

練習環境:ナイキ・オレゴン・プロジェクト


ファラーは東アフリカ勢と思いきや、DNA的にはソマリア出身ですが、育ち(8歳~)・国籍はイギリスなんですね。それで、現在はアメリカはオレゴン州ポートランドにてアルベルト・サラザール氏率いるオレゴンプロジェクトに参加し、トレーニングしているそうです。

<10/20追記>
ここでの練習の話(練習方針や練習メニュー、スプリント・補強運動の重視、最新テクノロジーの積極的導入、硬い地面で走らない方針、走行距離、バイオメカニクス)は長くなりすぎたため、次の記事に中身を移しました。

モハメド・ファラー所属のオレゴンプロジェクトとは?

↑中長距離選手なのに練習で100mを11.03秒で走るとか・・・壮絶です。


フォーム(9/19追記)


イギリステレグラフ紙上でオクスフォード大学のバイオメカニクス研究者が分析した、ファラーのフォームの9個の秘密(英語記事)が面白いです。前述したとおり、渡米しオレゴンプロジェクトでサラザールコーチにより、ロンドンオリンピックの17ヶ月前からフォーム改善に取り組んだそうですが、その具体的な改善点がわかります。
  1. フットストライク:ミッドフット。
  2. 重心に対する接地位置:重心のちょっと前。ヒザを少し曲げ気味で、ヒザ下が垂直。他の選手のようなオーバーストライドでなく効率が良い。(※普通のレベルのランナーだと重心真下がいいとされていますので注意)
  3. 地面接地時間:短い、つまり空中にいる時間が長い。
  4. 体のひねり:ヒップと肩の位置は変わらず、脚は前に出ており、不要なひねり・横方向のブレがない。
  5. リラックス走法:手の開き(パー)、アゴの空け具合、肩の力の入り具合などがリラックスしており、効率的に走れている。
  6. 脚を残すか引き上げるか:地面を蹴った直後、踵をそのまま残すのではなくお尻に引き上げている。これは短距離走者に見られるパターンだとか。(※普通のランナーだとダメとされているフォームの可能性あり)
  7. ケイデンス/ピッチ:高ピッチ数。
  8. 腕の位置:他のランナーに比べ、比較的腕の位置が高く、ヒジが曲がり気味。
  9. 跳ねずに前進:効率的な跳ねないフォーム。

記事内にはフォームの写真もあるので、気になる方はぜひ。また、記事は筋トレもフォーム維持の鍵だとあります。


グレート・ノース・ランでベケレ、ゲブレセラシェ、ファラーの3人が走ってるスローモーション動画もアップされていました(youtube)。上記のフォームが気になる方はぜひ見比べてみてはいかがでしょう。ただし、フォームを参考にするときは慎重に。リッツのようにトップレベルの選手でもフットストライクを変えただけで故障するのですから…。

ファラーのシューズ


以前スポンサーがアディダスの頃は、ファラー選手はAdidas Adizero Avanti (145g)を履いていたそうです。そして2011年頃の情報(英語記事)では、5000mまではNike Zoom Matumbo、10000mではNike Zoom Victoryを履いていたそうです。両者とも世界最軽量級の90~100g (UKサイズ9)。

ロンドンオリンピックで2冠を達成した時は、5000mも10000mもNike Zoom Victory Eliteを履いており、これはナイキのボルトシリーズになるのだとか(英語記事)。このシリーズの中長距離ランナーへの人気度は凄まじく、ロンドンオリンピックでは選手400人が履いて出場したそうです(うち金メダル25人)。5000mの出場選手は、ほとんどが「ボルトシューズ」だったそうですよ(下写真参照)。

ロンドンオリンピックでは選手400人が履いて出場したNIKEボルトシリーズ
(写真:DailyMail/Andy Hooper

ちなみにこのボルトはVoltです。ウサイン・ボルトはBoltですし、彼のスポンサーはPUMAなので無関係です(笑)

ファラー個人のシューズは踵の所に、オレゴン・プロジェクトのロゴではなく、「MO」(モハメドの略)に羽が生えたようなロゴが入っています。

それから、一般ランナーにも人気のNike Zoom Elite の開発には、ファラーとラップが関わっているという話がちらほら(英語記事英語記事)。

追記:私もZoom Eliteのオレゴンプロジェクトモデル買ってしまいました。
Nike Zoom Elite+ 6 (横)

参考:オレゴンプロジェクト限定版 Nike Zoom Elite+ 6 を買ってみた


ファラーは、プライベートではエア・ジョーダンをたくさん持っているみたいですね。


9/18追記:2014年4月のロンドンマラソンでのマラソンデビューに向け、ナイキではファラーの特注マラソンシューズを作る巨大プロジェクトが始まったそうですよ(英語記事)。


体型(?)


あと、この写真を見て思いました。

ファラーが細い!
(写真:TeamGB.com

上の写真の右端がファラー選手ですが、脚の細いこと・・・!身長のせいでそう見えてるだけかもしれませんが、横の人たちより細いですよね。この体型がランニングエコノミー(=省エネ)の良さにつながるんでしょうか?

youtubeで見つけた東アフリカ勢のマラソンの強さを分析するドキュメンタリーでは、細くて長いスネがランニングエコノミーに関係してると言っていたような記憶がありますが、どの動画かは忘れました。RWの記事(英語)だと、まだ東アフリカの優位性が厳密にどこに由来するのかわかってないようですけどね。研究もいろんな仮説が出ては矛盾する結果が報告されてるようですし…。ただ、RWの紹介する最新研究によれば、何かしらの遺伝的要素とトレーニングの両方が組み合わさらないと世界記録レベルには至らないだろうとのこと。例えばファラーは双子の兄弟は未だにソマリアにいます(英文記事)が、アスリートではなく練習していないので、走らせたら遅いでしょうね。

話はそれましたが、ファラーを別の角度から見ると・・・

ファラーが細い
(写真:Runner's World

細い。体脂肪率も低そう…。身長175cm。体重はソースによって58kgだったり65kgだったり。他の写真では太く見えるのもありますが、瞬発系トレーニングに力を入れてるわりには、細いと思います。

細い脚と言えば、ウルトラ・トレイルランナーのスコット・ジュレク選手(スパルタスロン246km3連覇etc)もそうです。

スコット・ジュレクの脚も細い
ジュレクの脚
(写真:RUNNET TRAIL

長距離ランナーが目指すべきはこういうほっそりした脚・・・?目指してなれるのかはわかりませんが(笑)

※ジャック・ダニエルズ氏のように、外見からは走力はわからないという人もいますので、脚の細さはほとんど気にしなくてもいいのかもしれません。

追記:ファラーとランニングフォーミュラ


アマゾンレビュー(by 植田さん)によればファラーもダニエルズ理論を取り入れているそう。
ロンドンオリンピックの陸上競技長距離種目で金メダル2個のモハメド・ファラーや10000m銀メダルのゲーレン・ラップはこの理論に基づいてトレーニングを行っているそうです。アフリカ勢が長く上位を独占してきた長距離種目ですが、この理論が浸透してから、アメリカでは長距離選手が次々と誕生し、成果を上げています。日本でも高岡寿成さん(マラソン日本記録保持者)が紹介し、一気に広まりました。個々のトレーニング内容の解説が具体的で、メニューを多く例示しているので、多くの中長距離選手、市民ランナーのバイブルになるのではないでしょうか。
ダニエルズ氏は元オリンピック選手で、運動生理学の博士号を持つ研究者でもあり、ランナーズワールド誌から「世界のベストコーチ」に選出されたコーチでもあります。

そのダニエルズ氏の理論が詰め込まれたのが、「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」という本。こちらはあまりにも有名なので説明しなくてもいいのかもしれませんが、もしご存知無い方は当ブログ内別記事にて詳しく解説していますので、もしよろしければご覧ください。


今後の注目レース


9/15に英国にて行われる「グレート・ノース・ラン」ハーフマラソンでは、以下の3名が対決します(英語記事)。
  • モハメド・ファラー(英国、30)
    • 今回の記事で取り上げました。
    • ハーフPBは1:00:23 (2011/3/20)
  • ハイレ・ゲブレセラシェ(エチオピア、40)
    • 5000m、10000m、ハーフ、フルマラソンの元世界記録保持者。
    • フルの世界記録は35歳のとき。
    • ハーフPBは58:55 (2006/1/15)、SBは1:01:14 (2013/4/14)
  • ケネニサ・ベケレ(エチオピア、31)
    • 5000m、10000mの現世界記録保持者。
    • ファラーのコーチであるサラザール氏が、ファラーについて数ヶ月前にインタビューで、史上最強の長距離ランナーはベケレと認める(英語記事)。結構ずけずけ言うタイプの人なので、お世辞で言ったわけではないと思います。
    • ハーフは今回が初。

そういえば女子選手もすごい面子です。前女子5000m世界記録保持者のメセレト・デファー選手と現女子5000m世界記録保持者のティルネシュ・ディババ選手が対決します。2人ともハーフは「実験段階」だそうですけどね(英語記事

ちなみに日本からは男子が川内優輝、藤原新、渡邊竜二(トヨタ自動車九州)、谷川智浩(コニカミノルタ)、的場亮太(小森コーポレーション)、女子が人見綾香(しまむら)、加藤岬(九電工)が走るそうです(英語記事)。

勢いに乗っているファラーが世界記録レベルの王者2名相手にどこまで通用するか、すごく楽しみです!そして日本勢もガンバレ~~!!

<9/18追記>
結果出ましたね。トップ3には入っていませんが、日本人選手も多くが上位に入ったようで、めでたいです。以下、japan running news - Best-Ever Japanese Results at Great North Run より。

Men
1. Kenenisa Bekele (Ethiopia) - 1:00:09 - debut
2. Mo Farah (Great Britain) - 1:00:10 - PB
3. Haile Gebrselassie (Ethiopia) - 1:00:41

(略)

Women
1. Priscah Jeptoo (Kenya) - 1:05:45 - PB
2. Meseret Defar (Ethiopia) - 1:06:09 - PB
3. Tirunesh Dibaba (Ethiopia) - 1:06:56 - PB

ベケレとファラーはなんと1秒差!!最後のスパートがすごくて、鳥肌が立ちました。見ていない方はこのyoutube動画をぜひ。

ファラーは今後、来年4月のロンドン・マラソンでマラソンデビューするとのことで、これからも目が離せません。

ファラー自伝(2013/10/16追記)




ファラーが自伝を出しました。まだ英語版のみ。以下、USアマゾンの紹介文から一部引用。
「ツイン・アンビションズ」は単なるオリンピックチャンピオンの自伝ではない。幼くして家族と離散し、克服困難と思われるような数々の障害を乗り越え、夢を叶えようともがき苦しみながら努力してきたファラーの現在進行形の人間物語である。
ファラーは双子なので、本の題名のツインは双子という意味だと思いますが、他に意味をかけてあるかもしれません。読んでいないので憶測です。


ついに世界記録達成!(2014/7/18追記)


世界記録達成です。

ただし、100m袋飛び競争(笑)

フォームを分析してみると、うさぎ跳び的なストライド走法というより、ピッチの高い走法を採用したようです。しっかりと両手でサックを握るフォームは、腕振りがないだけに前後のバランス感覚が問われそうですね。脚力・体幹が優れているのはもちろん、頭の位置も適宜動かすことで全身をバネのように使ったことが今回の40秒切りにつながった秘訣かと。ちなみに今回の競技に用いた袋のチョイスですが、じゃがいも袋とのこと。

以上、何かの参考になれば。

関連記事(ブログ内)




0 件のコメント:

コメントを投稿